萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第75話 回顧act.5-side story「陽はまた昇る」

2014-04-13 23:45:00 | 陽はまた昇るside story
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第75話 回顧act.5-side story「陽はまた昇る」

峰集落跡は鳩ノ巣の棚沢から入った山腹の廃村で峰平と呼ばれている。

今は杉や檜の植林から薄暗い、けれど往時は陽当りの良い平地だった。
もう訪れる人も少ない山深い場所、そこから更に奥の滝を目指して迷う人もある。

「今回の道迷いは滝探しのハイカーだからな、まるっきり初心者の装備じゃないとは思うんだが、」

困ったよう渋い声が言いながら慣れた足取に登ってゆく。
その後を付いて行きながら英二は初めて踏みこむ道に微笑んだ。

「俺もこの先は初心者です、後藤さんに付いていくしかありません、」
「お、宮田は峰平までしか登ったこと無かったか、じゃあ今ちょうど良い機会だ、」

大らかに笑ってリードしてくれる呼吸に乱れは無い。
元の通り速いピッチで慎重に歩いてゆく、その浅黒い横顔がただ嬉しい。

―よかった、息苦しさとか無いみたいだ、でも余計に気をつけないと、

元気に登ってゆく笑顔は手術前と変わらない。
だからこそ気遣わしくて声かけた。

「後藤さん、すこしペース落して下さい。傷に障ります、」
「お、早速お目付けだな?解かったよ、」

応えてくれるトーン明るく笑って歩調ゆるめてくれる。
以前ならこんな進言は考えつきもしなかった、そんな想いから鼓動すこし軋む。

―警察も山も2年目の俺が後藤さんにブレーキ掛けるなんて、

去年の秋今ごろ後藤から個人指導を受けるようになった。
初心者のクセに山岳救助隊を志願したくて卒業配置に奥多摩方面だけを希望した、それが無謀だと自分で解かっていた。
けれど諦めたくなくて、救急法や関連科目の首席を目指しながら週末はクライミングジムに通い素質と意志を示した結果に卒配された。
その幸運を逃したくない、そう願うから救助隊エースの光一を真似てトレーニング積みながら吉村医師を手伝い応急処置の知識技術も磨いた。
そして山岳技能の警視庁技能指導官トップである後藤に指導を願った秋から一年、こうしてパートナーを組める自分になれている。

唯一年、それでも去年の秋と今は違い過ぎて時に本当は途惑う。
けれど全ては傍にいたいと唯ひとり願う相手の為だけでいる、だから途惑いすら誇らしく背筋を伸ばす。
それほど想いながら裏切ってしまった夜の悔恨は「山」にこそ生まれた、そう気づかされる登山靴の歩みに泣きたい。

―俺が山岳救助隊に志願しなかったら光一を抱くことも無かったんだ、光一も周太も傷つけなかったのに、

なぜ自分は山を志してしまったのだろう?

その始まりは警察学校の山岳訓練だった、あのとき周太を救助した事が原点になっている。
あれも奥多摩の山だった、そして山岳救助隊員を知りたくなって見た資料写真で光一を見つけた。
雪の尾根立つスカイブルーあざやかな冬隊服姿は真直ぐに誇らかで、あの背中に憧れて追いかけて、抱いてしまった。

―アイガーで俺は間違えたんだ、ただ自分が抱きたくて…利用して、

あの夜を誘ってくれたのは光一だった、けれど光一の想いを自分は間違えた。
あのとき光一が抱いてほしかった相手は自分じゃない、それが時経て解かるごと自分の慾が露呈する。
あの夜すべきことはセックスじゃなかった、ただ「別人」だと納得させるだけで良かった、それを気づかぬフリして抱いてしまった。

―光一は雅樹さんの死を確かめたかっただけだ、俺が雅樹さんじゃないと納得したかっただけなんだ、それなのに俺は、

死んだ人は生き返らない、それだけだった。

必ず帰る、そう願いあった約束は真実でも死ねば生きて帰ることは出来ない。
どんなに願っても想い続けても生き返ってなどくれない、それを光一は知りたかっただけだった。
それなのに光一の雅樹への想い利用して抱いてしまった、こんな自分の慾深さは時経るごと醜いと思い知らされて疎ましい。

この後悔は生きる限り続くのだろうか?

そんな想いにも山路はどこか懐かしくて泣きたくなる。
このルートは途中までなら一度だけ来た、その先へ初めて踏み込んだ一歩前から肚響く声が呼んだ。

「宮田、おまえ御岳剣道会に入ってるんだったな?」
「あ、はい、」

呼ばれて思案そっと止めて笑顔になる。
いま考えていた事は後藤に知られたくない、そんな想いに大らかな深い声が教えてくれた。

「御岳剣道会の師範は福島先生だろう?あの先生の家はな、今の峰集落に昔はあったんだよ、」

御岳、この地名ひとつに今は痛む。
そこを故郷にする人を思い出させられ疼きだす、この罪悪感ごと見透かされたよう痛む。
ただ痛くて、この秋に見つめ続けた自責ごと現実が軋みだして鼓動ぐっと喉から迫り上げた。

「っ、うぐ…っ!」

吐く、

そんな痛覚ぐわり昇って口許を押えこむ。
心臓から蝕まれて立ち止まる、呼吸ひとつ治めこもうとしても痛む。
ただ吐き気だけで何も出ない、それでも肩から吐かれた呼吸に抱きとめられた。

「宮田、すこし座れ、」

とん、背中そっと敲かれて息ひとつ出来る。
ゆっくり肩を押されて道端しゃがみこむ、そのまま支えられ座りこんだ。

「疲れが貯まってるんだろう、まだ陽も高いし急がなくて良い、すこし休んでいこうな?」

穏やかに肚響く声が言ってくれる。
その言葉にただ不甲斐無くて英二は微笑んだ。

「すみません、足手まといですね、俺…えらそうに言っておいて申し訳ありません、こんな…ぅぐ、」

また吐き気こみあげ掌に押えこむ。
俯いて整える呼吸が荒い、なにも吐瀉物は無いのに嘔吐感だけが込みあげる。

―こんなこと今まで一度も無かったのに、

山で体調を崩すなど一度も無かった、日常生活でも感じたことが無い。
いったい自分はどうしたのだろう?ただ途惑い座りこむ背中をそっと大きな手が撫でた。

「謝らないといけないのは俺の方だよ、宮田?おまえに背負わせすぎてる所為だろうからなあ、」

背負わせすぎている、

そんな言葉に気づかされて、ことん、肚ひとつ得心が落ちる。
得心ごと吐き気すこしずつ治まりだす、その背やわらかに撫でてくれながら山ヤは笑ってくれた。

「富士でも言ったがな、おまえは未だ2年目なんだ。山も警察官も社会人としても2年目の男だ、未熟で当り前の時だよ、でもそれを忘れてしまうなあ、
おまえの才能と精神力につい期待してなあ、期待のまんま俺は責任と立場を宮田に負わせているよ、疲れが貯まることも当たり前だ、すこし休もう?」

すこし休もう?

そう提案してくれる声は深く温かい。
ただ期待して、その期待ゆえに心配もしてくれる。
そんな言葉ごと背中の掌は大きく温かで、この温もりに瞳の底から熱こぼれた。

―俺が泣いてる?

俯いた視界の真中に一滴、登山パンツの膝が濡れる。
また掌に口許は抑えこんだまま瞳から熱こぼれだす、この涙に本音を探してしまう。
本音ひとつ見つめて瞬いて呼吸する、そんな背そっと撫でながら山の先輩は笑ってくれた。

「すまんなあ、宮田。富士でも話した通りだよ?俺は岳志を宮田に見過ぎているんだ、だから厳しくしすぎてるよ、訓練も責任も厳しくしすぎてる、
警察官としてレスキューとして追い込んどるよ、山の経験だって2年目なのになあ、責任たくさん背負わせて北壁まで登らせたんだ…すまんなあ、」

すまんなあ、

そんな詫びの言葉は大らかな深い声のまま温かい。
その言葉たちに想い気づかされてしまう、本当は自分は誰に謝ってほしいのか?
いま何のために嘔吐感こみあげて涙あふれだすのか、この本音ゆっくり息吐いて英二は顔を上げた。

「違うんです後藤さん、後藤さんの所為じゃありません、これは…父との問題です、」

なぜ自分が「奥多摩の山」に吐きそうになるのか?

その原因の源は父にある、そう気づかされて涙また零れだす。
こんなふう泣いてしまうなんて思っていなかった、それでも止まない涙に微笑んだ。

「俺が山岳救助隊になったのは光一に憧れたからです、資料写真の光一の背中が、山ヤの警察官の背中がかっこよくて俺もなりたかったんです、
でも今は、山は父への反発が大きいんです…母のこと、周太のこと、父にも責任があると思えて辛くて、父と顔合わせない為に山へ逃げてます、」

あの父が馨を忘れるだろうか?

その疑問ずっと本当は抱いていた、夏に縁戚の事実を知ってからずっと考えている。
3月、遭難事故のあと静養していた湯原家を父が来訪した、あのとき父は何も言わなかった。
初めて来たとも言わず懐かしいとも言わなかった、あの「何も言わない」に自分が抱えた欠片を声にした。

「後藤さん、俺が母とうまくいっていない事はご存知ですよね…俺が周太を救けようとしていることも、馨さんのこともご存知ですよね?
たぶん父も同じです…父は本当は知ってるし解かってるんです、だから俺が全部を背負いこみたくて無理してます、周太を救えば赦されるから、」

なぜ父は検事にならず弁護士になったのだろう?
その疑問を考えたことは無かった、けれど今は推測ひとつ出来てしまう。
きっと父は「解かっている」からこそ検事にならず母とも結婚して、たぶん「罠」すら知っている。

『 La chronique de la maison 』

あの小説を父は読んだ、そして晉の死に「記録」事実なのだと気づいた?
そう考えたなら父が検事を選ばなかった理由も母と結婚した動機も見つかってしまう、それが赦せない。
赦せないからこそ自分が全て背負いこみたいと願って、その願いのために光一を抱いてしまった本音を微笑んだ。

「俺は父を赦せなくなりそうなんです、それが嫌だから周太を俺が救いたいんです、何をしても幸せにしたくて光一まで巻きこんでいます、
雅樹さんと俺が似てること利用して光一を惹きこもうとしたんです、だから奥多摩の山を歩くことが今、辛いんです…それでも周太を救けたい、」

なぜ光一を抱いてしまったのか?その本音と動機が今は解かる。
だからこそ自分の慾が赦せなくて体から現実を拒絶する、そんな嘔吐感ごと本音に笑った。

「後藤さん、俺は奥多摩が好きです、ここを故郷って呼びたくて、いつか奥多摩に家を移そうって周太とも約束しました。でも今は赦せないんです、
光一ごと雅樹さんを利用した俺が二人の故郷に赦されるはずがありません、俺自身も、だから今…すみません、自分勝手に変なこと言ってますね、」

こんな自分勝手な理由で光一ごと雅樹も傷つけた、そんな自分が二人の故郷を歩くことなど赦されない。
それでも「故郷」と呼びたくて、だからこそ赦せないまま自分も父も壊してしまいたい衝動に軋み迫り上げた。

「っ、う…ぐ、」

心臓が痛い、肺が痛い、脈打つ鼓動ごと呼吸が痛い。
吐き気こみあげるのに吐く事すら出来ない、ただ呼吸を拒絶する体が軋む。

―こんなに俺は弱いのか、背負うって決めたのにこんな、

全て自分が背負う、そう決めたのは自分。
それなのに今こんなふう体が拒絶して嘔吐感に蝕まれる、こんな弱さが自分で赦せない。
この弱さが今こうして後藤の脚すら引張っている、そんな自責ごと吐気こらえる背中そっと大きな手が撫でた。

「ふるさとに想って良いんだ、」

大らかに低い声が告げる、その言葉へ顔を上げる。
ゆるやかな木洩陽に深い瞳は笑って奥多摩の山ヤは言ってくれた。

「奥多摩はな、心のふるさとの山だとも言われてるんだ。奥多摩は誰のものでもない、ふるさとに想う者には故郷になってくれる、俺もそうだった、」

ふるさとに想う者には故郷になってくれる。
そんな言葉に呼吸すこし息吐かす、それでも赦せない本音に微笑んだ。

「俺もそう思います、でも俺と後藤さんは同じではありません…俺は光一を、奥多摩の山っ子を傷つけたんです、赦されなくて当然です、」
「だが宮田は山火事から護ったろう?雷撃された木を腕一本で鎮火したじゃないか、きっと山に感謝されてるだろうよ、」

笑って言ってくれる通り9月、訓練中に被雷した木を消火した。
それでも免罪になると想えない本音がそっと笑った。

「あれも周太に山を見せたいだけです、そんな自分勝手な理由じゃ償いになりません。だから今も救助を手伝いたいんです、」

後藤の体が心配で救助活動のパートナーを組みたくて今ここにいる。
奥多摩の山岳レスキューを援けることで少しでも償いになればいい、そう願うからこそ今日も帰ってきた。
この贖罪を呼吸ごと見つめて嘔吐感ゆっくり治まりだす、このまま治めて立ち上がりたい想いに深い瞳そっと微笑んだ。

「おまえは真面目だなあ、ほんとうに…本当に佳い男だ、」

佳い男だ、

そう告げてくれる声は大らかに温かく肚響いて背中さすってくれる掌に温かい。
この温もりこそ本当はずっと欲しかった?そんな想い座りこんだ足元に木洩陽は明るくて、どこか懐かしい。


(to be continued)

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山岳点景:花の標高

2014-04-13 23:30:00 | 写真:山岳点景
花咲く里に



山岳点景:花の標高

山里の道端、枝垂桜の大樹を観ました。
標高さほど高くない山麓です、それでも平地で散った花は酣に咲きます。



The year’s at the spring
And day’s at the morn;

春に歳月はめぐり
暁に日々はめぐる、

Robert Browning「Pippa’s Song」抜粋&自訳



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Short Scene Talk ふたり暮らしact.47 ―Aesculapius act.57

2014-04-13 22:20:12 | short scene talk
二人生活@sanctum2
Aesculapius第3章act.18-19の幕間


Short Scene Talk ふたり暮らしact.47 ―Aesculapius act.57

「よし、(資料一通り読んだけど光一が読めるとこも多いな良かった兄さんの手紙ちょっと拙かったかもしれないあとメモ絶対ダメだ照)」
「うん…(これをベースに医学的なコト盛り込んでまとめて学校に提案するってコトだよね中学生にも読みやすく書いて)」
「…だったら(光一の保健体育の教科書も参考にした方が良いなそれプラス知ってほしいリスクとか入れてみて)」
「…(とりあえずレジュメは作っておこう要点だけでも今ちょっとまとめておくと良いよね光一ちょうど階下にいるし)」

「雅樹さん、風呂の支度出来たよ?(笑顔×微照)(今日は一緒に入ってもらいたいね最後かもしれないしダメ泣きそう)」
「あ、照(ああ意識しそう鎮まれ僕)うん、一緒に入ろう?(笑顔)(兄さんの手紙で余計に意識してるな僕ほんとすけべだ照困)」
「あのね、雅樹さん先に入っていて?(笑顔×照)(先に入ってもらってトイレで自分でしてこメンドウかけたら悪いもん手紙でアレだったし)」
「え、どうしたの光一?(先に入ってなんて初めて言われた光一どうしたのかな)」
「明日の飯の支度ちっと忘れてるのあったね、してから入るね?(笑顔×照)(ホントは飯じゃ無くて俺の支度だね照ごめんね雅樹さん嘘吐いて)」
「じゃあ僕も手伝うよ、一緒に台所しよう?(笑顔)(なんでも一緒だと喜んでくれるし手伝いたいな)」
「俺ひとりで大丈夫だね、雅樹さんオツカレだし風呂で先にノンビリしていて?(笑顔)(手伝ってもらったら悪いもん今夜は)」
「光一こそ疲れただろ?一緒にするよ(笑顔)(遠慮してくれるなんて可愛い光一ほんと良い子だな照萌)」
「ううんっ、先ノンビリして?雅樹さんにノンビリして欲しくて支度したんだし、ね?(嬉しい雅樹さん俺のコト心配してくれてるでも)」
「ありがとう光一、でも光一こそのんびりして欲しいな?いつも主夫がんばってくれてるし(笑顔)(主夫=奥さんホント可愛い萌照)」
「ありがとね雅樹さん、でも雅樹さんこそ今朝から大変だったね?だから疲れ取ってほしいね、病気とかなってほしくないから…ね(ほんと元気でいてね)」
「光一、(ああ可愛いこんなに心配してくれるなんて萌照だからこそ大事にしたいんだ僕は我慢も)じゃあ先に入ってるね、ありがとう、」
「ん、先ノンビリしてね?(笑顔)(よかった先に入ってくれたね俺ちゃんと自分で出来るかね頑張らないと)」
「…ん、(ひとりで支度するってなんか寂しいね今夜が最後かもって思うから寂しいのかね)」
「ね…オヤジ、おふくろ、俺…ごめんなさい(俺が雅樹さんといたいって願い過ぎたからこんなバチが当たったね)」
「…ごめんねオヤジおふくろ、でも俺…まさきさんだいすき、でもっ…俺のせいだね、おれのせいでまさきさんっ…ぅ、」
「お願い、雅樹さんのことずっと護ってよね?それで…嫌われたくない、ね、わがままでも…ごめんね、でも護ってよ…?」



Aesculapius第3章act.18-19の幕間、光一と雅樹@書斎
切ない光一と雅樹の幸せ×攻防その3です、

第75話「回顧5」加筆ほぼ終わりました、また読み直し校正します。
それ終わったら短編かAesculapiusかコラムの予定です、

取り急ぎ、



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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚61

2014-04-13 01:02:00 | 雑談寓話
こんばんわ、明神山@山梨県に登って来たんですけど少し雪が残っていました。
正面に見える富士山は積雪まだ多くてコンナ↓感じに雪面の鏡面化が遠目にも見えました。
あんなとこ踏込んだらアイゼンの刃も刺さらず転倒→滑落止まらない、ほんと春の富士は怖いなと。

で、この雑談もバナー押して下さる方いらっしゃるので続きまた載せます、楽しんでもらえたら嬉しいです。



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚61

12月24日クリスマスイヴ、同僚御曹司クンと夕飯@中華街だった。
飲茶+食べ歩きってリクエストだったからその通り案内して、関帝廟も参詣したりして、
それから山下公園に歩いて、海からの風は潮が昼間より強いな思っていたら御曹司クンが言ってきた、

「山下公園、久しぶりに来たなー笑」
「デートの相手は元カノ?元彼?笑」

山下公園に来るなんてデートだろな?
そう思ったまんまツッコんで、そしたら御曹司クン照れ拗ねた、笑

「っ、どっちもですー今は良い思い出だもんね、照拗」
「なら良かったね、笑」

拗ねたアタリほったらかして笑って答えてさ、
で、御曹司クンは訊いてきた、

「なーおまえもデートで来たりすんの?」
「二人でも一人でも来るよ、笑」

正直に答えながらも潮風けっこう冷たかった。
それでも氷川丸のライトアップはそれなり綺麗で、マリンタワーその他イルミネーションは静かに明るくて、
ベンチも寄りそってる二人組や子供or犬を抱いた夫婦も多くてさ、なんだか温かい雰囲気がイイなって思った、

クリスマスの本でそういうのあったな『クリスマスキャロル』そんなテーマだったな?

なんて考えながら自販機でアルミボトルのコーヒー見つけて、
これなら蓋できるからカイロ代わりにしよう思って買って、そしたら御曹司クンが言ってきた、

「あのさ、もう少し歩いていい?おまえの好きな方向に歩いてくれて良いから、」
「いいよ?笑」

なにげなく答えてちょっと考えて、
公園から海沿いに伸びる陸橋を歩きだしたら御曹司クン喜んだ、

「おー、みなとみらいの夜景とか綺麗だな、あれってベイブリッジだろ?この道なんかいいなー喜」

ホント子供みたいだな?

はしゃいでる子供、そんな貌は街灯の道で嬉しそうだった。
すこし前まで泣きじゃくってた貌が笑ってる、それが素直に嬉しいなって思ってさ、
さっき泣かせたの自分の所為でもあるし笑わせようかな?そんな考えでガイドちょっと始めてみた、

「あそこ税関のタワーなんだけどクイーンってアダ名があるよ、なんでだと思う?笑」
「クイーン、女王ってことだろ、形が女っぽいから?」
「半回答ってトコだね、笑」
「う、ヒントくんない?」
「名付けたのは外国からの船乗りだよ、笑」
「船乗りでクイーンってなんだよー解らねー笑」
「外国船は航海が長いよね、時間あり過ぎるくらいにさ、笑」
「時間あり過ぎってのがヒントか、うーあ、トランプのクイーン??」
「アタリ、笑 で、他にジャックとキングの塔もあるよ、」
「へえ、面白いなーどこの塔なわけ?」
「キングは県庁、ジャックは元商工会議所かナンカだったけど今は博物館かナンカだよ、笑」
「なんかジャックの扱いおまえ雑じゃね?笑」
「なんか覚えにくいんだよ、笑」
「へーそんなことオマエもあるんだ、なんかいいなー笑」
「で、みなとみらいのレンガ倉庫は昔はヤバいエリアだったね、笑」
「ヤバいエリア?ってなに??」

そんなカンジにガイド兼クイズしながら歩いてさ、
象の鼻の転車台やら遠目に教えながら大桟橋に着いたら御曹司クンが訊いてきた、

「おーあそこナンカすげえな?丘みたいになってるけど人工物?」
「だよ、行ってみよっか、笑」

まだ行ったこと無いんだろな?
そう思って案内したら御曹司クン大喜びになった、笑

「おーっ、ここいいなー、ウッドデッキと芝生ってカッコいいじゃん、喜」

なんだかズイブン気に入ったらしい?
そんな笑顔にホントのこと教えてやった、

「ここ、サスペンス劇場みたいので犯人追い詰められシーンに遣われてたよ?笑」
「そういうの言うなよーでもナンカ解かるけど、」

嫌だけど納得、そういう複雑顔が面白かった、笑
ほんと今夜だけで色んな貌してくれる、その豊かな表情に思ったまま言ってみた、

「職場だと笑顔仮面ってカンジだけどオマエ、ちゃんと笑えるじゃん、笑」
「あー…うん?」

生返事みたいな頷き方して御曹司クンちょっと考えこんだ。
なんだろう自分で解からない?ソンナ貌がまた面白いな思いながら歩いてさ、
いつものように突端の柵に腕組みして凭れて、そしたら御曹司クンも隣に来てくれたから教えてみた、

「ココって海に迫り出してるからさ、夜は水平線が融けて宇宙っぽいから面白いんだよね、笑」
「あー確かに宇宙っぽくなるな?おまえ面白いこと言うなー笑」

笑って御曹司クンも頷いて、ちょっと考える顔になってさ、
遠慮しながらも聴いてきた、

「あのさー…これ幼馴染さんとも話してた?夜の海が宇宙だとかって、」
「宇宙や星が好きなひとだよ?笑」

ありのまま答えて笑って、そしたら御曹司クン柵に腕組んで凭れこんだ、
そのコートの肩くっつけられてさ、だから笑って言ってやった、

「おまえナニ勝手に密着してくんの?おさわり禁止だって言ったろ、笑」

ほんとこいつアレだよね?笑
そんな感想に腕組んだまま離れて、だけど御曹司クンは離れなかった。

「今そういう下心と違うから、」

ほんとに違うよ?
そう目でも言ってくれながらコートの肩くっつけてさ、
組んだ腕に顎のっけて夜の海を見ながら御曹司クンは言ってくれた、

「くっついてる方が寒くないだろ?俺じゃ迷惑かもしれないけど、たまにはオマエのこと俺にも慰めさせて、」

慰めさせて、

そんな台詞を自分が言われることが不思議だった、
なんでコンナこと御曹司クンは言ってくれるんだろう、何をしたいんだろ?
そんなこと考えながら腕組んで眺める海も空も夜に黒くて、波ゆれる光がきれいだった。


とりあえずココで一旦切りますけどまだ続きます、
おもしろかったらコメントorバナー押すなど頂けたら嬉しいです、気が向いたら続篇載せます、笑
Aesculapius「Mouseion21」校了、第75話「回顧5」校正終ったら短篇かAesculapiusの続き予定です。
で、小説ほか面白かったらバナーorコメントで急かして下さい、笑

深夜に取り急ぎ、



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