映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

クジラの島の少女

2017年05月04日 | 映画(か行)
伝統と新しい時代の波



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ニュージーランドの浜辺、マオリ族の村が舞台です。
現代が舞台なので、村といってもすっかり近代化され生活様式。
私たちの生活と何も変わりません。
ただ、ご多分に漏れず、若い人たちはみな都会に出ていってしまい、
過疎化が進んでいるようではあります。
この地でずっと暮らしているお年寄りたちは、マオリ族の伝統を大切に思っていて、
その昔、クジラに乗ってやってきた勇者パイケアこそがマオリ族の祖先と信じています。


さて、この村の族長コロの長男には、
その勇者と同じパイケアと名付けられた女の子しか生まれませんでした。
後継者に悩むコロは、やむなく村の少年たちを集めて武術や祈りの言葉を教え、
その中から後継者を見つけようとします。
けれど、女であるパイケアには決して教えてくれません。
後継者に女などありえないと思っているのです。
祖父を尊敬し、彼が大事に思っている村の伝統を、
最も受け継ぎたいと彼女が思っているにも関わらず・・・・。


伝統と、新しい時代の波にどう向き合うのか、
それが本作のテーマです。
女性が何においても男社会の影でしかなかった時代から、
短期間にずいぶんと世の中は変わりました。
そして実際、男性ができて女性にできないことなんて、ほとんどないですよね。
もちろん体形や力の差はあるけれど・・・。


伝統というのは、はるか昔に全部が決まって、
それをまるごと伝えてきたわけではないのでしょう。
その都度、少しずつ変化しながら現在に至ったはず。
だから変えることを恐れる必要はないのだろうなあ・・・。
頑固で変化を恐れるのは、お年寄り。
柔軟に新しいことを取り入れようとするのが若者。
双方納得の行くまで、考えて話し合えばいい。


日本でも古来の伝統が失われつつあるわけですが、
学校や地域で、それを守る取り組みをしているのは同じですね。
インターネットの発達のおかげで世界はどんどんグローバルになっていきますが、
自分が生まれ育った地を誇りに思う気持ちは、持ち続けたいと思います。


パイケア役のケイシャ・キャッスル=ヒューズは
アカデミー史上最年少で主演女優賞にノミネートされています。
元気でキュート!! 
前向きで勇気ある少女像がステキでした。

クジラの島の少女 [DVD]
ニキ・カーロ
角川映画


「クジラの島の少女」
2003年/ニュージーランド/102分
監督・脚本:ニキ・カーロ
原作;ウィティ・イヒマエラ
出演:ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、ラウィリ・パラテーン、ビッキー・ホートン、クリフ・カーティス、グラント・ロア

伝統度★★★★☆
凛とした少女像度★★★★★
満足度★★★★☆