ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

NPOが文化を救う?

2007-04-03 16:24:03 | 地域文化

 今、地域のスポーツ・文化施設の管理が、軒並み指定管理者に移行中だ。地元高畠の文化ホールも隣り米沢の各種施設も、管理運営会社が、その役割を担うことになった。運営の合理化とは言うが、体の良い赤字減らしだ。

 市町村の経営に甘さや非効率が見られたのは確かだ。実際、ホールなどを使わせてもらって、文化に興味なく、施設に無知な職員の存在には、常々、うんざりしていた。予算の使い方にも、首を傾げることがよくあった。

 だが、一方、文化行政の大切さを信じ、自分の時間を投げ出して、熱心に仕事に取り組んでいた職員もまた、数多くいた。斬新な企画を立ち上げ、知恵と身体をフルに使って成功に導いた川西町フレンドリープラザのような例もある。

 プログラムの提供という点でも、自治体の支出は、大切な役割を担ってきた。自主事業とか、自主編成と呼ばれる、自治体独自の予算だ。音楽や演劇など、優れた本物に直に接することの少ない地方では、自治体が主催・共催する公演が、文化の普及活動として大きな役割を果たしてきた。また、菜の花座のような地域発の文化活動も、経費を初め、多くの点で支援を受けたからこそ、継続できたという面も大いにある。

 こういった貴重な成果を無視して、全国一律、指定管理者制度の導入により、文化の切り捨てが行われようとしている。この施策の行き着く先は、地方文化の疲弊、そして、消失なのではないかと思う。要するに、田舎の奴らには、本物なんて贅沢だ、テレビ見てりゃいいんだよ、ってことなのだ。

 こんな押しつけは、本当に癪だが、無理強いされるなら、これを住民の力でひっくり返してやろう、というのが、川西町フレンドリープラザの逆襲プランだ。

 プラザには、図書館が併設されている。名前を遅筆堂文庫という。この名称は、劇作家井上ひさしさんに由来する。井上さんの蔵書を中心に十数万冊の本が収められており、今も定期的に井上さんの蔵書が送り続けられている。将来的には、井上さんのすべての蔵書がここに収蔵されることになる。

 この貴重な文庫が生まれるきっかけとなったのは、地元の若者達の熱心な働きかけだった。井上さんを口説き落とし、町に収蔵施設を提供させ、自分たちの手で膨大な本を運び込み、分類し、整理した。その無償の尊いボランティアのお陰で、僕など、数々の演劇台本や井上さん書き込み入りの資料などを気軽に利用することができる。

 さらに、このグループが中心となって組織した山形こまつ座のお陰で、こまつ座はじめ東京の優れた劇団の公演を数多く楽しむことができている。これらを思い返すたびに、ほとほと、頭が下がる思いだ。

 このグループが、今回も、プラザの窮地を救うべく立ち上がってくれた。その名も、遅筆堂文庫プロジェクト。NPO法人として、川西町フレンドリープラザの指定管理者となった。

 4月1日、管理者移行にともなう、記念のイベントが行われた。

 『遅筆堂文庫20年目の始業式』。イベントのタイトル名も、さりげなく、これからの方向性を暗示していて、悪くない。井上ひさしさんの記念講演、プロジェクトを率いる安部さんの決意表明。そして、これから、直に運営に携わるメンバーの紹介など有った後、参加者交流会も催された。

 ここで次々に紹介される参加者の多彩なことに驚いた。著名なピアニスト、アメリカ人の中原中也賞受賞詩人、出版編集者、山形シベールの社長など、次々にマイクを握り、思いの丈を巧みに語り継いでいた。改めて、井上さんの力の大きさ、引力の強さを実感させられた一時だった。この強力なバックアップ体制が、ここまで、川西フレンドリープラザの多彩な活動を支えてきたし、これからも大きな援軍として力を発揮してくれることだろうと感じた。

 と同時に、これが、プラザの弱みだな、とも感じた。地元勢の陰の薄さだ。いやいや、決して人材不足ってことじゃない。地元樽平酒造の井上さんもライブスペースジャムの片倉さんも芸文協事務局の金子さんも出席していた。精力的に役者で活躍する古川さん夫妻の姿もあった。あっ、ついでに、僕もいた。でも、なんか、劣勢なのだ。なんか、元気が足りないのだ。なんか、遠慮してるのだ。これは、プラザでのこまつ座公演と同じパターンではないかとも感じた。人はたくさん集まる、でも、外の人が大部分。

 このパターンを、どう打ち破っていくことができるか、ここが、遅筆堂プロジェクトによる運営の大きな鍵となるのではないだろうか。なんて、他人事でいいのかい!成功のもう一つの鍵は、地域の僕たちがどう支えるかなんだよな。

 

 

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