映画と本の『たんぽぽ館』

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ビリーブ 未来への大逆転

2019年03月25日 | 映画(は行)

現代の女性の立場を支える一人

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後に米最高裁判所判事となるルース・ベンダー・ギンズバーグの実話を基にしています。



貧しいユダヤ人家庭に育ったルース(フェリシティ・ジョーンズは)、
努力の末ハーバード法科大学院に入学します。
ようやく女性の入学が認められて間もない頃で、女子学生はほんの僅か。
彼女は夫マーティン(アーミー・ハマー)の協力のもと大学院を主席で卒業します。
しかし女であるルースを雇う法律事務所は皆無。
やむなく大学教授となったルースですが、男女平等の講義に力を入れます。
ある時、ある訴訟記録を見たルースは、
それが歴史を変える裁判になると信じ、自ら弁護を買って出ます。
それは、独身男性が親の介護の税控除を受けることができないという事案でした・・・。

ルースの大学院入学が1950年代。
法科に女性が入るということだけでもすごいと思うのですが、
彼女が結婚していて子供までいる、ということで驚いてしまいました。
それというのも、夫マーティンの協力があったからこそ。
何しろ当時は、男は外で仕事をし、
女は家庭にいて家事・育児をするのが当たり前と思われていたのです。
男性はもちろん、女性自身も。
しかるに彼は自身もまだ学生でしたが、
ルースの能力を信じていて、自ら料理をし、ルースの後押しに余念がない。
この彼の男女差意識に縛られない思想こそがルースを育てた・・・これは間違いありません。



憲法ではあらゆる人の平等がうたわれているわけですが、
まあそんな時代なので、細かな法令の一つ一つを見れば
歴然と女性が差別されていたわけです。
しかし、女性が家庭にいることが当たり前とされ、それが優遇される社会では、
逆に家庭にいる男性の差別を生み出しているという切り口を
ルースは見つけたわけなのですね。


世の中はどんどん変わっている。
それなのに、裁判では数十年前の明らかに女性差別の判例を頑なに踏襲している。
これからを生きる若い世代に向けて、
こんなことでいいのかと訴える彼女の主張は、誰もの心を捉えたのでした。

 

私この時ちょうど酒井順子さんの
「百年の女 『婦人公論』が見た大正、昭和、平成」という本を読んだところで、
女性差別の意識の歴史は日本もアメリカも殆ど変わらないなあ、という意を強く持ちました。
二次大戦後ですね。
ようやく女性が社会へ進出し始めたのは。
今も、差別意識は根強く残っていますが、
ルースのような先人たちがいたからこその今であるというわけで、とても感慨深い作品です。

それにしても返す返すも、夫のマーティン、素敵でしたー。
背が高くイケメンで包容力があって、何よりも妻をしっかりバックアップするその態勢。
でもちょっと出来過ぎだと思うのです・・・。
実際にこんなふうだったのか、それともストーリー上かなり話を盛っているのか、
そんなところを知りたいと思ったりして・・・。



<シネマフロンティアにて>
「ビリーブ 未来への大逆転」
2018年/アメリカ/120分
監督:ミミ・レダー
出演:フェリシティ・ジョーンズ、アーミー・ハマー、ジャスティン・セロー、キャシー・ベイツ、サム・ウォーターストン

女性史度★★★★☆
満足度★★★★★