映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ある天文学者の恋文

2017年05月20日 | 映画(あ行)
消滅した星から届くメッセージ



* * * * * * * * * *

著名な天文学者エド(ジェレミー・アイアンズ)と教え子のエイミー(オルガ・キュリレンコ)は
周囲には内緒の年の差恋愛をしています。
出張中で会えないエドからは、普通にメールが届いていたのですが、
しかし、エドは数日前に亡くなったと聞き、呆然とするエイミー。
けれどその後もエドからの手紙やメール、贈り物が届きます。
つまり、エドは生前にすべてのものを用意し、
適切なタイミングでエイミーに届くように準備していたのです。
ところが、ある時彼女が心の奥底にひそめていた過去の心の傷についてエドが触れたことで、
エイミーは怒りがこみ上げ、衝動的にメールを止めるサインを送信してしまいます。
我に返ったエイミーはそのことを深く後悔しますが・・・



これほどの年の差はどうなのか・・・と思いながら、
しかし、こんなにも包容力に富んだ男性に包み込まれてみたいと、
途中からは思ってしまいました。
早熟な女子は、これくらいの年の差のほうが良いのかもしれません・・・。
自分の死後に延々とメールが届くのが嫌になる時があるだろうと、
そのことまで予想して、
すべての手紙やメールを止める方法まで考えておくという周到さ。
そういう懐の深い「想い」に圧倒されます。



でも、教授も常に冷静にそれを準備していたわけではない。
脳の病に次第に蝕まれていく苦悩や
愛する人と永遠に別れなければならない悲しみの様子も、
廃棄されるはずだったビデオの片鱗から伺えるのです。
でもそういうところは決して彼女には見せようとしなかった教授・・・。



すでに消滅した何万光年も離れた星からの光がこの地上に届くように、
今は亡き教授からのメッセージが彼女のもとに届く。
美しく切ない物語でした。



ところで、エドからは時々別人に宛てたメッセージや、
届くべきタイミングを間違えたメッセージが来てしまうというのもご愛嬌。
体調すぐれない中で多くのことを処理しようとすれば、
そんなことが起こるのも当然のことです。
それもまた、生身で生きていた人のワザ。
リアルに本人の存在を感じるところでもあります。



エイミーはスタントマンのバイトをしていて、
思いがけないアクションシーンや思い切りの良いヌードシーンまで見られる
というおまけも付いています。
これもただ唐突に「スタントマン」なのではなくて、
彼女の心の傷にかかわることでもあるので、納得。

ある天文学者の恋文 [DVD]
ジェレミー・アイアンズ,オルガ・キュリレンコ,ショーナ・マクドナルド,パオロ・カラブレージ,アンナ・サヴァ
ギャガ


「ある天文学者の恋文」
2016年/イタリア/122分
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェレミー・アイアンズ、オルガ・キュリレンコ、シャウナ・マクドナルド、パオロ・カラブレージ、アンナ・サバ
包容力度★★★★★
切なさ度★★★★★
満足度★★★★☆