映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ノー・マンズ・ランド

2019年03月04日 | 映画(な行)

悲劇過ぎて喜劇

* * * * * * * * * *


2001年のアカデミー外国語映画賞受賞作品。


93年、ボスニアとセルビアでの紛争時。
両陣営の中間地点、すなわちノー・マンズ・ランドに双方の兵士チキとニノが迷い込みます。
その塹壕ではニノの同胞の男が地雷の上に横たえられており、
そこから起き上がれば即刻、地雷が爆発する仕掛けとなっているのです。
どちらの陣地からも射程距離で、逃げ出すことができず、
地雷の上の男をなんとか助けたいとも思う。
やむなく、どちらの兵ともわからないように
二人は下着姿になって白布を掲げ、救援を求めることにする。

すると、国連防護軍がやってきます。
中立を旨として、結局見ているだけで何もできなかった彼らが、
ようやく活躍の場を得たとばかりに。
やがて、爆弾処理担当の男もやってきますが、しかしこの種の地雷はもう解除しようがないという・・・。

本作、やがてチキとニノが友情を結ぶ話かと思えばさにあらず。
この二人はまず互いの国のやり方を非難。
スキあらばやっつけてしまおうと銃やナイフを奪い合い、傷つけあう。
そんなことののちにはイデオロギーではなく、
完全に個人間の感情として憎しみ合うようになって行きます。


そしてこの3人の塹壕を訪れる国連軍。
英語フランス語ドイツ語・・・様々な言葉がやり取りされますが、
誰もがさほど他国の言葉には堪能ではなく、かろうじて英語で意思疎通できるくらい。
そしてまたそこにマスコミが押し寄せて、まるでお祭り状態。
いや、そもそも戦争中なので、
この三人がこの塹壕にたどり着くまでに、もう何人もが死んでいるのですが・・・。
突然に人の命の重みが増したかとでも言うようで・・・、どうにも理不尽ではあります。


が、結局はやはりほんの軽い命だった・・・という事になってしまうのですけれど。
悲劇過ぎて、喜劇になってしまっている本作。
なんとも皮肉ではありますが、一見の価値ありです。

ノー・マンズ・ランド HDマスター [DVD]
ブランコ・ジュリッチ,レネ・ビトラヤツ,フイリプ・ショヴァゴヴイツチ,カトリン・カートリッジ,サイモン・カロウ
IVC,Ltd.(VC)(D)

<WOWOW視聴にて>
「ノー・マンズ・ランド」
2001年/フランス・イタリア・ベルギー・イギリス・スロベニア/98分
監督:ダニス・タノビッチ
出演:ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラツ、フィリプ・ショバゴビイツ、カトリン・カートリッジ
皮肉度★★★★★
満足度★★★★.5