萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第31話 春兆act.6―another,side story「陽はまた昇る」

2012-01-14 23:53:34 | 陽はまた昇るanother,side story
※冒頭1/6念のためR18(露骨な表現はありません)

かなえられなかった「約束」かなえて、




第31話 春兆act.6―another,side story「陽はまた昇る」

おだやかな温もりが頬によりそってくれる。
しあわせな温もりに呼ばれるよう睫があげられて、ゆるやかに周太は目覚めた。
かすかなオレンジの香と充ちる花の香、それから深い樹木のような香。そっと目をあげると端正な白皙の貌がおだやかだった。
きれいな笑顔で切長い目が見つめてくれている、きれいな低い声が幸せそうに静かに微笑んだ。

「おはよう、周太。俺の花嫁さん」

朝の言葉と一緒にそっとキスがふってくる、やさしい穏やかな熱があたたかで幸せで周太は微笑んだ。
なんだかいつにも増して気恥ずかしくて、けれどいつも以上に幸せがよりそっている。
こんな想いの朝があるなんて知らなかった、気恥ずかしいまま周太はきれいに笑った。

「ん、…おはよう、英二…あの、はなむこさん、なの、かな?」

これで合っているのかな?そしてほんとうに恥ずかしいな。
さぁっと首筋が熱くなっても精一杯に睫をあげて見上げる白皙の貌が、心から幸せそうに笑ってくれた。

「うん、そうだよ周太。俺はね、周太の婿さんになるんだ。大好きだよ、周太」

うれしそうに言ってキスして笑ってくれる、その目が本当に幸せに朝の光に笑っていた。
見あげる笑顔の頬はあかるい透明に照らされて、きれいな髪が朝陽に透けてあわく輝いている。
あわい赤いろの痣がうかぶ肩にも陽光ふりそそぐ、白いラインが雪の稜線みたいだな?周太はそっと見つめた。

「気分はどう、周太?からだ辛くないかな、大丈夫?」
「ん、…すこしだけ怠いけれど、大丈夫だよ英二?」

答えながら不思議で周太は小首を傾げた、どうして今朝も体が楽なのだろう?
きのうは当番勤務明けのまま射撃訓練に行って、そのあと英二と待ち合わせて実家に帰ってきた。
それから昼食の支度をして夕食の支度もしたから昨日は昼寝もしていない、睡眠時間も短かくて少し疲れていたと思う。

…それでも、ゆうべは…ずっと、だったし、ね?

昨夜のことを想いだして頬まで熱くなってくる。
昨夜は夕食が早かった、そして風呂も早めに済ませられたから、ゆっくり部屋でお喋りしようと周太は思っていた。
けれど英二はゆっくり時間をかけて周太を『好きなだけ』してしまった。

求婚に贈られた冬と春の花々の香、しらず飲んでしまった結婚を祝福する酒。
あわい朱のデスクランプの光と花の香のふるなかで、白いシーツに埋められながら英二の想いを全て受けとめて。
熱い唇に刻まれ咲かされる赤い花たちが肌にうかぶ、ふれていく長い指の熱、熔かされていく心と体。
もうなにも解らなくされて、ただ求められる想いに心が響いて甘やかな幸せに蕩かされていった。
ただ切長い目の想いを見つめて、きれいな髪の香と白皙の肌に薫る深い樹木の吐息に包まれて、ほどかれ繋がれて。
そうしていくども想い交して『絶対の約束』を結んで繋げた。

そっと瞳を動かして周太はデスクの花々を見つめた。
白皙の稜線のような肩越しにうつる、あわい赤と白にやさしいクリームいろ、それから艶めく黒深紅の大輪の花。
この求婚の花たちは清楚で可憐な雰囲気でいる、けれどひとつだけ違う表情でいる黒深紅の花。
あの花だけは贈り主のイメージが強くて惹かれてしまう。ほっと吐息をついて周太はすこしだけ身じろいだ。

…やっぱり、からだ辛くない。大丈夫みたい、だね?

そっと動かしても体は軋まず痛まない、よかったと安堵しながら右腕を周太は見つめた。
見つめた右腕の内側には深紅の痣がまた色濃くなっている。
あの初めての夜からずっと、会うたび英二がキスで刻みこんでいく想いの深紅の痣。
そして昨夜も噛むような熱いくちづけで深く刻んでくれていた。

「周太、そこ、痛むのか?」

きれいな低い声に周太は隣を見あげた、すこし心配そうな哀しそうな目が見つめてくれている。
そんな顔しないでいいのに?おだやかに微笑んで周太は答えた。

「大丈夫、痛くないよ?…なんだかね、この痣のいろが似ているな、って想って」
「なにと似ている?周太、」

安心したように微笑んで隣が訊いてくれる。
すこし恥ずかしいな?でも教えてあげたい、だから恥ずかしいついでに思い切ってみようかな?
そんな想いに微笑んで、そっと白皙うつくしい首に腕をまわして抱きついた。
やわらかく抱きついて見つめる切長い目がすこし大きくなって、そして心から嬉しそうに笑ってくれる。
ほら、やっぱり喜んでくれたね?うれしくて気恥ずかしくて周太はそっと答えた。

「ん、…あのね、贈ってくれた花と、似ているなって想って」
「プロポーズの花と?…あ、周太。ボルドーの大きい花かな?」
「そう…ブラックバカラっていう名前のね、カーネーションだよ?」
「そうだ、その名前だった。ね、周太?ちょっと花言葉がさ、ストレートですごかっただろ?」

可笑しそうに笑って英二が訊いてくれる。
さあ本音を答えたら、なんて言ってくれるのかな?すこし悪戯っぽい想いと気恥ずかしさに頬熱くなりながら周太は微笑んだ。

「ん。俺ね、英二みたいな花だな、って想って…惹かれてしまうんだ?」

きれいな笑顔が英二の顔に華やかに咲いていく。
この3ヶ月間で大人びた陰翳に深い白皙の貌は端正で、けれど想いの真直ぐな情熱が華やかにあざやいで惹きつける。
ほらやっぱり似ているね英二?黒深紅の艶深い華やかなブラックバカラ、きっと忘れられない花になる。

「そういうのってさ、うれしいよ、周太。あ、どうしよう周太?幸せすぎて俺、ちょっとテンションあがっちゃうよ?ね、周太」
「喜んでもらえて、うれしいな…あ、朝ごはんのお米セットするの忘れてる?ちょっとごめんね英二、」

ふる朝陽に木目映える床に腕を伸ばすと、そこへ落ちていた白いシャツを拾いあげた。
そのままシャツをはおって体を包みながらベッドから降りると、周太は着替を持って廊下へ出てすぐ扉を閉めた。
足早に歩く廊下の木肌が温かい、窓から挿しこんだ冬の朝陽が磨きこまれた木目を温めてくれる。
すこしずつ足を速めながら階段を降りて、すぐ洗面室へ入ると周太は扉の鍵をかけた。
かちゃんとロックされる音を聞いて、ほっと周太は息をついて微笑んだ。

「ごめんね、英二?」

ひとりごとに我ながら可笑しくて、ちいさく笑いながら周太は白いシャツを脱いで浴室へ入った。
たぶん、ぼんやりしていたら英二に掴まえられて『好きなだけ』またされてしまう。
でもそれはすこし困ってしまう、朝食の支度もしてあげたいし、庭の花も見せてあげたいと思っていたから。

…それにね、ちょっと体が保つのかも心配…ごめんね、英二?

もう昨夜で自分はいっぱいいっぱい。シャワーを済ませて着替えながら、ほら想っただけで赤くなってしまう。
まだ10歳で9ヶ月だから許してほしいな?そう髪を拭きながら、ふと思いついて周太は鏡へと顔を向けた。
きれいな白タイルと藍の模様うつくしいタイルで造られた洗面台、その向こうにかけられた穏やかな光うつす鏡。
大正に建てられた時から家族たちを映し続けてきた美しい木枠の鏡、そこには幸せそうな微笑みが映し出されていた。
この鏡に映しだされた13年前の春は、泣きながら吐き続けて血まで吐いた10歳の自分の顔だった。

あの春の夜、父の無残な遺体と帰宅した。
庭には桜たちが咲き誇っていた、その桜は父が安置された仏間からも見えていた。
障子を開け放った板敷廊下の窓からは、豊麗に咲き誇る染井吉野が夜風に舞って散りふって。
沈黙に横たわる父を見つめる瞳に散り急ぐ桜が映りこんで、もう「終わり」なのだと告げられ心が揺さぶられた。

  …もう、幸せな時間は、かえってこないんだ、ね?

あの春の夜ほんとうは、あの板敷廊の籐椅子に座って夜桜を眺めながら本を読んでもらう約束だった。
けれどあの夜の現実は、畳に延べられた真白な布団に父は沈黙に鎮みこんで起き上がってくれなかった。
ただ夜桜だけが窓の向こういっぱいに散りふって、本を読み聞かせてくれる穏やかな声はもう、聴こえなかった。
しずかに窓から瞳をうつして真白な布団をすこしめくると、父の大きな掌があった。
大好きな父の大きな掌 ― そっと触れた刹那、ただ冷たい肌が自分の掌に伝わった。

  …っ、おとうさんっ…!

胸を迫り上げていく現実と哀しみ「喪失」の2文字。
もう声は聴こえない、温かな大きな掌は、熱を喪いただ冷たい蒼白になってしまった。
聴こえない、冷たい、応えもない ― 「喪失」2文字が心を廻って胸が急に潰された。
そして自分は洗面室の鍵をかけて、この洗面台と鏡の前に崩れ込んだ。

その洗面台の前で今、こんなふうに自分が笑っている。
その鏡には今この自分の顔は、幸せな微笑みに彩られた美しい顔でいる。

…幸せは、見つけられる

おだやかに微笑んで周太は鏡を見つめて、もういちど自分の瞳を見てからサイドテーブルに振り返った。
さっき脱いだ白いシャツをサイドテーブルから取りあげて、畳もうとしてふと手が止まった。
デザインも素材も、いつも自分が来ている通りの白いシャツ。でも、どこかが違う。
初めての外泊日に英二が贈ってくれた白いシャツ、そして卒配後に初めて再会した時に2枚また贈ってくれた。
それを毎夜パジャマ代わりに着て自分は過ごしている、だから見間違えるわけがない。
なにが違っているのだろう?怪訝な想いのままに周太は姿見の前に立つと、白いシャツを体に当ててみた。
そして姿見の鏡面に映し出された姿を見、周太の瞳が大きくなった。

「…サイズが大きい…?」

周太のサイズはMサイズ、メーカーによってはSサイズになる。
この白いシャツは大きめの作りで、いつも着ているMサイズでも腰回りも充分に覆われる。
けれどいま自分に当てているシャツは膝上近くまで覆ってしまう。
驚いて急いでサイズを見ると「L」の表示が目にとまった。

これって、もしかして?
いやもしかしなくてもそういうこと、でもじゃあ、いつからそうなの?

頬がまた熱くなっていく。
それでも周太はサイドテーブルにシャツを広げると、きちんと畳んで抱え込んだ。
そして1つ呼吸してから洗面室の扉を開くと、その扉に白い手が掛けられた。

「…っ、」

白い手に驚いて見上げると、きれいに笑った英二が立っていた。
コットンパンツで長い脚は包まれているけれど、上半身は素肌のままで。
やっぱりこのシャツってそういうこと?途惑って見上げる周太に、きれいな低い声が笑いかけた。

「大きいシャツ着た周太、すごい可愛かったよ?
 俺、思わず携帯でさ、写真撮っちゃった。すごい可愛い写真なんだ、周太。もう俺ね、ほんと癒されるよ?ありがとう、周太」

写真、撮っちゃった、って。

「…っ、」

さっき部屋から逃げ出したとき、英二は追いかけてこなかった。
おとなしく諦めてくれたのかなと思っていたけれど。
ほんとうは携帯で写真とってながめてたぶん保護ロックかけたりとかしていたから?
呆気にとられて真赤な顔で見上げる周太に、きれいに笑って英二が言った。

「そのシャツ、周太のとお揃いなんだ。お揃いの着て寝ていたら、離れていても一緒みたいでいいなって。ね、周太?」
「…あ、はい…」
「周太、風呂ちょっと借りるよ?あ、ついでに掃除してくるな。残り湯って洗濯機に移すんだっけ?」
「あ、…はい、おねがいします…」

そんな会話の後さわやかな笑顔を残して、さっさと英二は浴室へ行ってしまった。
とじられた洗面室の扉を見あげるとため息が零れてしまう。

…ほんとうに、あざやかな手並だよね、いつも

ゆっくり家を回ってカーテンや鎧戸を開けていく、ふるく静かな家へと朝の光がおだやかに射して空気が温まっていく。
そして最後に南西の部屋で仏壇の前に膝まづくと、閼伽水とちいさな仏飯を祝膳の折敷に載せて持った。
それから台所へ行ってサイドテーブルに置くと、きれいな水に張り替えた閼伽水を仏壇に供えなおす。
そして仏花の花瓶を下げながら位牌を見つめて思わず心につぶやいた。

…あの、ちょっと困ったひと、なんですけど…でも、認めてくれたんですよね?

なんだか自分で可笑しい、ちょっと笑って周太は仏花の花瓶と卓上の白磁を抱えた。
台所で水を替えるとまた仏間の元へ戻す、ふと仏花がすこし萎れているのが目にとまって、また仏花だけ持って台所へ戻った。
先にお米をセットしようかな?傍らの丸椅子からエプロンをとって着ると米を洗ってセットした。
味噌汁用の鍋に水を張って昆布を入れておく、大根は銀杏に切ってボウルに入れると大根菜も刻みこんでから塩をふる。
そうした少し時間を置きたい下拵えを済ませると、花切ばさみを持って周太は玄関で下駄に履き替えた。

「…空気が澄んでいる、な」

ほっと吐く息が白い靄になる、よく晴れた冬の朝は澄明な光に佇んでいた。
自然な作りの植込みには冬の草花たちが揺れている。紫紺野牡丹に四季咲の撫子、ブルーデージー、クリスマスローズ。
今朝も山茶花『雪山』は真白に輝いている、何種類かの桜には花芽がふくらみ始めていた。
どれもかわいいな、花々を眺めながら周太は東庭に入ると水仙の叢にしゃがみこんだ。

…ほとけさまにね、お供えさせてくれるかな?

心にお願いしながら緑さわやかな花茎を切る。花開いたもの蕾の多いもの、とりまぜて何本か摘んでいく。
摘むごと清々しい芳香が冬の朝の冷たさにとけこむ。こういう静かな時間は良いな、そっと微笑んで周太は立ち上がった。
白い花びらと黄の花冠が青みの緑に映える、水仙の花束を持った周太は北庭へと入った。
こんどは蝋梅の花枝を2つ選んで伐る、ふわり佳い香が頬を撫でて周太は微笑んだ。
水仙の花冠の黄色と蝋梅のあわい黄は似合っている、どちらも香り高い花だけれど相性は悪くない。
良い花をもらえたな、うれしいなと微笑んで顔をあげた視線の先に、シャツにカーディガンをはおった英二が立っていた。

「あ、…英二?」

花を抱えたまま笑いかけると、うれしそうに笑って英二がこちらへ歩いて来てくれる。
せっけんの香ふっとかすめられて、つい頬が熱くなってしまう。だって昨夜を想いださせられるから。
それでも見上げると英二は、きれいに笑いかけてくれた。

「周太、花を摘んでいたんだ?」
「ん、仏壇の花をね、替えようかなと思って…あ、探させちゃった、かな?ごめんね、英二」

ひとこと言ってから庭へ出たほうが良かったかな?
そう見上げながら「ごめんね」と目でも言いかけると、ふわりと抱きしめられた。
ボルドーのストライプきれいなシャツの奥から石けんの香が頬撫でる、そっとキスがふれて切長い目が周太を覗きこんだ。

「うん、…探した。でも、見つけられたよ、周太?」

きれいな低い声がすこしだけふるえている。
なにか不安にさせてしまった?そう見上げる切長い目がすこしだけ紗がかかっていく。
こんなにも自分を探して不安になってくれている、よせられる想いに周太は微笑んだ。
なんて可愛いひとなんだろう?

「ん、ありがとう英二…びっくりさせて、ごめんね?」

きれいに笑って周太は背伸びすると、そっとキスをした。
ふれる温もりとやわらかな想いが幸せで愛しい、このひとを笑顔にしてあげたい。
さあ笑ってほしいな?そっと離れて微笑んで、周太は英二に花の名前を教えた。

「ね、英二…?この木はね、蝋梅って言うんだ。寒くてもね、佳い香で咲いてくれる。見て?」
「きれいだね、周太。ほんとうだ、佳い香がするな?なんか不思議な花だね、周太」
「ん、…どんなふうに不思議?」

そうだなと白皙の貌がすこし考え込んだ。そしてすぐに笑って周太に教えてくれた。

「うん、なんかさ?光を集めたみたいな花だ。ほら、周太?この花って光に透けて見えるだろ?」
「ん、…俺もね、この花を同じように感じていたんだ」

同じもの見て、同じように感じること。
それはなんだか幸せで温かくて良いなと想える、素直に笑って周太はこんどは水仙を示した。
清々しい花姿と香の花は東からの朝陽にまっすぐ咲いている、きっと好みじゃないのかな?

「ね、英二…これはね、水仙。雪のなかでもね、咲く花なんだ」
「良い香りするな。ね、周太?冬の花って香が良いのが多いのかな?」
「…あ、言われてみると、そうかな?」

これから咲く白木蓮、梅も香が良いな?
そう考えていると切長い目が覗きこんで笑って言ってくれた。

「でもね、周太?俺はね、『雪山』の香がいちばん良いと思う」

山茶花『雪山』は自分の誕生花、父が自分のためにと庭にも植えてくれた花木。
そして英二が勤務する奥多摩御岳山にも咲いている、想い深い花木。
そんなふうに言われると気恥ずかしい、けれど幸せが温かくて周太は微笑んだ。

「ん、ありがとう…ね、英二。お腹すいたよね、朝ごはんしよう?」
「うん、腹減ったな?今朝は周太、なに作ってくれる?」
「白菜のお味噌汁と、肉じゃがとね、卵焼しようかなって…英二、他に食べたいものある?」

そんな会話を交わしながら玄関から台所へと戻ると、仏花を周太は活け替えた。
あわい黄の蝋梅、水仙の白と黄に青緑の葉が青磁の花瓶に映える。これなら母からも合格点を貰えるだろう。
供えに行こうとエプロンを外して花瓶を持つと、ダイニングの椅子から見ていた英二が立ちあがった。

「周太、俺も一緒に行ってもいい?」

この家に英二が訪れるのは今回で4度目になるけれど、まだ仏間に案内したことは無い。
なんとなく遠慮して周太は仏間のことを英二に言ったことが無かった、たぶん母もどこか遠慮していたのだと思う。
だから英二は仏間の存在を知らされず、いつも書斎で父に挨拶してくれている。
英二の方も実直で怜悧な性質だから、この家に周太も母も知らない事情があることを気遣って黙っていたのだろう。
けれどさっき周太が「仏壇の花」と言ったのを聴いて口を開いてくれている。
それに昨日、母にも周太との婚約をもう承諾されている。一緒にお参りしてくれたら父達も喜ぶだろう。

「ん。お参りしてあげて?…きっと喜ぶから」
「ありがとう、周太」

きれいに笑って英二は一緒に廊下へと出てくれた。
玄関ホールを通って南西の部屋に入ると、いったん卓へ花瓶を置いて障子戸を開いていく。
大きな木枠の洋窓からは冬の朝陽がおだやかに樹木の翳を畳へと映し出した。

「きれいだな、木がよく見えるんだ、周太?」
「ん、そういうふうにね、祖父が庭木を植え込んだらしい…祖父も、山とか好きだったみたいでね」

何の仕事だったのかは知らない、けれど「山が好きだった」とだけは父から聴いたことがあった。
父も山が好きで休日には一緒に登ったこともある、そんな幸せな記憶を想いながら周太は仏壇の前に端坐して花を供えた。
燈明を灯すと線香を3本立てて今朝はあげた、たぶん英二は気に入った様子だから暫くこの部屋にいるだろう。
ふと気配を感じて振り向くと周太の後ろから、美しい端坐の姿が微笑みかけてくれた。

「周太、一緒にお参りさせてくれる?」
「ん、…はい。お願いします」

そっと鈴の内側を打つと合掌して朝の挨拶をする。
いつもと変わらない朝の挨拶の祈りに今日は、ふしぎな安らぎが寄りそって温かい。
この温もりはいま後ろに控えてくれる愛するひとの想い、自分を支えてくれる安らぎがうれしい。
こんなに安らかな想いで祈ったことは今まで周太には無かった。そっと合掌を解くと周太は英二に微笑んだ。

「…ありがとう、英二。…こういうのね、うれしい」
「うん?そっか。周太、俺の方こそね、うれしいよ。この花もさ、ここに活けてくれたんだね周太」

卓上の求婚の花々を見て英二が笑ってくれる。
気付かれて気恥ずかしくて、けれど幸せで周太は微笑んで立ちあがった。

「ん。やっぱり、見て頂かないと、って…あ、あのね、英二?ここ座ると気持ちいいよ?」

大きな洋窓の前の籐椅子の傍に立つと、英二も隣に来てくれた。
そこから窓の外を眺めながら切長い目を陽射しに細めて微笑んでくれる。

「ほんとだね、周太。温室みたいになるんだな。この椅子、周太もよく座る?」
「ん、母とね、お茶飲んだり…この籐椅子にね、よく父は座って本を読んでいたんだ…」

おだやかな眼差しで英二は父の指定席を見つめてくれる。
そっと微笑んで、ライン美しい藤製の背もたれに静かにふれると周太に訊いてくれた。

「周太、すこしここで俺、お父さんと話していてもいいかな?」

やっぱり英二は言ってくれた。
思った通りの英二のやさしい温かな想いがうれしい、周太は微笑んで頷いた。

「ん、…ゆっくりしていて?朝ごはんの支度出来たら、声かけるから」
「うん、ありがとう周太」

きれいに笑うと英二は、父の椅子に向合せた籐椅子へ、ゆったりと腰かけてくれた。
きっと父の椅子に敬意を示してくれている、うれしくてすこしだけ周太の瞳が熱くなった。
ここは仏間だけれど、でもいま想いを伝えたい。それに自分に繋がる人達にも自分の想いを見てほしい。
そんな想いに微笑んで周太は、しずかに婚約者の顔をのぞきこんでキスをした。

…ありがとう、英二…愛している

そっと離れて笑いかけて見つめた切長い目が、すこし大きくなっている。
この顔やっぱり可愛いな?幸せに微笑んで周太は廊下へと出た。
きっと英二は周太のキスが意外で驚いただろう、でも喜んでいるよね?そう想える自信がうれしくて温かい。
台所に戻るとエプロンをして湯を沸かす、湯呑を出して茶を淹れると盆に載せて南西の部屋の扉をそっと開いた。
大きな窓に目を向けると、ゆったり籐椅子にもたれて英二が庭を見つめていた。

「英二?お茶、ここに置くね?」
「ありがとう周太、熱いお茶いいね」

そっとサイドテーブルに湯呑を茶卓に据え置くと、きれいに笑いかけてくれる。
ゆっくり湯呑を持つと、ひとくち啜って周太を見あげてくれた。

「うん、旨いよ周太。約束、守ってくれて、ありがとう周太」
「ん、よかった…ゆっくりしてね」

英二には周太が一生ずっとコーヒーやお茶を淹れること。
そんな約束を御岳駐在所の給湯室でふたりは交していた、それは父を死なせた男に会いに行った翌日のことだった。
あれから2ヶ月が経って、今こうして穏やかな朝陽のなかにいる。穏やかな時間が幸せで周太は微笑んだ。
陽射しふる台所で朝ごはんの支度を整え終わるころ、ちょうどご飯が炊けた。
炊きたてのご飯を仏壇用のちいさな茶椀に盛りつけて、盆に載せ持っていくと周太は仏間の扉を開いた。
ふる光おだやかな畳にゆっくり立ち上がる翳が映りこむ、蒼い翳を瞳でたどると立ちあがった英二が周太に笑いかけてくれた。

「周太、」

呼んでくれる名前がうれしい、笑い返してから周太は仏前へご飯を供えて短く合掌した。
そっと座をずらしてから立ちあがると、サイドテーブルの湯呑を盆に載せる。
盆をサイドテーブルに置いて英二を見上げると周太は笑いかけた。

「お待たせ、英二…ごはん、仕度出来たよ?」
「うれしいな、ありがとう周太。ね、周太?あれって桜の木だよな」

きれいな長い指が窓の外を指差してくれる、その指先には染井吉野の広やかな梢が佇んでいた。
おおきな染井吉野、あの枝には春がくれば豊麗な花が咲き誇る。
その花の記憶に周太はゆっくりと瞬いた。

「ん、…染井吉野だよ。毎年ね、満開の時はきれいで…父の亡くなった日も、満開で…」

言葉と一緒にあふれる想いが瞳からこぼれた。

あの春、満開の桜の夜。
無言で帰宅した父の無残な遺体、家に運び込まれるとき花はふりかかって。
咲き誇る桜たち、この部屋に安置された父、豊麗に咲き誇る染井吉野は夜風に舞って散りふって。
沈黙に横たわる父を見つめる瞳に映った散り急ぐ桜が、若い死に急いでしまった父のようで、父の死顔は微笑みが美しくて。
けれどほんとうは、あの春の夜は、ほんとうは、

「…この籐椅子に座って…夜桜を眺めながら、本をね…読んでもらう約束で、けれど…」

ただ夜桜だけが窓いっぱいに散りふって、本を読み聞かせてくれる穏やかな声は聴こえなくて。
本のページを捲ってくれるはずだった父の大きな掌は、冷たい蒼白に動いてくれなかった。
聴こえない、冷たい、応えもない ― 「喪失」2文字が心を廻って胸が潰されて、涙、そして自分は血を吐いて。

…っ、おとうさん…っ!

心が叫んだ瞬間の瞳に、そっと温もりがふれて涙がすいとられた。
温もりに焦点が合った瞳には、やさしい穏やかな笑顔が笑いかけてくれる。
おおきく息を吸い込んだ唇にしずかな、やさしいキスがおりて周太はやわらかく抱きしめられた。

「周太…今年はね、ここで一緒に桜を見よう?約束するよ、必ず俺はね、帰ってくる」

ここで一緒に桜を見る?
ほんとうに?今度こそ桜を見る約束は叶う?

「…ほんとうに?…約束してくれる、の?」
「そうだよ、周太?これはね『絶対の約束』だ。必ず俺は帰ってくるよ、周太の隣に。そして、ここで一緒に桜を見て本を読む」

果たされなかった13年前の約束。それを叶えてくれるというの?
ほんとうに?

「…英二が、やくそくを…叶えてくれる?」
「そうだよ、周太?俺は約束したんだ、この家の想いも、お父さんの想いもね、俺が守る。
 だからね周太?お父さんの約束も俺が叶えるよ。周太、だから笑って?俺はね、周太の笑顔が大好きなんだから」

どうして英二?
どうしていつもこうなの?
どうしていつもこんなにも優しいの、自分を、父を母を受け留めてくれるの?

…お父さん、お祖父さん、ひいおじいさん…皆さま、このひとは、こんなに、やさしくて、美しいんです…

幸せで涙が止まらない。
どうか見てくれていますか?自分はこんなに幸せなんです。
そんな想いに涙こぼす周太の瞳を覗きこんで、きれいに英二は笑ってくれた。

「だってね、周太、『絶対の約束』でさ、昨夜いっぱいしただろ?だからさ、周太。俺は絶対に約束守らなくっちゃいけない。そうだろ?」

もうなんてこというんだろう、こんなときに。
恥ずかしくて赤くなりながら、けれど幸せに笑いながら周太は答えた。

「…ん、…でも、そんな恥ずかしいこと…ほとけさまのまえでいうなんて…えいじのばか…」
「あ、久しぶりに聴いたな?周太の『ばか』は。なつかしいな、前は俺さ、散々ばかばか言われていたもんな、ね、周太?」
「ん、…ばか…?…あ、ごはん…冷めちゃう」
「うん、腹減ったよ周太。朝飯にしてくれる?」

なんだかいろいろ気恥ずかしい、そして幸せでうれしい。
そんな周太に笑いかけながら英二は障子戸を閉めてくれる。
そして仏壇の線香が点し終えたのを目で確認して、一緒に台所へ向かった。

「周太の料理って、ほんとうにすごいよ?店の料理に負けない、ほんとだよ周太?」
「ん、…そう、かな?でも独学だから…」

ダイニングテーブルの食膳について話しながら、うれしそうに英二が笑って箸を運んでくれる。
その左手に持つ茶碗はもう3杯目のご飯が半分になった、ほんとうに気に入ってくれているのだろう。
うれしいなと見ていると英二は言ってくれた。

「うん、周太。店で出されるくらい整っているけれど、家庭的で温かくて好きだな。お母さんのために周太、いっぱい頑張ったんだろ?」
「ん。母はね、父が亡くなってから外食しなくなって…仕事が忙しいせいもあるんだけど。
 だからね、家での食事だけしかしなくて…それで俺、出来るだけ上手になって、おいしいものを母に食べてほしかったんだ…」

父が亡くなって母は、遠出も外食もしなくなった。
13年前の初夏、父の四十九日の夜。母は「お父さんはね、きっと今夜に旅立つの」そう寂しげに微笑んだ。
けれど翌朝になっても父の気配は書斎に遺されたままだった、それを母に告げると母は内緒話のように、そして寂しげに微笑んだ。
―お母さんがね、お父さんを引き留めてしまった。そんな気がする、な …
そして母はそれ以降は出来るだけ家から離れる事を避けた、今年の周太の誕生日に旅行に出かけるまでずっと。

「うん、そっか…お母さんらしい。そういうとこ、俺、好きだな」

そう言って微笑んだ英二の顔は、やさしくて美しくて不思議な温もりが静かだった。
いつも感じる「英二と母の不思議な繋がり」ふっと周太の心を甘く締めつけられて、けれど微笑んで周太は答えた。

「そう?…ん、俺もね、そういう母は、好きなんだ…」

自分も母は好き、大好きでいる。
親離れが難しいのは大好きすぎる所為もある、こんな自分は大丈夫だろうか?
そんな自省を心でしていると英二が、きれいに笑って続けてくれた。

「でね、周太?そんなお母さんのためにさ、料理をがんばった周太がね、俺は大好きで尊敬して、そして愛してる」

朝から何てストレートな告白。
だってまだ時間は9時にもなっていない、ほっと吐息をついて周太は目の前の華やかな笑顔を見つめた。
けれどやっぱり幸せでうれしい、気恥ずかしく想いながらも周太は微笑んだ。

「ん、…うれしい。愛してくれて…もっと、がんばるね?」

もっと料理も上手になりたい、そして英二に喜んでもらいたいな。もちろん母にも。
こんど美代に会ったら料理のレシピを訊いてみよう、そう考えながら箸を運んで穏やかな食事が終わった。
片づけを済ますとコーヒーを淹れながら、母の分のお節料理を重箱に詰めていく。帰りは今夜遅いと言っていた、夜食になるかもしれない。
淹れたコーヒーを持ってリビングに座ると、ふと見た腕時計が9時半と教えてくれる。
たぶん昨夜は眠りについたのも早かった、だから今朝も夜明けに起きられたのだろう。
おかげで今日が長くゆっくりできるな。うれしい気持ちとコーヒーを啜りこんでいると、英二が訊いてくれた。

「周太?この家のお墓はさ、遠いのかな」
「ん、…家からね、30分くらいだな。市営墓地なんだ、祖父が建てたらしい…のだけど?」

秋のお彼岸に墓参して以来、お参りしていないな。
そんなことを考えていると、きれいに笑って英二が言ってくれた。

「じゃあさ、周太?コーヒー飲んだらさ、お墓参りに行ってもいいかな?」
「…え、」

すこし驚いて隣を見あげると、やさしく微笑んでくれる。
だってそうだろ?そんなふうに目で言いながら笑いかけてくれた。

「周太。きのう俺はね、お母さんからも承諾をもらっただろ?周太を嫁さんに貰いますって。
 婚約はもう調ったよね、周太?だから、お父さんのお墓にもお参りしてご挨拶したい。いいかな?」

お父さん。きっと聴いているよね?
俺が愛するひとはね、こんなに実直で真摯で真直ぐなひとだよ?
そして本当に俺もね、お父さんもお母さんも、家も大切にしてくれる。

「ん。…ありがとう、英二。お参りしてあげて?きっとね、英二が来てくれたら、喜ぶから…庭の花を切って持って行くね」

あの13年前の春の夜の哀しい現実。
あのとき、ほんとうに全てが「終わり」だと想った、幸せは帰ってこないと想った。
けれど今こんなにも幸せが温かい。

「こっちこそだよ、周太?今朝もさ、仏壇にお参りさせてくれただろ?
 俺ね、ほんとうに、うれしかったんだ…周太にも、この家にもさ、認められて受け入れてもらえたんだな、って」
 
幸せの温もりが瞳から頬つたうのを、きれいな長い指がそっと拭ってくれる。
そして切長い目は真直ぐ周太を見つめながら微笑んだ。

「周太、ほんとうに俺が、この家を守って良いね?苗字は「宮田」になってしまうけれど、この家に俺が入って守ること、許してくれる?」

きっとみんな聴いているよね?そして喜んでくれている。
きれいな涙をひとつこぼして周太は微笑んだ。

「はい…もちろんです、俺の、はなむこさん?」

気恥ずかしいな、こういうの。
けれどほら、気恥ずかしかったけれど笑ってくれている。
この笑顔を見るためならきっと自分は頑張っていける、その勇気も決意も手に入れたから。
ほんとうは泣き虫な自分は一人では自分すら守れない、けれどこの笑顔の為なら自分は強くなれる。
そんな笑顔がまた幸せ華やかに周太に笑いかけてくれた。

「よかった、俺の花嫁さんは可愛いね?
 じゃあ周太、10時には出よう?そしたら昼飯には帰ってこれるよな。それとも周太、どこか食べに行きたい?」
「ん。…昼もね、作るもの考えてあるけど、買物はこれからなんだ…英二は外が良い?」
「周太に作ってほしいな。買物ってさ、周太?あのスーパーマーケット行くんだろ?俺ね、周太と買い物するの好きだな」

会話をしながらのコーヒーが温かい。
きれいな幸せな笑顔を見つめながら周太は幸せで微笑んだ。

飲み終えて片づけると、庭に降りて一緒に花を選んで伐っていく。
花切ばさみの潔い音が青い冬空へと響いて、ひとつずつ花が花束へとなってまとめられる。
四季咲撫子、クリスマスローズ、水仙、蝋梅、それから山茶花『雪山』の真白な花姿。
そうしてまとめた冬の花々を抱えて周太は、陽射しに透ける白皙の貌を見あげて微笑んだ。

「一緒にね、花を選んでくれて、ありがとう。英二」
「どういたしまして、周太。支度とか手伝うことあるかな?」
「ありがとう、英二。でもね、すぐ仕度できるから…英二、ちょっと待っててくれる?」
「うん、じゃあ俺、コート着たらさ、庭見ていようかな」

家に入ると花の茎元へ濡紙を巻いてアルミ箔でとめると和紙できれいに包んでいく。
それから仏間の線香を2束だしてライターと、新品のさらしも一緒にまとめて仕度した。
そんなふうに墓参の支度を整えてから自室へ行って、花言葉のカードを出すと屋根裏部屋にあがった。

南面する窓からの陽光があたたかい、陽射しに温められた床をあるいて周太はトランクの前に座りこんだ。
ふるい木製のトランクは祖父が使っていた物と聴いている、それを周太は幼い頃から宝箱にしてきた。
これも13年間は一度も開けずにいたけれど、雲取山から帰ってきた翌日から帰省のたびに開いている。
そっと錠を開けて周太は今日もトランクを開いた。

数冊の採集帳と2つのちいさな木箱、それから腕時計のケースが納められている。
持ってきた花言葉のカードを採集帳の上に納めると、周太は腕時計のケースを手にとった。
しずかにケースを開くとそこには父の遺品の腕時計が、規則正しく時を刻んで動いている。
この時計を13年間ずっと周太は身に付けて過ごしてきた。
初めて嵌めた10歳の春は大きすぎて、ポケットに入れて持っていた。
そして中学生に上がるころに左腕に嵌めて、それからずっと毎日の時を父の遺品に見つめ続けた。
そんな時間は孤独と哀しみの現実がただ春の夜を見つめさせて、舞い散る桜と父の遺体の記憶をなんども心に起こさせた。

…けれどもう、桜はね、きっと幸せの記憶になる

今日あの南西の部屋で、英二は約束をしてくれた。
あの13年前の春の夜に父と過ごすはずだった、本を見ながら夜桜を眺める幸せな時間。
その時間を今度の春に英二は周太に与えてくれる。

…ね、おとうさん。お父さんの約束をね、14年を超えて英二が、かなえてくれるよ?

きれいに微笑んで周太は時計のケースをそっと閉じた。




(to be continued)

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