映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

メッセージ

2017年05月22日 | 映画(ま行)
しっとりとした人間ドラマ



* * * * * * * * * *

卵をもっと細長くしたような縦長の宇宙船。
これはもうUFOとは呼びたくない。
何かの物語の予感がします。
予告編を見たときから楽しみにしていました。


ある日突然、地球上の12カ所に降り立った巨大な宇宙船。
米国では言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)が
謎の知的生命体との意思疎通を図る役目を担うことになります。
特には攻撃の気配も見えない彼ら。
一体何をしにこの地球へ現れたのか・・・?


あの形でどうやって立っているのだろう・・・と思えた宇宙船。
よくよく近寄ってみれば、バランスなどの心配は全く心配ない。
つまりは宙に浮いていたのです!



全く未知の生命体とのコミュニケーション。
まずは自己紹介ですね。
人間(HUMAN)、そして自分たちの名前。
相手の宇宙人“ヘプタポッド”は、黒い煙のようなもので言語を表します。

少しずつ一歩一歩、使える言葉を増やしていって、
最終的には彼らが地球へ来た目的を聞き出すことが目標です。
ルイーズとともに任務についた物理学者のイアン(ジェレミー・レナー)は、あまり活躍の場はない。
フィボナッチ数列がどうのこうの・・・というのは
この際あまり役に立たないようでした。
そして彼は、ヘプタポッドとのコミュニケーションのためには、
防護服など脱ぎ捨ててしまうルイーズの潔さに圧倒されるのです。
それは私たちも同様。
とても魅力的な女性ですね。



さて、そんな彼女に、時折一人の子どものイメージが湧き上がるのです。
それは、ヘプタポッドに喚起されているようなのですが、
彼女の過去のできごとのように私たちには思えます。

しかし終盤、ルイーズが
「あの子どもは誰なの?」
と、ヘプタポッドに問いかけるシーンがあって、
驚かされてしまうのです。
彼女にとっては、未知の体験を見ていたということなのですね。
なぜそんなことになるのか、というのがこのヘプタポッドの秘密。
そして、重要な結末にもつながることなのでした。
う~む、よくできたストーリーです。



12カ所の宇宙船はいろいろな国に降りていて、
ここで行われたのと同じように各国でコミュニケーションをとろうとして
試行錯誤していたわけです。
ここは情報を交換して共同で研究に当たればよいと思うのですが、
本作の地球上の社会情勢はほとんど現在と同じ。
国同士の軋轢があり、始めは何カ国かで情報交流が行われましたが、
しまいには全く非公開に。
ルイーズのただひたすらにヘプタポッドを理解したいという思いとは裏腹に、
政治理論で動いていく世界。
この対比もいい。
結局、このようなSFドラマにありがちな宇宙人との戦闘シーンなどはなく、
しっとりした人間ドラマとなっていて、見ごたえがありました。



ところで、この宇宙船はなんと北海道にも降りていた! 
私には安田侃のオブジェのようだ・・・と思えたこの宇宙船。
北海道の大自然の中においたら、さぞかし美しいことでしょう。


ちなみに、本作に私が副題をつけるとすれば
「時間を持たないイカ星人」
なんつって。

「メッセージ」
2016年/アメリカ/116分
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
原作:テッド・テャン「あなたの人生の物語」
出演:エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、マイケル・スタールバーグ、マーク・オブライエン

独創性★★★★☆
満足度★★★★☆