平穏な生活に投じられた石
* * * * * * * * * *
本作、見始めるのにちょっと怯みました。
196分・・・。
映画館ならまだしも、自宅で3時間以上テレビに釘付けというのは
なかなか難しいですよ。
ま、途中中断できますけどね。
そしてまた退屈で途中で寝てしまうのでは・・という不安もあります。
本作もちょっと危なかったですが、
まあ、寝なかった自分を褒めたいくらいです。
舞台は現代のトルコ、カッパドキア。
見終わった印象は、もう少し古い時代のような感じなのですが、
主人公アイドゥンは、アップルのノートを使ってましたから・・・。
カッパドキアは私にも憧れの地で、
海外旅行を特にしたいとは思わない私も、ここには行ってみたいと思います。
世界中探してもこんな風景はここだけ。
まさしく世界遺産。
さて、そんな地で、アイドゥン(ハルク・ビルギナー)は、
洞窟を利用したホテルを経営しています。
親から受け継いだ資産で他にも多くの家を人に貸していて、かなり裕福。
以前は舞台俳優をしていた、知識人。
ホテルの客の日本人(!)と流暢な英語で会話を交わしていました。
(日本人の英語が流暢すぎたな。)
共に暮らしているのは、親子かと思うくらい年下の美しい妻と、出戻りの妹。
何一つ不自由のない平穏な生活・・・、のはずですよね。
ところが、ある日アイドゥンの乗っている車の窓に石がぶつけられる。
それはある少年の投げたものなのですが、
まさに、この一石が、彼らの生活にもともとくすぶっていたものが噴出するきっかけとなるのでした。
小難しいセリフの応酬する会話劇です。
が、そんな中でも次第にその人の人間性が現れて来ます。
アイドゥンは知的で穏やかで、公平。
善意の人のように思える。
誰も読んでいないような地方紙にコラムを掲載したりしています。
そして「トルコ演劇史」を描くのが自身のライフワークとは言うのですが、
まだ構想だけで着手していない。
いかにも「観念」の人で、自分の借家の住人が、家賃滞納のために
家具やテレビを取り上げられていることも知らなかった。
生まれた時から裕福なので、「貧困」の意味もわからないように思える。
一方妻は、何もすることがなく、慈善事業に生きがいを見出している。
始めのうち私は、この人はなかなかいいかも・・・と思いました。
ところが彼女も本当のところは何もわかっていなかった。
ラストのほうで彼女がとる行動には唖然とさせられます。
彼女も貧乏人の感情を想像することができないようで・・・。
結局、夫を尊敬もできずにいるのにこの家を出て行かないのは、
今の何不自由ない生活を捨てることができないからなのでしょうね。
離婚して実家に戻っているアイドゥンの妹もまた、
辛辣な言葉で兄やその妻を批判する。
結局この中の誰もステキでもなく高潔でもない。
でも、私たちの生活ってそんなものですよね。
この人達の中のどれか一部は自分の中にもある感情であると気づいて、
ひやりとしたりします。
いや、それにしても、この人達は多分退屈すぎるのです。
そして、一人の孤独には耐えられないし、他に行くところもない。
だから不承不承一つ屋根の下に同居している。
もっとちゃんと額に汗して働けよ・・・!!
と呼びかけて終わることにします。
「雪の轍」
2014年/トルコ・フランス・ドイツ/196分
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演:ハルク・ビルギナー、メリサ・ソゼン、デメット・アクバァ、アイベルク・ペクジャン、セルハット・クルッチ
異国の風景度★★★★★
人間観察度★★★★☆
満足度★★★☆☆
* * * * * * * * * *
本作、見始めるのにちょっと怯みました。
196分・・・。
映画館ならまだしも、自宅で3時間以上テレビに釘付けというのは
なかなか難しいですよ。
ま、途中中断できますけどね。
そしてまた退屈で途中で寝てしまうのでは・・という不安もあります。
本作もちょっと危なかったですが、
まあ、寝なかった自分を褒めたいくらいです。
舞台は現代のトルコ、カッパドキア。
見終わった印象は、もう少し古い時代のような感じなのですが、
主人公アイドゥンは、アップルのノートを使ってましたから・・・。
カッパドキアは私にも憧れの地で、
海外旅行を特にしたいとは思わない私も、ここには行ってみたいと思います。
世界中探してもこんな風景はここだけ。
まさしく世界遺産。
さて、そんな地で、アイドゥン(ハルク・ビルギナー)は、
洞窟を利用したホテルを経営しています。
親から受け継いだ資産で他にも多くの家を人に貸していて、かなり裕福。
以前は舞台俳優をしていた、知識人。
ホテルの客の日本人(!)と流暢な英語で会話を交わしていました。
(日本人の英語が流暢すぎたな。)
共に暮らしているのは、親子かと思うくらい年下の美しい妻と、出戻りの妹。
何一つ不自由のない平穏な生活・・・、のはずですよね。
ところが、ある日アイドゥンの乗っている車の窓に石がぶつけられる。
それはある少年の投げたものなのですが、
まさに、この一石が、彼らの生活にもともとくすぶっていたものが噴出するきっかけとなるのでした。
小難しいセリフの応酬する会話劇です。
が、そんな中でも次第にその人の人間性が現れて来ます。
アイドゥンは知的で穏やかで、公平。
善意の人のように思える。
誰も読んでいないような地方紙にコラムを掲載したりしています。
そして「トルコ演劇史」を描くのが自身のライフワークとは言うのですが、
まだ構想だけで着手していない。
いかにも「観念」の人で、自分の借家の住人が、家賃滞納のために
家具やテレビを取り上げられていることも知らなかった。
生まれた時から裕福なので、「貧困」の意味もわからないように思える。
一方妻は、何もすることがなく、慈善事業に生きがいを見出している。
始めのうち私は、この人はなかなかいいかも・・・と思いました。
ところが彼女も本当のところは何もわかっていなかった。
ラストのほうで彼女がとる行動には唖然とさせられます。
彼女も貧乏人の感情を想像することができないようで・・・。
結局、夫を尊敬もできずにいるのにこの家を出て行かないのは、
今の何不自由ない生活を捨てることができないからなのでしょうね。
離婚して実家に戻っているアイドゥンの妹もまた、
辛辣な言葉で兄やその妻を批判する。
結局この中の誰もステキでもなく高潔でもない。
でも、私たちの生活ってそんなものですよね。
この人達の中のどれか一部は自分の中にもある感情であると気づいて、
ひやりとしたりします。
いや、それにしても、この人達は多分退屈すぎるのです。
そして、一人の孤独には耐えられないし、他に行くところもない。
だから不承不承一つ屋根の下に同居している。
もっとちゃんと額に汗して働けよ・・・!!
と呼びかけて終わることにします。
雪の轍 [DVD] | |
ハルク・ビルギネル,メリサ・ソゼン,デメット・アクバァ,ネジャット・イシレル | |
KADOKAWA / 角川書店 |
「雪の轍」
2014年/トルコ・フランス・ドイツ/196分
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演:ハルク・ビルギナー、メリサ・ソゼン、デメット・アクバァ、アイベルク・ペクジャン、セルハット・クルッチ
異国の風景度★★★★★
人間観察度★★★★☆
満足度★★★☆☆