著者の力量が発揮しきれていない
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分かれ道ノストラダムス |
深緑野分 | |
双葉社 |
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高校生のあさぎは、2年前に急逝した友人の基が遺した日記を譲り受ける。
ある記述をきっかけに、彼が死なずに済んだ可能性を探ることにしたあさぎ。
基の死は、ずっと心のしこりとなっていたのだ。
クラスの男子・八女とともに、基の死の直前の行動を再現してみるが、
そんなふたりを追う影があった…。
一方、町では終末思想に影響された新興宗教団体の信者が、
立て続けに謎の死を遂げるなど、不穏な動きを見せる。
教団とあさぎたちの目的は、しだいに思いも寄らぬ形で交わってゆく。
特別な意味をもつ夏、高校生のふたりが呑みこまれてゆく歪な世界。
そこで、彼らは「分岐点」に立たされることに―。
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深緑野分さん、「戦場のコックたち」のあとに出た作品です。
う~ん、だがしかし。
もし私が本作で初めて深緑さんと出会ったとしたら、
「ふーん」と思うだけで、ハマることはなかったように思います。
高校生あさぎが、2年前に急死した友人・基の日記を譲り受けるのです。
基はその数年前に交通事故で両親を亡くしており、
もしかすると両親が死なずにすんだ"分岐点"はないのだろうかと、
SF小説などではおなじみの平行世界、パラレルワールドの可能性を考えていたことを知ります。
それならば、基が死なずにすんだ"分岐点"もあるのではないかと、
あさぎは考え始めますが・・・。
おりしも1999年7月。
ノストラダムスがこの世の終わりを予言したとき。
街では終末思想を唱える新興宗教団体が事件を起こし、
あさぎと、クラスメートの男子・八女が巻き込まれてゆく・・・。
直情的で考えるより先に行動に出るあさぎは、ちょっとめんどくさいヤツ。
鷹揚で冷静な八女くんが彼女を支えます。
うん、八女くんは好きだ・・・。
結局この二人の青春冒険小説。
面白くなくはないのですが、この程度なら他の誰でも書けそうに思えてしまいます。
「戦場のコックたち」を読んだあとでは特に。
深緑野分さんの魅力はそのストーリー運びとともに、
異邦の地の風土や光景、そして人々を、
まるでわが街のことであるかのように描写してしまうところにある。
・・・まあ、少なくとも今のところは、ということですが。
この先の彼女の可能性を否定するものではないのですけれどね。
少なくとも本作では彼女の本領が発揮しきれていないと感じました。
図書館蔵書にて
「分かれ道ノストラダムス」深緑野分 双葉社
満足度★★★☆☆