映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

彼は秘密の女ともだち

2016年03月25日 | 映画(か行)
傷つきながらも、自分らしくありたい



* * * * * * * * * *

親友のローラを亡くしたクレールは、
残された彼女の夫ダヴィッドと幼い娘リュシーを守ると誓います。
そこである日、ダヴィッドの家を訪ねてみると、
そこにいたのは亡き妻の服を着て娘をあやすダヴィッド。
始めは戸惑いを隠せなかったクレールですが、
ダヴィッドと秘密を共有するうちに、
いつしか彼を女性として受け入れるようになっていきます。



ダヴィッドには以前からそのような好みがあったらしいのです。
だけれどもローラと暮らしている間は特にそのような欲求は湧いてこなかった。
でもローラを亡くした途端に、
その心の隙間を埋めるように、女性の装いをするようになってしまった・・・。



人目を避け、時には奇異な目で見られ、傷つきながらも、
デヴィッドは自分らしくありたいと思い、ドレスを装う。
クレールは夫にダヴィッドとの仲を疑われたことで、しばらく彼と会わずにいるのですが、
久しぶりに男性の姿のダヴィッドにあった時に
「ヴィルジニア(=女性の姿の時のダヴィッドの名前)が恋しい」とつぶやくのです。
男とか女とかはもう問題ではなくて、
自分らしくあって輝いているヴィルジニアをクレールは愛したのですね。
この二人の思いは結局どんなものなのか。
よく考えたら男女なのだから、おかしくはない。
けれども微妙に世間の規範からは、ずれているのですが、
でもそれもまた美しいものだなあ・・・と、浸ってしまいました。



ワックスでムダ毛を脱毛し、胸にパッドを貼り付け・・・
そんなシーンは滑稽でつい笑いたくなってしまったりもしますが、
そんなところも含めて、愛すべき作品となっています。
装うという点では、ふだん無頓着なクレールが、
ヴィルジニアの女子力に感化されて、
ルージュを引いてみたり、ふだんあまり着ないワンピースを着てみたりするようになるのも面白いですね。



ダヴィッド役のロマン・デュリスといえば
あの「ニューヨークのパリ夫(パリジャン)」ですよね。
女っぽいなどと考えたこともなかったですが、
本作の彼は決してオーバーではないけれど、どこか女性的、
そしてドレスを纏えば魅力的。
ナイスでした。
これに気を良くして、エディ・レッドメインの「リリーのすべて」も、ぜひ見ることにしましょう。

彼は秘密の女ともだち [DVD]
ロマン・デュリス,アナイス・ドゥムースティエ,ラファエル・ペルソナ
ポニーキャニオン


「彼は秘密の女ともだち」
2014/フランス/107分
監督・脚本:フランソワ・オゾン
原作:ルース・レンデル
出演:エナイス・ドゥムースティエ、ロマン・デュリス、ラファエル・ペルソナス、イジルド・ル・ベスコ、オーロール・クレマン
倒錯度★★★☆☆
ロマンス度★★★★☆
満足度★★★★☆