同じ心のかたち
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時節柄WOWOWでアカデミー賞関連特集をやっていたので、
アカデミー賞関連作品を見ることが多かった昨今。
本作も、アカデミー外国語映画賞ノミネート作品です。
食肉処理場に新任の検査員としてやってきたマーリア。
彼女は人とのコミュニケーションが苦手で周囲と馴染めずいつも一人でいます。
上司である中年男性のエンドレはマーリアのことを気にかけていましたが、
それもうまく噛み合いません。
ある時ひょんなことからこの二人は同じ夢を見ていることがわかります。
それは雄鹿と雌鹿二頭が森を歩き、池の水を飲んだり木の葉を食べたりするという平和な光景の夢。
二人はそれぞれが雄鹿と雌鹿になっている夢なのです。
そんなことから、二人は他の人とは違う何かのつながりを感じ、
互いを親しく思うようになっていきますが・・・。
冒頭から二頭の鹿のシーンがいくつも挿入されるのですが、
後にそれが、二人がそれぞれに見ていた夢のシーンだったということがわかります。
同じ夢を共有する男女のラブストーリーといってしまえばすごく甘いのですが、
本作はそんな生易しいものではありません。
舞台が食肉処理場で、実に生々しく、牛がされ肉になっていくシーンなどもあるのです。
残酷で、私などはつい目を背けてしまう部分もあったのですが、
ここから目をそらせるものに肉を食べる資格はないのではないか・・・などという気もします。
ともあれこれが、現実。
そんなリアルすぎる現実の中で、いかにも非現実的な夢の共有・・・というところがミソですね。
マーリアは、人と交流することが極度に苦手で、
実際的な体の接触も受け入れることができないのです。
けれども、エンドレとともにいたいという気持ちが高まり、
なんとか自分を変えようと努力する様がいじらしい。
人形で会話のシミュレーションをしたり、マッシュポテトをギュッと握りしめたり、
牛の背中をなでてみたり・・・。
一方エンドレは片腕が不自由というハンデキャップを持っています。
このことはいかにもギラギラした男性ではなく、
ちょっと男性性が割り引かれる意味合いがあったのかな・・・?と。
そうでないと、マーリアには近寄りがたくなってしまう。
同じ心のかたちをした人同士が出会うこと。
そんなこともあるのかもしれない・・・と、
スプラッタもどきのシーンがありながらもロマンスを感じさせる、不思議な手触りの一作。
私は結構好きです。
心と体と [Blu-ray] | |
アレクサンドラ・ボルベーイ,ゲーザ・モルチャーニ | |
オデッサ・エンタテインメント |
「心と体と」
2017年/ハンガリー/116分
監督:イルディコー・エニェディ
出演:アレクサンドラ・ボルベーイ、ゲーザ・モルチャーニ、レーカ・テンキ、エルビン・ナジ
生々しさ★★★★☆
恋愛度★★★★★
満足度★★★★.5