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「銀の匙 1」 荒川弘

2013年02月25日 | コミックス
お前らは家畜のドレイだ!!

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)
荒川 弘
小学館


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大自然に囲まれた大蝦夷農業高校に入学した八軒勇吾。
授業が始まるなり子牛を追いかけて迷子、
実習ではニワトリが肛門から生まれると知って驚愕…などなど、
都会育ちには想定外の事態が多すぎて戸惑いの青春真っ最中。
仲間や家畜たちに支えられたりコケにされたりしながらも日々奮闘する、酪農青春グラフィティ!!


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北海道の農業高校が舞台という今作、
以前から気になっていましたがやっと読むことができました。
すでに読んでいる方も多いでしょうし、今更・・・と言われそうですが、
一巻ずつ追って行きたいと思います。


まずは、主人公となる八軒勇吾が、大蝦夷農業高校(エゾノー)に入学したところから。
彼は札幌のサラリーマン家庭の息子で、
農業にはハナから興味もなかったのです。
彼自身は「家に帰らなくても済むから」全寮制のこの高校に来たと言うのですが・・・。
ひたすら良い成績をとることだけに費やしてきたこれまでの生活に疲れ果てたようにも見えますし、
家族とうまくいっていない様子も伺える彼。
まあ、そのへんの詳細はきっと今後語られて行くでしょう。
エゾノーに入学するのはたいていは農家・酪農家の息子・娘たちです。
皆、将来家を継ぎ、発展させることを夢として、専門分野には異常に詳しかったりします。
一方農業はもちろん、他のことに対しても何の夢も希望も持たない八軒は、
一人溶け込めず違和感を覚えるのでしたが・・・。
そんなことに悩むヒマもなく、
日々の授業や実習、部活とヘトヘトになる毎日が始まります。


私達と同様、酪農のことなど何も知らない八軒が、
少しずついろいろな体験を通して今の「酪農」を知っていく、
そして友人たちとの絆を深めていく様が、
非常に楽しく描かれています。
そしてまた、私達が普段目を背けている、
"命を食べる"ということの原点を
少しずつ掘り下げていこうとしていることも伺えます。
八軒は、目の前を走り回っていた鶏が、次の一瞬には頭をはねられてしまいショックを受けたり、
なんとも愛らしい子豚に名前をつけようとして、友人たちに咎められたりします。
あとで辛いからと。
ここは一巻目なので、まだほんの序の口。
このペース配分がなかなかよろしい。


それから、彼の友人たちのそれぞれ個性豊かでなんとユニークなこと。
ちょっと強面の駒場くん、
優しげな獣医志望の相川くん、
数学が超苦手の常盤くん、
顔立ちは美人なのにコロコロ卵体型のタマコさん、
このA班のメンバーがナイスです。
そしてもちろん、八軒の憧れ、御影さんも、
元気で可愛くてウレシイ。
ず~んと胸に迫ったのは、八軒が初めて見に行ったばんえい競馬、
見開きページの迫力描写! 
すごいですね、ドキドキします。
北海道にいながら、私は実際に見たことがないのです。
ぜひ一度見たいものです。
ばんえい競馬に使われるのはものすごく大きくたくましい馬。
サラブレットとは全然違います。
今度機会があれば是非見たいと思います。


まずは、主な人物紹介、状況紹介から始まった巻ですが、
十分以上に、今後の展開に期待を持たせてくれました。
早く次巻へ行きましょう!


「銀の匙 1 」荒川弘 小学館少年サンデーコミックス
満足度★★★★★


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