萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第32話 高峰act.3―side story「陽はまた昇る」

2012-01-18 23:58:24 | 陽はまた昇るside story
目標への道程、




第32話 高峰act.3―side story「陽はまた昇る」

朝の「おはよう」に写メールを添付して送信すると、英二は携帯の電源を落とした。
富士山では低温と不安定な電波状況の為にバッテリー消耗が激しい。それで国村と交代で電源ONにすると決めてある。
防寒ケースに入れてチェーンで繋いだポケットへと戻すと英二は国村に笑いかけた。

「お待たせ、国村。あ、国村も美代さんにメール?」
「うん。だってここ最高峰の山だろ?約束だからさ、美代は俺のメール待ってるよ」

底抜けに明るい目で笑って国村も送信すると携帯をしまい込んだ。
国村と美代は隣同士の幼馴染で生まれた時からの恋人でいる、そんなふたりの約束たちはどれも純粋で温かい。
この素朴で純粋な初恋を抱いている友人が英二は好きだ、きれいに微笑んで英二は訊いた。

「最高峰に登ったら、メールするって約束なんだ?」
「そうだよ、日本なら各都道府県の最高峰な。ま、雲取山は近所だから例外だけどさ。あと長野とかの高山地域はどの山でも送ってるよ」
「いいよな、そういうの俺もするんだ。やっぱり今の携帯のとこが電波、一番届くかな?」
「だね、これだと富士山は大抵の場所で繋がるな。さて、行こっか」

話しながら7合5勺へ向けて歩き始める。
高度が増すにつれて息がすこし詰まって感じられた、気圧も変化していくのが解る。
クライマーウォッチの高度計を見ながら英二は足元の雪質に注意して登って行った。
7合5勺付近に着くと国村が英二の顔を覗きこんだ。

「標高2,900mだね。宮田、調子どうだ?」
「うん、すこしだけ息が詰まるかな?あとは特にないよ、普段通りだな」

軽く頷いて国村はすこしだけ考え込んだ。
それから笑って英二に訊いてくれた。

「じゃ、この辺りで雪上訓練するよ。宮田は野陣尾根の急登に慣れているしな、斜度も悪くないだろ。キックステップはどうする?」
「うん、いい機会だから復習させて欲しいな。時間とか大丈夫かな?」

言いながらクライマーウォッチを見ると7時過ぎだった。
6合目から国村はゆっくり登ってくれている、英二の順化を気にしてくれるのだろう。
ありがたいなと微笑んだ英二に国村がいつもの口調で飄々と言った。

「ああ、大丈夫だね。じゃ、吉田大沢に入るよ?」

吉田大沢は山梨県側に広がり富士山の中で最も深く最も大きく浸食を受けた沢になる。
そして他から飛ばされてきた雪も、ここで固まって積もっていく。
そんな沢は、おおらかに雄大な雪渓となって朝陽に輝いている。座ってアイゼンを脱ぎながら英二は息をついた。

「すごい眺めだ…きれいだな、」
「だろ?天気良くてよかったな。ここはね、3月から4月にかけては『青氷』になるんだ」
「青氷?」

あまり聴きなれない単語に英二は、脱いだアイゼンをザックにしまいながら訊いてみた。
横に並んで立っている国村は輝く雪渓に目を細めながら教えてくれる。

「昼間とけた雪がまた凍ってさ、雪面が青く光るんだよ。で、その青氷。アイゼンが立たないほど固いんだ、だから突風が吹くと危険だよ」
「雪山は、真冬よりも春先の方が危険だって言うのは、そういうこと?」

春先の雪山での遭難事故。
その事例を英二は今まで資料で読んでいる、その現場になる場所に今まさに自分は座っている。
山岳救助の現場を思いながら英二が立ち上がると、同じ目の高さで細い目が笑った。

「そう、あのころの方が雪が締りきって固いんだ。だから足場がとれない、それで滑落事故が起きる。
 締雪って言葉があるんだけどさ、積もった雪の重みで全体が締って結晶も氷の粒になるんだ。
 新雪の体積は90%が空気だけど、締雪は70%になるらしいよ。そうやって雪も変化していく、雪山も生き物だよな」

雪山も生き物、そんなふうに国村は言う。
その言葉に英二も頷けてしまう。いつも御岳駐在所での巡回業務でほぼ毎日の朝夕を御岳山に登る。
その山容は日々移ろってゆく、そして朝と夕でも違う顔を見せていく。

「うん、…本当にそうだな、山って登るたびに違うよな。山って生きているんだな」
「だろ?さ、キックステップ始めよっか。念のため落石にも気をつけろよ?」

キックステップは雪上歩行のもっとも基本的な技術になる。
アイゼンを付けずに雪面に靴を蹴込むキックをしてステップと呼ばれる足場を作り、堅い斜面や急斜面を登高していく。
実際には、アイゼンを装着する冬山よりも春山や夏山の雪渓で使う機会が多い技術になる。

「うん、気をつけるよ。どれから始める?」
「じゃ、直登からな。まず宮田の自由にやってみてよ、でさ、この雪に慣れてきたらスピードあげてみて」

直登は膝を支点にして、爪先を振り子のように前に蹴り出して爪先で雪面を削るようにしてステップを作りだす。
上から足を打ち下ろすのではなく、コツは爪先を若干下向きにして蹴り込んでいく。
蹴り込んでステップができたら、その足に体重を移して勢いをつけず、すっと立ち上るようにする。
そんな英二の足運びを見ていた国村は軽く頷くと口を開いた。

「うん、いいんじゃない?やっぱ野陣尾根でだいぶ慣れたな。巧いよ、おまえ」
「よかった、なるべく国村の真似して覚えたんだ、」

奥多摩に20cmを超える積雪があった田中の四十九日の翌朝、英二は初めてキックステップを国村から教わった。
あのときは田中の四十九日を雲取山頂で送った、そして翌日そのまま雲取山で雪上訓練をしてから下山している。
あれから1ヶ月ほどの間を雪山を歩いてきた、それでも本格的雪渓は初めての経験だった。

「だね、俺と似てるよな。じゃ次は斜登な、同じように馴れたらスピードあげてって」

斜登は急斜面が続く場合に斜面をジグザグに登っていく時の足運びになる、そして直登より斜登の方が疲れにくい。
斜登でも直登のキックステップと同様に靴を雪面に蹴り出すが、蹴込むのは爪先ではなくてサイドエッジになる。
ポイントは斜面の傾斜度に関わらず常に靴底を水平に保つこと。
そうした教えられたことを復習しながら英二は足を運んでいった。

「うん、斜登もいいね。水平トラバースいこう、東側に向かってスピードあげてって」
「登山道に向かうんだよな、」

水平トラバースの足の置き方は山足は進行方向に向け、谷足は谷側に少し開き気味にする。蹴込みの要領は斜登と同じになる。
蹴込む場合、最初に立っていた位置より上の線に置きがちで、結果わずかに斜めに登高してしまう事が多いが、この方が歩きやすい。
そこで目的の場所へ横断する際は、斜めになる角度を計算に入れて若干低い位置から始めていく。

「やっぱこれも巧いな、おまえ。水平トラバースは怖がる人、多いのにな」
「そうなんだ?でも、確かにちょっと怖いかもな?」
「まあね。じゃあ、直下降と斜下降な。下りは気をつけろよ?
 一歩間違うと滑落になる、雪質をよく判断して体重をしっかりかけて踵を雪に食い込ませろよ」

細い目がすこし厳しい空気になる、英二も1つ息をしてから慎重に足を踏み出した。
下降のキックステップは直登と違ってやり直しは効かない、失敗すれば滑落につながってしまう。
下降の場合は蹴るのではなく体重を利用して踵を一気に打ち下ろし、雪に踵を喰い込ませていく。
打ち下ろす足の靴底は水平または爪先を少しあげ気味に鉛直に打ち下ろすのがコツ。
踵が雪面に接すると同時に後足から体重を抜き、打ち下ろした前足に全体重を移動させ踵を雪に食い込ませてステップを作る。
視線を斜面の雪質に向けてよく判断し、体重をしっかりかけてテンポよく進めていくようにする。
英二の様子を見ていた国村は頷くと、テンポアップの指示を出した。

「うん、じゃあ最初のスタート地点まで一挙に下って。よく集中しな?」
「おう、」

がしがしと雪に踵を踏み込んでいく、自分の影が青く雪上へと延びていくなかを英二は踵だけに集中して下った。
そうして元の地点まで戻ると今度はアイゼンを履いての歩行訓練を始める。
また座ってアイゼンを履くと足を上下させて履き具合を確認していく。

「よし、ちゃんと履けてるな?じゃあ、キックステップと同じ順で」
「直登、斜登、水平トラバース。で、下降だよな?じゃあ、始めます」

アイゼンでの登高はアイゼンを斜面に対してフラットに置く、フラットフッティングが原則になる。
そして急な傾斜では前爪だけを突き立てるフロントポインティングで登っていく。

「うん、アイゼンも使い方すいぶん慣れてるな?この1ヶ月は雪をよく登ったもんな」
「そうだな、12月は捜索も多かったしな」
「あー、雪での道迷いな?あれ、マジ迷惑なんだよなあ。まあ、宮田がアイゼンに慣れたから良かったのかな、ねえ?」

奥多摩は登山道と仕事道の交錯も多く、地図を持たない初心者などは道迷いを起こしやすい。
そこへ雪が降ってしまうと道は消されてしまい、どこも似たような林へと姿を変えるポイントもある。
そうした勉強不足での遭難を国村は嫌う。山の峻厳さを知ろうともしない態度は、純粋無垢な山ヤとしては許しがたいのだろう。
こういう国村は山ヤとして美しい、そして英二もそんな友人を好きで尊敬している。
水平トラバースで目的地まで移動し終えると、英二は友人へ微笑んだ。

「そうだよ、国村?おかげで俺、急斜面や谷にも慣れることできたよ。ここからまた下ればいい?」
「うん、直下降と斜下降な。アイゼンの爪をピッケルで叩く時はさ、十分に風に気をつけろよ?」

下降でもアイゼンをフラットにして下っていく、少し斜面をのぞき込むぐらいに前傾姿勢をとると良い。
そしてアイゼンの爪に雪が付着したのをピッケルで時々叩き落していく。
アイゼンの爪には付着した雪が団子状になり爪の効果がなくなる、それを防ぐためにピッケルを使う。
そうして歩行の一通りを確認して国村が満足げに笑った。

「よし、やっぱり宮田は器用だな、この1ヶ月でマスターしているね。じゃあ、滑落停止訓練いくよ?」
「うん、よろしくな。俺、これはまだ経験少ないんだ」
「だよな。よし、ピッケルの打ち込み方や体勢のおさらいからするよ?」

滑落停止は雪の斜面を滑落した場合、ピッケルのピックを雪に打ち込むことで停止するブレーキの技術になる。
雪渓に並んで向き合うと国村は自分のピッケルを示して説明を始めた。

「まず利き手で親指側にブレード、小指側にピックが来るように持つ。もう一方の手はシャフトの中程を握る。
 そして利き手の方を利き手の肩口に、シャフトを握った方を脇腹に保持する。重要なのは胸にしっかりとつけることだ」

ピッケルは柄の部分をシャフト、シャフトの上端に付く頭部をヘッド、下端に付いた尖った部分をシュピッツェまたは石突という。
そしてヘッドの両側に付いた刃のうち細く尖った刃をピック、広がった方の刃をブレードと呼んでいる。
国村は自分のピッケルを鋭利なピックが外側に向くように持つとシャフトを保持して構えの手本を見せた。
それを見ながら英二も構えると、そっくりの姿勢を国村に向けた。

「うん、おまえってさ、やっぱり俺と同じ姿勢になるよね?」
「そうか?じゃあ上手く出来ているんだな、良かったよ」
「ああ、こっちも説明しやすくて助かるね。で、実際に滑落した場合。
 体が滑り出す前に素早く体を利き手側に反転させる、そしてピックを体ごと打ち込んで雪面に突き立てるんだ」

話しながら国村は雪面に仰向けに寝転ぶと、実際に体を反転させてピックを打ち込んで見せた。
それを見て英二も同じように仰向けから反転してピックを打ち込んだ。

「この時に気をつけるべき事は3つ。
 まず足は雪面から離すこと。そうしないと、引っかかって投げ出されることがあるからね。
 次にピックを斜面に垂直に保持すること。そして3つめ、肘をしっかり曲げて手を胸にしっかりと保持すること」

言いながら国村は起き上がった。
英二も起き上がって一緒に立ちあがると、いつにない真面目な顔で国村が言った。

「そしてこれが最重要ポイントだ、絶対に体が滑り出す前にやれ。いま俺が教えたことを完璧に、体が滑る前にやれ」

底抜けに明るい目が真直ぐに英二を見ている、その目は鋭い怜悧さに真剣でいる。
その目に微笑んで見つめ返しながら英二は確認した。

「実際に滑落を起こす危険な急斜面、そこでは止まれない。そういうことだよな」

「そうだよ、雪上訓練で使う程度の斜面でしか実際には止まれない。
 だからまず転ばないこと、滑らないことだ。
 それでもバランスを崩したり、転んだなら、絶対にすぐピッケルを雪面に突き刺せ。
 絶対に体が落下しないようするんだ、なんとか体勢を立て直せ。表層雪崩でもこれは同じだ、ピッケルで体を保持しろ。
 それでも滑落を始めてしまったら、いま俺が教えた通りのことを完璧にやりな。そして絶対に滑落するな、解ったな?」

きっぱりと断固とした口調で国村は言いきった。
これから英二は国村と一緒に雪山への登頂を重ねて最高峰を目指す。そのとき滑落は生命を奪う最大の原因となっていく。
だから国村は真剣に言ってくれている、真直ぐに山の相棒を見て英二は静かに笑った。

「うん、絶対に完璧にやる。だから今、ここできっちりマスターするよ」
「そうだよ、今ここでマスターしろよ?じゃあ、斜面を仰向けに滑って止まる練習な。ちょっと直登するよ」

すっと細い目が笑って山頂方向へ登り始める、英二も並んで登り始めた。
ほんとうに国村は真剣に英二を自分のアンザイレンパートナーとして最高峰へ登ろうとしている。
そして必ず無事に登頂し、英二を連れ帰ろうとしてくれている、そのことが滑落停止訓練にも鮮やかに伝わってくる。
こんなパートナーがいてくれることは幸せだろう、きれいに英二は笑って輝く雪渓に立った。

「じゃあ、まずは3m滑って停止な。俺がやってみせるから、そしたら宮田も来なね」
「うん、解った。よく見ておく」
「あと奥歯きちんと噛みあわせろよ、舌噛むとヤバいからね。じゃ、行くよ?」

からっと笑うと国村はザックも背負ったままで仰向けに富士の斜面を滑り始めた、ざあっと雪煙があがり姿が一瞬隠れる。
そんな初めて見る目前での滑落に英二は軽く息を呑んだ、けれど雪山での現実を真直ぐに英二は見つめた。
雪煙あげた国村はすぐ3m地点に着、くるり鮮やかに反転すると即時に確実な停止をした。
そして起き上がり雪を払い立ちあがると、片手をあげて英二に合図する。
それに頷くと英二は同じように仰向けに滑り始めた。

「…っ、」

思ったよりスピードが出る、初めての滑落する感覚に英二は驚いた。
粉雪が煙になって白く紗をひき視界が奪われる、そのなかで英二はピッケルの構えを素早く整えた。
すぐ雪煙の向こう国村が立つ3m地点が近づいて、英二は自分の利き手側になる右へ反転し、力一杯ピックを雪面へ打ち込んだ。
それでも少し体が滑ってしまう、なんとか停止すると国村が傍に片膝をついた。

「脚はしっかり上がっているな。でもピックの打ち込みがブレた。見ろよ、ピックが雪面を削りこんだトレースが出来ているだろ?」

言われて右手元を見ると、埋まったままピックが雪を削った跡が30cmほどできている。
その英二の手元を覗きこんで国村が説明を始めた。

「ブレードを鎖骨に当てるんだ、そして体ごとピックを垂直に打ち込め。おまえの場合、ピックが斜めになったから止まれなかったんだ」

説明しながら国村は英二の手元を直し、打ち込みの姿勢を直していく。
姿勢を直すと目で確認してから国村は英二の背から被さると、ヘッドとシャフトを握る英二の掌に自分の掌を被せて握りこむ。
そして国村は握りこんだ英二の拳へと自分の体重ごと力を加えて、ピックの打ち込み強度を英二に教え込んだ。

「いいか?これ位の力でピックは打ち込め。そうじゃないと、俺たちぐらい体がでかいと止まれない。
全身の体重を一瞬でピックの尖端にかけるんだ。足を雪面から離すときに蹴りあげる勢いで全体重をピックに乗せろ」

思った以上の強い力が英二の拳にかかる、その力の重みを英二は感覚で覚え込んだ。
国村と英二は体格も体重もほぼ変わらない、そんな国村の模範指導は英二にとって解りやすいように実際に出来るはず。
そんな確信と一緒に英二は起き上がると、国村に頷いた。

「うん、解った。やってみるよ」
「よし、じゃあ次は5mな。また先に俺が滑るから、そしたら俺が言った通りにやれ。絶対に次で決めろ。じゃ、行くよ?」

底抜けに明るい目で真剣な眼差しを英二に射こんで、国村は大雪渓を仰向けに滑落した。
さっきより大きな雪煙が青空に舞いあがる、そして青いウェア姿は足を跳ね上げ反転し、ぴたり鮮やかに停止した。
すぐ立ちあがって英二に手をあげてみせる。頷くと英二は雪へと滑りこんだ。
あっという間に雪煙があがって空が白くなる、いま国村に言われたことを一瞬で思い起こしながらピッケルを構えていく。
いま直されたようにブレードを握る拳を鎖骨に当て、ピックの刃が体と水平になるように姿勢を保持する。
そして青いウェア姿が目の端に映り込んで、脚を蹴り上げるように反転して垂直にピックを打ち込んだ。
がくんと衝撃が全身を抜けて停止する。見つめた雪面にピックはしっかり喰い込んで、雪削るトレースは出来ていない。

「よし、今度は上手くいったな。今の感覚と要領を絶対に忘れるなよ。今度は8m、徐々に距離を伸ばすからね。ちょっと直登してから滑落するよ?」

徐々に滑る距離を伸ばして滑落停止技術を体で覚え込んでいく。
そうして雪まみれになりながら10時半になる頃、英二は国村から合格を貰うことが出来た。

「うん、やっぱり宮田は器用だね。今日1日でこれだけできりゃさ、大したもんだよ」
「そっか。たぶんさ、国村の教え方がいいんじゃない?俺たち体格とか似ているし、解りやすかったよ。ありがとうな」

もし国村が居なかったら英二の山岳技術は、3か月半でここまで上達出来たかは難しい。
それを英二自身が一番よく解っている、英二にとって国村は最も解りやすい手本で、毎日訓練に付合え指導してくれる相手だった。
なにより国村は世界レベルでのトップクライマーを嘱望されるほどの素質と技術を兼備している。
そして最高の山ヤ仲間で警察官の同僚で一番の友人でいる、出会えた幸運の感謝が温かで英二はきれいに笑った。
そんな英二の笑顔を眺めて愉快そうに国村は笑った。

「似ている、うん。それもあるよな?あ、腹減ったな俺。ちょっと食いたいな、あそこの山小屋のあたりで昼にしようよ」

笑って国村は上方の山小屋を指差した。
雪の中に埋まったような様子の小屋は、雪が深そうな雰囲気でいる。
ラッセルの練習が出来そうでいいな、そう思いながら英二は頷いた。

「うん、いいよ。俺も腹減ったな、あそこまで登ればいいんだな?」
「おう、ちょっと登ってさ、腹ごしらえしようよ。あ、今ちょっとアーモンドチョコ食うかな」

そう言って国村はザックから箱を出すと、英二にも分けてくれた。
そんなふうに数粒ずつ口に入れてから、他愛ない話と一緒に並んで登り始める。
よく晴れた青空に風はほとんど無い、11時前にさしかかると陽が高くなって雪の反射が強くなり始めた。
ウェアのポケットを探ると国村は登山用サングラスを出して掛け、英二を振向いた。

「ほら、お前もそろそろ掛けとけよ?雪盲とか怖いからさ」
「そうだな、ありがとう国村」

雪山では雪の照り返しから瞳孔を痛めることがある、その予防と冷たい風や雪から目を守るためにサングラスをする。
英二も登山用サングラスを掛けた、ハイカーブでゴーグルの様にスポンジ部分が入ったモデルになっている。
ハイカーブの方が冷たい風や雪の進入を防ぎ、広い視界を手に入れることが出来るからと国村が選んだものだった。
きちんと雪山で掛けるのは初めてになる、横から覗きこんで国村が愉しげに笑った。

「うん、様になってるよ?おまえってさ、基本美形だから何やっても美人だよな」
「そうか?国村こそ、はまってるよ。なんかアルピニストって感じだな」
「だろ?俺は根っから山ヤだからね、山のことなら何でも似合うんじゃないの?」

お互いの見慣れない顔に笑いあいながら足元と風に注意していく。
今日の富士山はおだやかな晴天に恵まれている、けれど突風がいつ来るか解らない。
富士山は単独峰で高峰、そして太平洋に南面しアルプスの屏風を背負っている。こんな条件では強風がまともにくらいやすい。
静かな雪渓を上がっていくアイゼンの音だけが響くなか、軽くラッセルをして目標の山小屋の軒先にふたりは着いた。
直接に風があたらない場所を選んで雪を除けて場所を作ると、クッカーを出して湯を沸かし始める。
ザックに腰かけると英二は2つのマグカップに粉末のクリームスープを出した。その横から国村がベーグルパンを渡してくれる。

「これな、ばあちゃんが昨日、焼いてくれたんだ。冷たくなっても旨いようにね、工夫してくれてあるよ」
「へえ、ありがとう。…あ、ほんと旨い。すごいな、今、マイナス10度とかだろ?それで凍ってないってすごいよな」
「だろ?米粉とか使っているらしい。ばあちゃんって実験好きなんだよな、まあ、対象は料理ばっかだけどね」

国村も実験好きで、農業高校時代に驚異的アルコール度数の日本酒醸造に成功している。そういう点は祖母譲りなのだろう。
なんだか楽しそうな人だな?こんど会うことを楽しみに思いながら口を動かしていると湯が沸いた。
沸いた湯をマグカップへ注いで素早くかき混ぜると、1つを国村に渡してやった。

「ありがとな。おまえ、調子はどうだ?」
「うん。高度とか慣れたのかな?さっきみたいな息苦しさも無いな、大丈夫だ」

言われて気がつくと体が楽になっている。さっき雪上訓練に集中していて、息苦しかったことは忘れていた。
順化が上手くいっているらしい、良かったなと思いながらスープを啜りこんだ。
そんな英二の様子に楽しげに笑いながら国村が言った。

「うん、順化が上手くいっているな。よかったよ?だってここさ、もう標高3,000m超えているからね」
「え、?」

驚いて英二は横の秀麗な顔を見た。
その目は底抜けに明るく笑って愉快気にこちらを見ながらスープを啜りこんだ。
そしてほっと一息つくと、山小屋の看板を指差して笑った。

「ほら、この山小屋ね?冬は閉鎖しているけど八合目の老舗なんだ。標高で言ったら3,200くらいかな?」
「3,200m、?」

ちょっと驚いて英二は辺りを見回した。
そういえば空気もぴりっと冷たい、それに竪穴に雪洞を掘る時すこしだけ息が上がっている。
訓練ですこし疲れたからかと思ったけれど、高度による気圧の所為だったかもしれない。

「あ、そういえば湯が沸くにも時間かかっていたもんな?そっか、俺、3,000mを超えられたんだな」
「だね、マジよかったな。おまえもさ、俺と一緒で順化の適性あるみたいだな?まあ、さっきも雪上訓練あれだけこなしていたしな」

言いながら国村がマグカップを乾杯の様にぶつけてくれた。
うれしくて笑いながら乾杯に応じてスープを啜りこむと、ほっと息つきながら英二は微笑んだ。

「うん、なんかちょっと感動するな。俺、山の適性あるって言われるとさ、ほんと嬉しくなるんだ」

「そりゃ、そうだろね。おまえもね、生まれついての山ヤだからさ。
 だのに宮田は都会で生まれちゃったろ?だからさ、ずっと山に帰りたかったんじゃない、おまえ。それで嬉しいんじゃないの?」

細い目を温かく笑ませて笑ってくれる。
いま言ってくれた「ずっと山に帰りたかった」その言葉が図星だと素直に想える。
こんなふうに国村は物事の本質をついて教えてくれることが多い。
そんな自分の山ヤ仲間に笑いかけながら英二は口を開いた。

「うん、そうなんだ。俺さ、山にいるの大好きなんだ。
 でも俺、青梅署に赴任するまではさ、ほとんど山に登ったことも無かった。警察学校の訓練で初めて登った位なんだ。
 でも御岳駐在所に配属出来て、毎日いつも山に登るようになったろ?それからは俺、ほんと時間が充実しているんだ。
 山岳救助隊の現場や吉村先生の手伝いでさ、山の怖い面を何度も見させて貰って教えられた。それでも俺、山って良いなって思う」

「だろね。おまえはさ?この俺がアンザイレンパートナーに選んだんだ。だから、きっと宮田もさ、俺と同じ生粋の山ヤだよ」

底抜けに明るい目が心底うれしそうに笑って、ベーグルを飲みこむとスープのマグカップも空けた。
その横で頷いて英二もスープを飲干すと、カップを軽く拭き清めてザックへとしまう。

「うん、俺、山ヤでいたい。23年間は俺、自分って何やりたいのかも解らなかったんだ。
 でも、周太に会えた。俺は周太から全てを教わったんだ、ほんとの自分のまま生きる事が一番だってね。
 そして俺は山岳救助隊を知って、山ヤに憧れて、今ここにいるよ。いつも俺はね、周太がきっかけになって全てを見つけてきたんだ」

真直ぐ自分の辛い運命に立つ周太の姿に憧れて、どんな苦しみにも歪まない純粋な優しさに恋をした。
本当は華奢で繊細で泣き虫な周太の素顔、それでも周太は逃げずに自分の道と向き合っている。
そんな周太の真実を知って守ってやりたいと心から願ってしまった、そして自分はこの道を選んだ。
そうして今は自分が周太の「隣」であること、心から誇らしくて英二は微笑んだ。
そんな英二を見た細い目は温かく笑んで、穏かに国村は言ってくれた。

「うん。そういうのってさ、いいね。おまえが昨日、『絶対に俺のもの』って言った意味、わかるな」

「だろ?俺にとって周太はね、今の自分を作った全てなんだ。
 だから周太なしには何も考えられないよ、もう、どうしても俺のものでいてほしくて婚約もしたんだ。
 周太はね、初めて俺の心を見つめて受けとめて、初めて俺と真剣に向き合ってくれた人なんだ。
 そして初めて恋して愛した人だよ、心から絶対に欲しいって想ったのは周太だけなんだ。
 そういう欲が自分にもあるってさ、俺は周太で初めて知ったんだ。だからもう決まりだ、周太は唯ひとり最愛の人なんだ」

そういうのっていいね?そう細い目が笑ってくれる。
やさしさ温かい眼差しのまま英二を見、立ちあがりながら国村が笑った。

「Femme fatal、運命の相手って感じだな」
「うん。ほんとにそうだよ。俺の嫁さんは周太だけしか務まらないよ、きっと」

英二も立ちあがって腰を伸ばすと、また片膝ついてザックを背負う。
その横で同じようにザックを背負うと国村が笑った。

「しかし、初めてづくしだな?それじゃあさ、ほんと子鴨の刷り込みみたいなもんだよね。周太周太って言っていてもさ、仕方ないよな」
「だろ?でも国村、勝手に『周太』って言わないでくれよ?その呼び方はね、俺だけがしていいんだから」
「なんだそれ?だって湯原くんのお母さんだってさ、名前で呼ぶだろ?」
「お母さんは『周』って普段は呼んでいるんだ。お父さんも同じだよ、だからさ?ほんと俺だけが『周太』って呼んでいるんだ」

話しながら並んで歩き始める。
さっきより少し落としたペースで登りながら国村が口を開いた。

「まあね?呼び方とかってさ、けっこう重要なのかもね?じゃあ俺もそろそろ『湯原』って呼ぼうかな?」
「うん、苗字なら良いよ。名前の呼び捨ては絶対ダメだけどね」
「へえ?じゃあさ、『周太くん』って俺が呼んでもいいわけだ?」
「…なんか国村が呼ぶと嫌だな。やっぱり、おまえは『湯原くん』が一番なんか落ち着いて聞こえるな」

話しながらもアイゼンによく気をつけながら登っていく。
雪山でのアイゼンワークは命に関わってくる、特に下りの方がより重要になる。
そうして登って八合五勺へと着いて、国村がクライマーウォッチのチェックをした。

「ここで標高3,450mだね、調子はどうだ?」
「うん、別に頭痛とかも無いな。いつもよりは足取りがやや重いかな?ってくらいだ」

そっかとつぶやいて国村は少し考え込むようクライマーウォッチを見た。
時刻は現在12時半前、標高3,200m八合目付近から標高差250mを30分程度で登高したことになる。
サングラスを外すと空を仰いで国村は上空を見、こんどは西の方を見て最後に北のアルプス方面を確認していく。
そして国村は底抜けに明るい目で、からりと笑って満足げに頷いた。

「うん。天候は問題ないな、いける。このまま登頂しよう、宮田」

アンザイレンパートナーの言葉に英二は山頂を見あげた。
ここは八合五勺、標高3,450m付近。吉田口山頂までの高度差は260m。
そして最高峰の標高3,776m剣ヶ峰との高度差は326mになる、『最高峰』に英二はそっと息をついた。

「俺でも、いけるかな?」

「そうだな。山頂はもっと寒い、風も強い。そして冬の富士は標高4,000mに該当する。
 冬の富士は気象条件によってはエベレストと変わらないって言われるしな。
 ただ、この今現在の気象条件は登りやすい。でも、明日もこういう好天に恵まれるかは微妙だろ?
 明日は雪の可能性もある、お初の登頂で吹雪はお勧めできない。だったら今このチャンスに初体験を済ませておく方が安全だろ?」

「初体験」という言葉に英二はちょっと笑ってしまった。
その笑いに気がついて国村も笑いながら続けた。

「まあね、本当ならさ?宮田の『初体験』は湯原くんのものだろ。でもまあ、こればっかりは俺が宮田のお初を戴くしかないね」
「すごいセクハラオヤジな発言だな、前後を知らないで聴いたら驚くよ?」

ほんとうに国村はオヤジだ、でも面白い。可笑しくて英二は笑ってしまう。
その横で国村は登山サングラスを掛けなおしながら細い目を笑ませて、いつもの飄々と涼しい口調で続けた。

「セクハラオヤジで結構。俺はエロいし、山千オヤジだからね。
 ほら、宮田?このチャンスに初体験済ませちゃいな、そして最高峰の快感を味わっちまえ。
 俺は上手いからさ、安心して俺に初体験を捧げちゃいな?マジ癖になるほど、すげえ好い思いさせてやるよ」

からり笑って言いながら、底抜けに明るい目が「最高峰へ行こう」と誘ってくれる。
その目が心から愉しげで素直に山頂に立ってみたいと思わされてしまう、ことんと心裡で素直に決意が坐っていく。
それにしても国村の言葉は可笑しい、笑いながら英二は頷いた。

「すごい誘惑の仕方だな、俺でも赤くなりそうだ?
 でも、そんなせっかくの誘惑だ。山千エロオヤジを信じてお任せしたくなったよ。行こう、最高峰にさ」

ここは八合五勺、標高3,200m。最高峰の剣ヶ峰がもう近い。
いつもずっと遠くから眺めていたその場所へ今から行く、なんだか不思議だと英二は微笑んだ。
横から底抜けに明るい目で国村が英二を見、そして心底から楽しげに笑った。

「よし、決まりだ。日本一の最高に気持ちイイこと教えてやるよ?
 念のためショートロープしていこう、この上から風が強くなるからね。それに宮田、お初だし?優しくリードしてやるよ」

愉快に細い目が笑いながら国村らしい言い回しで「心配するな、任せろ」と言ってくれる。
ありがたいなと思いながら英二も笑った。

「よろしく頼むよ、国村。でもなんか俺、悪代官に身を差し出す小娘みたいだな?」
「ははっ、まあね?俺はどっちか言うと悪人かな、自分勝手だしね。でも偽善者よりカッコいいだろ?」
「うん、かなりね。でも国村?俺は犯罪のアンザイレンパートナーはしないよ?」
「はい、はい。湯原くんが世界の全てだもんな?」

話しながら国村は風を受けない山小屋の影に行くとザイルを出した。
そして慣れた手つきでショートロープのセッティングをし、手際よくザイルを捌きながら英二に説明を始めた。

「クライアントとガイドの間を繋ぐザイルは長さ約7m。クライアントは今回、おまえのことな。
 クライアント側のザイルを確保した状態で、ガイド側のザイルを3巻きにする。
 その3巻きのループをクライアント側のザイルで手のひらに締めこむようにする。
 でな、クライアント側のザイルは、必ず手の内側にしなければならない。これは基本なんだ、
 ザイルを左右の手で持替える時も、必ず手の内側にクライアント側のザイルを持ってくるようにする」 

ガイド役になる国村側のセッティングを終えると、
こんどはクライアント役になる英二のハーネスにフィギュア・エイト・ノットで結んで末端処理もしていく。
その結び方を記憶しながら英二は訊いてみた。

「ザイルは滑落する可能性がある方向を考えて、左右の手で持ち変えるからっていうことだな?」

「そうだ、だからトラバースの場合は、必ずガイドは谷側の手でザイルを確保する。
 おまえからのザイルは山側から俺に伸びた状態だ。もし逆になると危険だ、俺もお前もザイルに引かれて体が反転するだろ?」

「ザイルが支点になって、ひっくり返るってことか」

「そ。で、急傾斜の持替えの場合は、ザイルを地面へ下げた同時に跨いで持変える。その時もクライアント側ザイルは必ず手の内側にするんだ」

山小屋の影でちょっと練習してみせてくれる。
それを英二は見て記憶していく、たぶん明日はこの練習もするのだろう。
そんな英二にちょっと笑うと国村は続けた。

「クライアントとガイドの距離は、手を伸ばせば届く範囲にする。このことを『ショートロープ』って言うんだ。  
 で、危険箇所では、そのザイルを張った状態にする。それは『タイトロープ』だ。
 もしクライアントがバランスを崩した時はさ?
 クライアントと、ガイドが掌に締めこんでいるザイル、ガイドが肩にループにしているザイル。
 この3つが一直線に張った状態じゃないとダメだ。その体勢でクライアントのバランスを立て直すんだ。ちょっと宮田よろけてみろよ」

「うん、一直線になってるな」

「だろ?タイトな状態じゃないと、そのまま滑落の危険性が出るからね。
 危険箇所では常にタイト。ま、それ以上にさ、とにかくコケるんじゃないよ?山岳救助隊員が事故っちゃ拙いしさ。じゃ、行くよ」

「あ、ちょっと待った。登山計画書の変更を山梨県警にメール申請しよう?
 俺たち、今日は登頂予定じゃなかったろ。山岳救助隊が登山計画を守らないのは拙い、すぐ済むからちょっと待って」

英二は携帯を出すと片手だけグローブを外し、変更申請をメールで送った。
これでもう大丈夫、安心して英二は携帯をしまいながら微笑んだ。そんな英二に国村が笑って言った。

「ほんとにさ、おまえって一々真面目だよな?まあ、そこが良いとこだろうけどね」
「だろ?国村が自由人な分だけね、俺も真面目な本音で楽にやれるよ。じゃ、行こう」

登山道へ戻ると縦に並んで歩き始める、ショートロープの場合はザイルが弛みすぎると絡まり危ない。
近づきすぎないように歩きながら前後で国村が話しかけてくれる。

「宮田、調子はどうだ?」
「すこし足が重い程度だ、大丈夫。頭もはっきりしているよ」

固くなっていく雪面を確実なアイゼンワークに登りながら英二は答えた。
その前で軽く頷きながら、よく透るテノールが笑って言った。

「うん、おまえ適性あるんだな。良かったよ、おまえが逞しい処女でさ」
「俺、人生で『処女』とかって自分が言われるとはさ、思わなかったな、」
「あ?なに言ってんのさ、山だって『処女峰』とか言うんだよ?人間だったら不思議はないね」

相変わらず飄々と笑って小気味よく国村は登っていく、なんだか国村にかかると身近な日常になってしまう。
そうして「リラックスしな」と背中で言いながら国村得意のエロトークで笑わせてくれる。
根が実直すぎて堅い自分には、こういう軽みがありがたいなと思う。
ほんと良いコンビなのかもしれない、青いウェアの背中を見ながら英二は微笑んだ。

そして富士吉田口山頂へと13時半前に到達した。



(to be continued)

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