ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

『キネマの天地』下積みの叫びに涙する!

2011-10-10 22:36:08 | 劇評

 おおーっ!入ってるじゃない!開場時間前だってのに駐車場は8割方埋まっている。ちょっとと意外!そんなに入る芝居じゃないって踏んでいた。だから、折り込みをお願いしたチラシも、まっ、500もあればいいんじやない、って軽く見積もっていた。ところがホールに入ってみるとほぼ満席。遠く仙台や秋田からの懐かしい顔も随所に見られた。 

 この作品、井上さんのお芝居としては珍しく政治や社会への批判が影を潜めている。しかも中心になるのは庶民とはほど遠い映画スターの4人の女優。推理劇仕立てで、娯楽作品とくると、コアな井上ファンには物足りない作品じゃないかなって思っていたんだ。

 で、実は僕はその点がとても気に入っていて、この芝居なんとか菜の花座でできないかって考えたことも再三あった。今から思えば野望なんたけど、結局年代の異なる4人のスター女優を演じられる役者が見あたらず実現しなかった。

 さて、舞台だ。こまつ座の装置(石井強司)、心憎いよねぇ、いつも。ほんと丁寧に作られている。今回は有名劇場の裸舞台という設定なのだが、奥のコンクリート打ちっ放しの壁面が実にそれらしい。バラシの時に確認したら、断熱用のウレタンフォームに彩色したもので作ってあった。そこにはキャットウォーク?って言うのかな?2間半ほどの高さに通路も造られていて、一幕から二幕への転換のシーンで見事にミステリアスな成果を上げていた。

 さらに効果的だったのが、中央奥の鉄扉。これは本当に鉄製で開け閉めの際のノイズが効果音でなく、実際に生ずる音で賄われていた。だいたい舞台の中央奥にこんな出入り口があるなんてあり得ない設定なんだけど、これがほとほと感心!見事に演出に活用されていた。オープニングのスター一人一人の登場シーン。クライマックスの犯人逮捕シーン。そしてスターたちの退場。そうなんだ、スターは中央から現れ、中央から去っていかなくちゃ!

 道具類も気配りが効いてたなぁ。無くたって差し支えないよなぁ、って思うようなものまで几帳面に設えられていて、そんな道具たちを追うだけでも楽しくなってしまう。バラシの際に、えっ、こんなもん出てたんだっけ?ってものたちをかなり運んだ。いつも、すけすけの舞台作ってる身としては、こういうとことんの作り込み、肝に命じなくちゃね。

 役者の素晴らしさも言うまでもないけど、やっぱり何と言っても井上さんの本の見事さだろな。スター同士のさや当て、いやぁ、おっかないねぇ、女同士の闘争心。後輩女優をいじめ抜くエピソードの奔放なこと。アテレコシーンで新人のせりふに皮肉と嫌みで応じる先輩スターとか、生きたドジョウ入りの太巻きとか、他社からの引き抜きを邪魔する話しとか、いやぁ、ありそうだ、あったら怖いよなぁって話しが次々と積み重ねられていく。そして、見事などんでん返し、それも2回もひっくり返させる爽快さ。こういう知的な遊びが僕は何より好きなんだ。

 でも、一番は、大部屋の下積み男優が、舞台への熱い思いを込めて往年の名作の主人公の名を叫ぶシーンだ。泣いた。久しぶりに芝居見て泣いた。きっと多くの観客が思いを同じくしたことだろう。我々はみんな下積みだ。こうありたい!との願いを心に秘めつつ結局は叶わぬ夢をそっと置き去りにして生きていく。そんな人間の張り裂ける心の内がずんずんと迫ってきた。映画への愛情、舞台への情熱、いつの日か!との思いもむなしく消え去っていった人々、消え去りつつある人々。庶民なんだよなぁ、井上さんが深く思い入れしているのは、やっぱり。

 そして、極めつけが、やはり演出(栗山民也)なんだな。何気なく読み飛ばしていたせりふの端々に、時には笑いを見いだし、時には観客をねじ伏せる緊張感を見つけ出す。そして、せりふの持ち味を100%いや、その2倍も3倍も大きくふくらませる。おそらく、井上さんが書いた以上の意味づけがなされていたんじゃないだろうか。そんな馬鹿ななんて思わないでほしい。作者が書いたものがもっともっと深く広く演出家によって捉えられ、提示されていくことはよくあることなんだ。

 とりわけ最後のシーンだろう。下積み役者の叫びを三度もやった。台本では2回なのに。演出の意図は明白だ。でも、普通、そこまでやるか!?て、言うより、三度もやたら茶番だろう。そこを観客の拍手喝采のシーンに仕上げてしまっていた。お見事!演出によって台本が数倍も輝く、これぞ演出ってことなんだろう。

 久しぶりにスタンディングオベーション!スタンディングてのは、なかなか勇気のいることで、立つかどうかためらいが先に立つものだけど、今日の舞台は惑うことなく、立っていた。涙を流しながら立っていた。拍手していた。

 僕もそんな下積みの一人だ。常に、いつか主役を!いつか名作を!いつか名声を!と熱い気持ちを抱えつつ、生身の自分のしょぼさにうんざりする下積みだ。ままならぬ今に諦めが先に立つ脇役だ。

 でも、そのいつか!を忘れてはならない!そういう熱き思いに支えられてスターも存在する。ひたむきに夢を追い続ける庶民がいて舞台が成り立つ。そんなメッセージが、井上さんからも栗山さんからも届いたステージだった。

 お客さんもたくさん入って、舞台も素晴らしい出来で、熱気が充溢したフレンドリープラザ、いつだってこういう熱気溢れる場にしていかなくちゃね。最近渋りがちだった館長の阿部さんの表情も自信にあふれた満足顔だった。

 

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歌レッスン

2011-10-09 20:32:41 | 演劇

 外から見てもらうのってとっても大切だ。改めてそう思った。今日は作曲の知野先生のレッスンだった。何気なく見逃していること、ついおざなりになっていた所、そんな点をズバズバと指摘していただいた。

 特に、ソロの歌のパックメンバーの動き。これは盲点だったよなぁ。どうしてもソロの歌やソロの動きに気を取られて、しっかり整えられなかった。雑だよな、とは思っていたが、まずはソロをなんとかしなくちゃって思いが強すぎた。

 何気ないふりなんだけど、その意味合いが場にそぐわないってこと、ほとんどそこまで考えなかった。まっ、それっぽく動いてればいいか、ってレベルで作っていた。見抜かれたね。明日はしっかりと作り直しをしよう。

 歌については厳しい指摘はあまりなかった。まっ、演劇部の生徒だからね、っておまけというか、あきらめというか、妥協の部分はあったんだと思うけど、良くなったと言ってもらって生徒には自信になったかな。

 この数日ひどい出来だったのが、今日はみな緊張してそこそこの仕上がりになっていた。やはり専門家が聞いてくれるっていうのは大きいことだし、大切なことなんだよなぁ。なっ、頼むから、今日の出来から出発してくれよな。僕としては、まだまだ。もっともっと上手になってもらわなくちゃダメだ。

 特に気持ちの入り方。一人ひとりが歌い終わってぐったりくるくらいの集中を見せてもらいたいな。半端で安っぽい感傷でその気になってもらっては困る。なんたって、歌うのは「死」なんだから。

 明日も試験直前だが部活は続く。朝からスタートして二時間は学習、二時間はモノづくり、そして、午後からはこまつ座『キネマの天地』の観劇だ。こういうスケジュールでも成績が下がらない、それが置農演劇部だからね、わかってるよね。

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掛け替え日和?

2011-10-08 17:44:54 | 農業

 3連休の中の唯一の休み。稲の脱穀する予定だったんだ。でも、昨日までの雨でしょ、とてもとても!田んぼの中、水がびちゃびちゃ、歩くのだって要注意なんだもの。

 当然2度目の掛け替えもしてなかったわけで、しゃぁねえ、今日は掛け替えだってことで作業が順送りになった。

 我が家の米作りは無農薬、当然乾燥だって天日乾燥だ。バインダーという刈り取り結束機で刈り取った稲を稲杭にかけて乾かす。一週間くらい干したら、掛け替えを行って日にさらす面を入れ替える。さらに一週間、穂が十分乾燥したら、穂を中にしまって濡れないようにし株の根本の部分を外に出してこれもよく乾燥させる。これが2度目の掛け替えってことだ。さらに一週間で脱穀という手順だ。

 今日はその2度目の掛け替え作業を行った。言葉じゃわかりにくいから、画像でどうぞ。最初の写真が一度掛け替えを終えた稲杭の姿。ただし、専門家つまり百姓が見ると、なにや、これ!下手ぁぁぁぁ!って呆れるね。仕方ないんだ、これ、仙台から体験学習に来た中学生がやってくれた掛け替えだもの。でも、彼らの名誉のために言っておく。彼らは実によく働いた!さすが宮教大付属!!

 Img_1774

 二枚目が2度目の掛け替えを終えた様子。ねっ、ぜんぜん違うでしょ。こういう稲杭見ると、よっ、脱穀待ってるね、よしよし待ってろなって頼もしい気持ちになる。

Img_1772

 そして、作業完了の図!午前3時間、午後2時間5時間の作業だった。ちょい、疲労。

Img_1771

 でも、刈り取られた稲株から元気にひこばえが芽を出しているのを見つけて、そうなんだ!この生命力なんだよな!この稲の生きる力が人間を支え続けてきたんだよなって感動の一瞬!

Img_1781 さて、脱穀はいつできるんだろうね。

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菜の花座始動!

2011-10-06 23:36:58 | 地域文化

 お待たせしました!って誰も待っちゃいないか。

 菜の花座秋公演、稽古始まりました。秋公演?聞いたことねえぞ!だろ、やったことないもの。おっと間違った。去年やってた。川西町芸文祭でのコントの話しだ。

 昨年はねえ、一人芝居で挑んだんだけど、会場のやかましさに負けてほとんど勝負にならなかった。ちょっと声量の小さいミホさんだったてこともミスマッチだったんだけど。

 なので、今年は声のでかい奴から出演者を選んだ。本当かい?出演は若手女優二人、クミとナオミだ。そう、どっも声のでかさは劇団有数。カラオケなみの大声張り上げて二人芝居を演じる。

 でも台本なんだよ、問題は。芸文祭って、演劇?おらしね!って人たちばっかしが観客だから、もう、最初の一言、って言うより登場した時から、おもしれぇ!って笑いとれるものじゃなくちゃだめ!去年はその点でも失敗した。ちょっと高尚だったものな、題材。

 ほだから、と、訛りが入って、今年は婆さん二人の掛け合いってことにした。それを若い二人が演じる。これ、笑いのとれる必殺パターンだよね。二人の婆さんが今の時代の暮らしづらさを愚痴るってお話し。平均年齢60歳代?の芸文祭にはぴったりの題材だとは思わないか?

 それだけじゃ芸がない。ひねりを加えて、一方の婆さんは若い詐欺師が化けているって設定にした。そう、置農演劇部演歌ショーのコントと同じ、「詐欺にご用心」のパターンだ。

 演出もこの際だから、若手を起用。カナミに任せることにした。そう、そろそろ菜の花座も世代交代の準備をして行かなくちゃなんないからね。昨日、今日と稽古をやってみたけど、なんとかなりそうな気配だ。まだまだ役者も演出も手探り足探りの状態だけど、自分たちの舞台をしっかり仕上げようって気合いは十分なようだ。

 本番は11月3日文化の日。たしか3時頃、最後の方の舞台のはず。その前後には置農演劇部の演歌舞踊もある。ぜひぜひ見に来てほしいな。若手3人が作り上げたコントステージ、どれだけ笑いがとれるか?勝負!勝負!!

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公演ができるまで

2011-10-02 19:32:35 | 演劇

 今日は米沢西部小学校で子どもミュージカル『どんでん森は、どっきどき』の公演だった。この地域で様々な活動を展開し地域の振興と親睦を目指している団体の主催だった。

 開演の1時間前、リハーサルが始まったばかりのところで、早くも観客入場、それもお年寄り。ええっ!もしかして演歌ショーと間違えて引き受けたんじゃないか??不安は開場とともにますますつのった。来る人来る人おじさん、おばさん、お年寄り!そして、ようやく小学生。ほっ!

 反応の方も、よくわからない。昨日の吉島小の盛り上がりが恋しい。ギャグ不発。客席は常時異様な静まり方。馬鹿にするな!って思ってる?子供だましだってうんざりしてる?観客の横顔を伺うが、・・わからない。面白いのか?つまらないのか?わからない。10人ほど来ている小学生も親や爺婆に挟まれて、なんか窮屈そうだ。

 でも、やっぱり子どもは正直だ。親の顔を伺いながらも笑ったり身体で反応したりし始めた。そして、客席を巻き込んだクェスチョンタイム。ここでようやく大人も子どもも心の凝りがほぐれたようだった。後は、おとなしいけれど、暖かい客席オーラに包まれて終演。拍手はいつまでも続いたな。公演もいろいろあるってことを改めて感じた今日の舞台だった。

 さて、芝居が始まるまでの様子てのは、あまり紹介していなかったように思う。他の高校演劇部で置農みたいな出前公演をやりたいって場合には、少しは参考になると思うので、画像で紹介しておこう。

まずはトラックから装置、道具の下ろし方。

Img_1654

よくぞこんなにと思う荷物の多さだ。パッキングはまさしく経験のたまもの。僕自身、随分上達したって思う。置農演劇部特製の木枠。パネルの上に取り付けて高さ9尺幅6尺の黒パネルを作る。袖やパック幕になる。

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次にパネルをたてる。今回は山パネル6枚と、移動型樹木パネル4枚だ。

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この間かぶり物や小道具も搬入する。

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これで完成。最近は客席の下手前にパネルを使って音響席を設けることも多い。

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横向きゴメン!そして、客入れ。

Img_1674

そして、はじまり!はじまり!!

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