萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚74

2014-04-26 00:45:22 | 雑談寓話
GREEN SHOWER ってヤツ飲んだことありますか?
甘くない炭酸でホップの香っていうウリなんですけど、マスカットの匂いっぽくてココンとこ好きです、笑
で、この雑談もバナー押して下さる方いらっしゃるならってカンジで続き載せてます、楽しんでもらえてたら嬉しいんですけど



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚74

12月30日夜、納会@職場近くの和ダイニング、

「ちょっとーっ、あなたが言うから俺が女装って話になっちゃったじゃないですかあ、責任とって下さいよー泣」

っていう後輩坊ちゃんクンの話題で宴タケナワって感じだったんだけど、
向かいに座っていた同僚御曹司クンは立ち上がって個室から出て行って、その貌が泣×怒な貌だった。
で、気になって自分も席立って廊下に出たら、奥の隅っこに御曹司クンいたからナンカ可笑しくて笑った、

「隅っこ好きなんて猫みたいだね、笑」

猫は隅っこ好きが多い、なんか狭いトコが落着く傾向がある。
っていうフツーの意味で言ったんだけど御曹司クン照れ拗ねた、

「っ、ネコとかって言うなバカっ、照×拗」
「犬の方が良かったんだ、確かにオマエって犬っぽいよね、笑」

なんて返してすぐ「お、」って気がついて、で、気づいたまんまSってやった、笑

「でもオマエってポジションはネコなんだろ?笑」

今度は隠語の意味で笑ってやってさ、
そしたら御曹司クン真赤になって拗ねまくった、笑

「ばっ、ばかナニおまえコンナとこで言ってんだよっ、皆いるのにっ、」
「なに挙動ってんの?フツーに冗談で流せばイイとこだろが、ねえ?笑」
「またそーゆー余裕貌しやがってさ、ホントむかつくなんだよもーー拗」
「ホント過敏だねえ、カンジヤスイ性質?笑」
「っ、…ほっんっとーーSだっ拗笑」

なんて会話してるうち御曹司クンは泣×怒から拗×笑になって、
なんか元気になって来たなー思ったから訊いてみた、

「なんで席立ったワケ?泣きそうな貌してさ、」

なんかあったのかな?
そんな疑問のまま訊いたら御曹司クン、ちょっと恥ずかしげに拗ねた、

「やー…坊ちゃんクンと仲良さげだったから妬けたダケだからうっとうしくてゴメン拗」

なんかホントうっとうしいかも?笑
って思ったからそのまんま言ってみた、笑

「ホント鬱陶しいね?かまってちゃんな彼女っぽい、笑」

最優先してくれないと拗ねちゃうわーみたいな子っているな?
そんな感想に笑ったら御曹司クン拗ね笑った、

「だからゴメンってば、でも構ってほしいの本音だし、だから冬休みあんまり嬉しくねえし、拗笑」

そんなことまで言っちゃうんだ?
これはサスガにどうだろ思って言ってやった、

「自分は冬休み嬉しいけど?友達と呑んだり親戚と呑んだり忙しいけどさ、笑」

冬休みは日数少ない=忙しいけどね?
そんな言外と笑ったら御曹司クン言ってきた、

「なんだよ呑んでバッカじゃん、笑」
「正月だからね、おまえも呑むだろ?笑」
「ビール多いだろなっては思う、こっちも友達とか会うし、」
「酔った勢いで襲わないようにね、犯罪になっちゃうからさ、笑」
「っ、そういうこと冗談でも言うなバカっ拗」
「前科持ちへの被疑は仕方ないよね?笑」

なんていう会話を交わしてまた呑み会席に戻った、


とりあえずココで一旦切りますけどまだ続きます、気が向いたら続篇また。
Aesculapius「Moueion28」加筆校正しているところです、そのあと第75話の続き予定しています。
この雑談or小説ほかナンカ面白かったらバナーorコメントなど反応よろしくお願いしたいです、ソレが理由でWEB公開してるので、笑

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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚73

2014-04-25 01:20:18 | 雑談寓話
こんばんわ、
今日も森に寄ったら初夏の花また新たな種類が咲き始めて、木の葉も大きくなっていました。
で、この雑談もバナー押して下さる方いらっしゃるならってカンジで続き載せてます、楽しんでもらえてたら嬉しいんですけど、



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚73

12月30日の仕事納めは業後、納会だった。

年末アレコレ忙しかったけど御曹司クンとは26日以降も昼ゴハン一度くらいは一緒したと思う、
あとは他愛ないメールやりとしていた歳末繁忙期、迎えた30日15時@職場で缶ビール配られた。
これは納会のいわゆる0.5次会、自席でビール飲みながら年納めの残務処理のんびり〆てたら先輩が笑った。

「御曹司クン、ホントこいつのこと好きだよなー笑」

こいつ=自分のコト言って御曹司クンに笑いかけている。
そういう噂話って本人いるところで聞えるようするモンなワケ?笑
そんなこと思いながらビール缶とパソコンやってたら御曹司クンが笑った。

「はい、好きです、」
「おー清々しい返事だな、笑」

なんて雑談を聞き流しながら仕事終えて、
このあと課内で納会だったから他の皆も仕事切り上げた。
どっかノンビリした年末空気を店に移動して、そんな歩く道で御曹司クンが話しかけてきた。

「正月ってなにしてんの?」

冬休みの話をしよう?
そう言ってくれる笑顔にありのまま答えた。

「ばあちゃんに会いに行くよ、甥っ子とも遊ぶ約束だしさ、笑」
「へえ、ちゃんと遊んであげるんだなー何すんの?」

たぶん言ったら笑うんだろうな?
そう予想しながら正直に言ってみた、

「たぶん仮面ライダーごっこ?笑」
「えっ、??」

嘘ホントに?
そんな目が大きくなってコッチ見てくれる、
で、そんな貌すぐ思い切り大笑いし始めた、

「あははっ、おまえがそういうのするって可笑しーおまえ悪役やって負けてあげたりするワケ?笑」

やっぱキャラじゃないんだ?笑
その自覚また見ながら正直にまた言ってみた、

「悪役だけど勝つよ?笑」
「え、正義の味方をやっつけちゃうわけ?」
「正義はドッチかなんて解らないだろ?価値観の相違ってヤツ、笑」
「うわーシビアな教育方針だなーおまえらしー笑」

そんな会話と並んで歩きながら笑って、
そしたら花サンが隣に来てくれた、

「おつかれさまでーす、なんかすごく楽しそう、笑」
「田中さんオツカレさま、だってこいつが仮面ライダーごっこするとか可笑しくないですか?笑」

訊かれて御曹司クンまた可笑しそうに笑って、
その笑顔&台詞に花サンも愉しそうに笑ってくれた、

「あー確かにトモさんがゴッコ遊びとかって不思議です、笑」
「ですよねっ?笑、でも涼しい貌で悪役だけど勝つよ?とか言われてー笑」
「あーそれはトモさんらしい、勝利する悪役とかってアリです、イイです、笑」

なんてカンジに二人は盛り上がり笑い、
そんな笑顔二人と一緒に納会の席へ着くと気楽な上司挨拶から呑みは始まった。

で、ビール他で良い気分になってきたころ上司イキナリ御曹司クンに絡んだ、笑

「御曹司クン可愛い顔してるよなあ、女装とか似合うだろ?」

何の脈絡でその話題なんだ?

そう感想ごと可笑しくてグラス噴きそうだった、笑
でも向かいで御曹司クン少しも笑わず首振りまくった、

「イヤ絶対に似合いませんっ、」

そこまで否定しなくても良いのにね?
なんて思うほど御曹司クンは必死に首振って、けれど上司は気さくに笑った、

「夏の納涼会んとき課ごとで余興あるだろ?あれで女装やれよ、きっとウケるぞー優勝景品もらえるぞー笑」

ああ景品目当てで→女装ウケるぞ文脈なんだ?笑
その納得とジントニック呑んでたら御曹司クン必死で首振った、

「イヤっ、絶対にやりません、俺ほんとマジやりませんからっ、」
「今度の景品って宴会コースのチケットらしいぞ?獲れたら課で飲み行ける、だからやれ?笑」
「いやですやりませんっ、女装とかぜったい駄目です俺そんなことなったらサボりますっ病欠しますっ、」
「ソンナ嫌がらんでもイイだろー笑」

なんて応酬に嫌ですVSイイだろーは繰り返されて、
そんな遣り取りに皆は笑っていて、だけど後輩坊ちゃんクンがこそっと言ってきた、

「やっぱ御曹司サン、アレだから女装とかバレそうでNGなんすかね?」

こいつ割と性格悪いよね?
そんな感想に首傾げながらも仕方ないかなって思った、
坊ちゃんクンは御曹司クンのセクハラ既遂+パワハラ未遂の被害者でもある、けれど容赦なくSってやった、

「そういうこと聴くオマエがNGだろ?で、おまえって女装似合うんじゃない?笑」
「へ?」

言われて一瞬よく解らんって貌になって、
その隙に上司へ提案してみた、笑

「課長、こいつ女装似合うと思いますよ、納会にどうです?笑」

きっとOK出るだろな?
そんな予想どおり上司は笑った、

「おー確かにエキゾチック系の美人になりそうだな、推薦もあったしオマエで決定、笑」

ほら決定、笑

この展開にようやく坊ちゃんクンは気が付いて、
で、首振りだした、笑

「いやイヤいやイヤ俺はダメですって、野球で肩とか結構あるし駄目ですって、焦笑」
「いやいや、おまえ睫とか長いしイケるって。田中、女性の目から見てどうだ、化粧映えしそうか?笑」

なんて田中さん=花サンに訊いちゃって、
この回答はもう決まってるな思った通りに彼女は笑った、

「はい、似合うと思いますよ。チャイナドレスとか如何でしょう?笑顔」
「ほら、田中も似合うって言っているぞ?チャイナ美人で決定な、笑」
「いやイヤ似合いませんって、田中さん冗談よしてください、凹笑」
「ホント似合いますよーきっと、メイクしてあげますね、笑」
「うわマジですかちょっとー凹笑」

なんてカンジに女装ネタは御曹司クンから坊ちゃんクンに移動して、
まあ坊ちゃんクンなら大丈夫だろって笑ってたら泣きつかれた、笑

「ちょっとーっ、あなたが言うから俺が女装って話になっちゃったじゃないですかあ、責任とって下さいよー泣」

責任って何だよ?笑
とか思いながら笑顔でSってやった、

「皆に女装認定してもらえるなんて美形だって認定みたいなモンだろ、よかったねオメデトサン?笑」

まあソウいうことだろ?
って適当に笑ったら坊ちゃんクンは半ベソ系の顔になった、笑

「うわー適当言ってますよねヒドイ他人事とか思ってますよね?泣」
「うん?だって他人事だろ、笑」
「酷い、ほんとあなたってヒドイ人です、凹」
「だからナニ?笑」

なんてカンジの会話して笑って、
そしたら前の席から御曹司クン立ち上がって個室から出て行ったんだけど、
その貌が泣きそうな怒ったような貌だったから気になってさ、で、自分も席立って廊下に出た隅っこ御曹司クンがいた、



とりあえずココで一旦切りますけどまだ続きます、気が向いたら続篇また。
Aesculapius「Moueion27」読み直し校了します、第75話「懐古2」加筆校正まだする予定です。
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第75話 懐古act.2―another,side story「陽はまた昇る」

2014-04-24 23:00:00 | 陽はまた昇るanother,side story
Do take a sober colouring from an eye 謹厳の刻



第75話 懐古act.2―another,side story「陽はまた昇る」

これは、銃声だ?

硝煙の匂いと、そしてこれは血の匂い。

「っ、」

音と匂いに見つめる向う、スローモーションに赤が飛び散る。
洗面室の真中で制服姿が崩れゆく、その手は黒い金属物を握りしめたまま揺らぐ。
そして白い衿元グレーのネクタイから赤が、赤い飛沫が弧を描いて青年ひとり倒れた。

これは、拳銃自殺だ?

「っ、待って!」

待って、死なないで、

「動かないで、目を閉じないで下さい!」

呼びかけて駈けつけて膝まづく、その膝元が赤い模様あざやかに瞳を灼く。
倒れこんだ横顔は見覚えがある、そして制服の白い衿もと赤黒い点を鮮血あふれた。

「っ、」

金属の匂いが頬を撃つ、その傷に頭脳すぐ動き出す。
どす黒い口径の傷は火傷に黒い、頸部に銃口を充てて撃ったのだろう。

「っぁ…貫通射創、接射創 contact wounds、射入口は右側頸部のはず拳銃は右手だ…あ、挫滅輪で確認、」

知識を声にして呼吸を整えさせ意識ごと立てなおす。
その吐息へ金属臭が吸われた切迫に平手一発、自分の頬を叩いた。

「しっかりしろ僕っ、」

頬の傷みごと動揺に怒鳴りつけて、そして鎮まった視点を受傷に定めさす。
右の頸部、首に穿たれる傷口は4mmほど、星型に見えて周囲に黒焦げた皮膚が血塗れを透かす。
これは接射創、銃口と皮膚が接した状態で撃たれると一酸化炭素で筋は鮮紅色になり接面の皮膚には表皮剥奪した挫滅輪が生ずる。
その欠損縁は焦げて黒く炭化した創縁がつく、これは燃焼ガスによる火傷と燃焼煤などの付着、そんな知識通りに見つめる陥没は蒼黒く血を零す。

―やっぱり右から撃ったんだ、拳銃も右手にもってる、だから、

だから、これは拳銃自傷だ。

接射創が右側にある、それは右手の拳銃で撃ちぬいた形跡。
そんな状況に泣きたくなる、こんなふう自身を傷つけて死を願うことは哀しくて泣きたい。
泣きたい、だからこそ今は希望ひとつ見つめて周太は制服のポケットから小さなケース取りだした。

「ゆっくり呼吸してくださいっ、動かないで!」

呼びかけながらケースからタンポンひとつ出す。
パッケージ破りプラスチックかちり鳴らしセットして傷痕の位置を目視する。
創傷部位は首、だから埋め込む深度を間違えば気管や咽頭を傷つけてしまう、けれど止血しなければ死ぬ。

―お願い、助けさせてお父さん、

想い見つめて呼吸ひとつ整えてタンポンの先端を射入口あてがう。
ざっと見た体格はSAT隊員らしく引き締まる、きっと脂肪の厚みは薄い。
そんな目視に深度を決めた分だけ埋め込むとタオルハンカチ出して圧迫止血した。

―首だから止血帯は使えない、気道の確保は横向きだから大丈夫、血が気管に詰らないように、

倒れた横顔は瞳ゆれている、まだ意識はある、まだ間に合う。
そんな判断と処置する背後、がたり扉の開く音に風吹きこんで呼ばれた。

「湯原っ、どうした!」

名前を呼ばれて靴音すぐ背後に鳴る。
その聴き慣れた声に振り向かず周太は叫んだ。

「救急車を呼んでください!銃創の処置経験がある医者に搬送お願いして下さいっ、速く!」

銃創 GunShot Wound 医学用語でいう「射創」の処置経験がある日本の医師は限られている。
この国は銃刀法の規制から銃火器自体の所持件数が多くない、その分だけ射創の処置件数も少ない。
そして射創は処置の仕方に特殊性がある、それを的確に対応出来なければ傷は治す事など出来ない。

それ以上に今この状態であとどれくらい命の猶予はあるのだろう?

「目を瞑らないで!諦めないで、生きて下さいっ、生きて!」

ほら自分の声が彼を呼ぶ、今この目の前の命を繋ぎたい掌が動く。
左下に斃れた横顔は蒼白に透けてゆく、首あふれる血がタオルハンカチ真赤にする。
もし弾丸が貫通しているなら逆側も傷があるはず、その確認そっと左側頸部ふれた指先どくり熱い。

―やっぱり貫通してる、こっちのが傷大きいはず、

貫通射創の場合、弾丸が撃ちこまれる射入口よりも射出口の方が大きい。
これも止血する必要がある、その判断に周太は自分の衿元ネクタイ引き抜いた。

―これなら包帯の代わりになる、失血させないようにしないと、

銃による死亡原因の60%が失血性ショック、この現実がいま自分の膝元で溢れだす。
斃れた蒼白の青年から赤いろ滲みだす、制服の白衿は深紅になった、腕のエンブレムも胸の階級章も赤に濡れる。
その首に包帯したネクタイもダークグレーが赤黒い、もう自分の指先も真っ赤で袖も赤くて、それでも止血の手は諦めない。

「死なないで!こんなところで死んじゃ駄目だっ、生きるんだ!お願い生きてっ、」

お願い、こんなところで死なないで?

こんなふうに拳銃で死なないで、弾丸一発で死んだりしないで。
こんな終わり方なんてしないで、だって誰かがあなたを待っているでしょう?

「生きて!あなたのこと待ってる人いるでしょう?あなたのこと待ってる誰か絶対いるっ、お願い生きて!」

絶対に待っている誰かがいる、たとえ今は未だ会えていなくても。
だって自分も父を待っていた、それと同じくらいあのラーメン屋の主人を待っていた。
あのひとは父を殺した犯人、けれど、あのひとが生きた温もりくれたから自分は救われた。

“俺が殺しちまったあの人が美味いと言ってくれるような、あったけえ味が出せたらいい”

あのひとは父を殺した犯人、けれど彼まで死んでいたら自分は復讐の束縛に囚われて、そして母まで不幸にしたろう。

「生きてっ、どんな理由でも死なないで!絶対にあなたを誰か待ってる生きてっ、死んじゃダメ生きて!」

どんな理由でも生きてほしい、だって殺人犯すら誰かを救う事もある。

“あの人が美味いと言ってくれるような、あったけえ味が出せたらいい。それで誰か温めてやれたら少し罪が償えるかもしれない、そう頑張らせて頂いてます”

あのひとがそう言った時、自分は救われた。
父の体は死んだ、けれど父の想いは生きて誰かを温める、そう想えるまま救われた。

“温かいうちにね、召し上がって下さい。肚が温まるとねえ、元気が出て笑顔になれますよ”

あのひとは父を殺した、けれど自分を救ってくれた。
あれから店を訪れるたび体調と栄養を気にしてくれる、温かい料理と笑顔で迎えてくれる。
そんな日々あの店で樹木医と再会して夢の道は繋がれた、そして大学に通うことを祝って励ましてくれた。

“兄さんは東大の学生さんになったんだね、その方が似合いますよ?さっき店に入ってくる時も思いやしたがね”

そう笑ってくれた貌は父と全く似ていない、それなのに父が褒めてくれるように想えた。
あのひとは父が最期に救った人、だから父の言葉も伝えてくれる、そんな温もり素直に嬉しかった。
あの笑顔に自分はどれだけ救われているだろう、そんな廻りすら生きているなら訪れる、だからどうか生きてほしい。

「死なないで生きてっ、生きるんだ!こんなふうに死んだって救われない、生きて!」

どうか死なないで、こんなふうに死なないで、だって自分はあなたを生かすため今ここに居る。

「死なないでっ、お願い死なないでお父さんっ!」

ほら、もう口が父を呼んでしまう。
いま24歳の自分、けれど9歳の自分が叫びだす。

「お父さん死なないでっ!お願い死なないでお父さん、お父さんっ…死なないで生きて!」

いま自分の掌が血に染まる、この血は父とは別人だ。
けれど父と同じに拳銃で傷ついてしまった、その傷から熱こぼれて指からむ、金属と似た匂いが頬なでる。
この匂いは血の匂い、これは死を呼ぶ匂いかもしれない、それでもまだ流れる血は温かくて唇は息づいている。

「死なないで生きて!待ってるから生きて、お願い死なないでお父さんっ…っ僕が待ってるからいかないで!」

きっと誰かが彼を待っている、いつか彼を父と呼びたい誰かがいる。
今こうして自分の唇は父を呼んでしまう、この想い誰かが彼にいつか真直ぐ向ける未来がある。
そう信じて今この命ひとつ援けたくて、それが父と自分を繋いでくれるよう想えて叫ぶまま背後の扉がたり開いた。

「湯原っ、」

聴き慣れた声また自分を呼ぶ、背中から抱きとめられる。
その視界に担架が白い、床から血塗れの制服姿は持ち上げられて、がたん、金属の塊が床に落ちた。

あれは拳銃だ?

そう見つめるまま担架は視界から行ってしまう。
付き添いたい、その願い立ち上がろうとして膝すべって床についた手が何かに濡れる。
なぜか立てない、それでも言わなくてはいけない事がある、その意志が瞳ひとつ瞬いて真直ぐ救急隊員に告げた。

「その方は貫通射創です、」

呼びかけた声に振り向いてくれる。
その一人ベテランらしき顔に向かって周太は続けた。

「弾丸は抜けています、射入口は首の右側、タンポンで塞ぎました、銃創の経験がある医者がいなければ青梅署警察医の吉村先生に問い合わせてください、」

告げる声は自分の声、けれどどこか遠い。
それでも告げられた伝達事項に救急隊員は頷いてくれた。

「解りました、ご協力ありがとうございます、」
「よろしくお願いします、」

見あげて願った先、白い担架は運ばれてゆく。
その縁から揺れる右手かすかに動いて拳を握った、その生命反応に周太は微笑んだ。

「…きっとたすかって、」

きっと救かってほしい、生きてほしい。
唯それだけを願い見つめたまま扉かたり閉まって、ほっと息吐いて振り返る。
その真中に見慣れた精悍な瞳が自分を映す、けれど向こうに落ちた黒い金属の塊に停止した。

あれは拳銃だ、いま自分が見た光景は、なんだったろう?

「湯原っ、しっかりしろ湯原!」

呼ばれて頬軽く叩かれて、呼吸ひとつ喉ふるわす。
その瞬間かすかな擦過音ゆれて胸引き攣れて、息ひき裂かれた。

発作が来る、



(to be continued)

【引用詩文:William Wordsworth「Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood」】

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山岳点景:瞬刻の花

2014-04-24 22:35:00 | 写真:山岳点景
Calanthe discolor



山岳点景:瞬刻の花

海老根蘭、初夏に咲く花です。
森の妖精と呼ばれる蘭の一種で林床に可憐な姿は惹かれます。




この花は環境省のレッドリストで準絶滅危惧NTに指定されています。
総個体数は約2万、平均減少率は約6割、いま瀬戸際の現実に咲いている花です。
園芸目的の採取や植生場所になる森林の伐採など人工的要因が減少の原因にあげられます。

こんなふうに海老根蘭に限らず山野草は環境変化で枯死します、だから盗掘しても無駄です、
また写真を撮る方も注意して下さい、足もと落葉の下に出ている芽を気づかず踏みつけて駄目にするケースが増えています。




Are clad in one green hue, and lose themselves
‘Mid groves and copses.

緑ひとつの色調を纏い、そしてひと時に消えて移ろいゆく
木々と森の中深くから。

Nor perchance,
If I were not thus taught, should I the more
Suffer my genial spirits to decay:

おそらくは、
もし、あなたから教えられなかったとしても、
僕の生まれたままに快活な魂を枯れさせるなんてしない、

William Wordsworth「Lines Compose a Few Miles above Tintern Abbey」引用抜粋&自訳



Aesculapius「Mouseion27」加筆校正もうちょっとします。
第75話「懐古2」加筆倍くらいの予定です。

取り急ぎ、




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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚72

2014-04-24 02:30:00 | 雑談寓話
こんばんわ、
陽も延びて明るかいから森に寄ったんですけど、初夏の花が咲き始めていました。
で、この雑談もバナー押して下さる方いらっしゃるならってカンジで続き載せてます、楽しんでもらえてたら嬉しいんですけど、



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚72

12月26日クリスマス明けた月曜夜、
1本目の電話は暫定恋人からだった、その会話と要求に本音のトコ暫定は「元」に変わる寸前で。
そんな本音ごと電話を強制終了させて後、2本目の電話は同僚御曹司クンからの着歴に架け直した、

「架けてくれたんだ、よかったー…もう無視されたのかと思った、笑」

ソンナ感じに御曹司クンは笑ってくれた、
その遠慮がちトーンがちょっと健気に想えたんだよね、直前の電話の反動だろうけど、笑
そんな比較の補正効果も面白いな思いながらパソコンの画面をチェックしながら軽くSってみた、

「他の電話が入ってたんだよ、で、眠いから用件早くして?笑」
「うわーそんな迷惑そうに言うなよーへこむじゃん俺、」

ホント少し凹んだ?
そう思ったけど容赦なく言ってみた、

「月曜から深夜電話は迷惑だろ?ほら、なんの用なワケ?笑」
「うん…変なこと訊いてイイ?」

ちょっと困っている、そんな空気また遠慮がちに訊いてくれる。
それが帰宅電車で見たメールのまんまだからソノまま訊いてみた、

「メールの少し話したいってヤツだろ?サッサと言え、笑」
「うん、」

いま頷いたんだろな?
それが見えるような空気から御曹司クンはストレートに訊いた。

「あのさ、イヴの夜に俺のこと抱きしめてくれたのって、なんで?」

あーその件か?

それを聴きたがるなんて不思議だな、でも理解も出来る。
そんなこと考えながら正直ありのまま+Sって答えた、笑

「泣いてるコドモは抱きしめてアヤスもんだろ?笑」

あのとき子供みたいに泣きじゃくってたからね?笑
っていう感想と笑ったら電話の向こう溜息ほっと吐かれて、で、拗ねた、

「…そういうことなんだー…って俺なんだよ子ども扱いかよ、拗」

安心、そして気が抜けた安堵に拗ねる、
そういう思考パターンまた子供っぽくて笑ってやった、

「だってコドモだろ?あんな道端で大泣きってさ、笑」
「っ、だってアレは仕方ないだろー泣かした本人のクセして茶化すなよっ、拗」
「ふうん?大泣きしちゃったことナニが仕方なかったってワケ?子犬かナンカみたいに泣いてさ、笑」

ほんと大泣きしてたな、捨て犬みたいって思ったな?
そんな感想と笑ったら御曹司クン、ちょっと間が空いて言った。

「…大切だから嘘吐けないって言ってくれたじゃん、恋愛する可能性ゼロでも人間として好き、ってさー…大切とか好きって嬉しいから、」

確かに自分は言った、その通りに想ったから。
そんな自己確認しながら今さっき一本目の電話につい比較した。

暫定恋人のこと「大切」って思ったことあるだろうか?

さっき電話ごしキスして要求がシツコクて苛ついた、ああいう苛つきは好きになれない。
自分のどこが好きか訊いてみた回答も面白くないって思ってた、あの意地悪い感覚は幸せとは遠い。
そう考えていくと「人間として好き」を見つけられなくて、そんな現状確認の向こうで御曹司クンが言った。

「俺さ、墓参りしてるオマエの顔ほんと綺麗だって見てた、大切に想ってる気持ちが見えて綺麗で、さー…こういう貌するヤツだから惚れたんだなって、
亡くなって、話すことも出来なくっても大事に想い続けてるのってホンモノだなって…そういう強さってカッコよくて綺麗だよ、そういうのが貌に出てる、」

顔のこと褒めてくれている、でもこれは外見的なコトじゃない。
きっと自分のいちばん大切なことで核心部だろう、それを見てくれている?

こいつ結構やるじゃん?

「ふうん、おまえ結構ちゃんと見てるんだね?笑」

意外と見てくれていた、それを声にして伝えてくれる。
そういうの単純に嬉しいまま笑ったら電話の向こう、小さな溜息が笑った。

「見てるよーほんと…今日も田中さんにも言われたもん、よく見てますねーって笑われてさ、大好きなんですかって…大好きって言っちゃった俺、笑」

大好き、この言葉は呪文みたいだ?
だけど呪文を言ったからって願い叶う訳じゃない、それでも想いは幾らか伝わる。
そんなこと思いながらパソコン画面の校正は終わって、スリープの操作して閉じてルームライトをスタンドに変えて笑った。

「花サンにも大好きって言われるよ、笑」

大好き繋がりで少し躱したいな?
そんな意図に御曹司クンは素直に笑ってくれた、

「ソレも言われた、私も大好きなんですよーって笑ってたよ彼女、笑」
「自分も花サンのこと好きだよ?笑」

さらっと言ってベッドに転がって、ハードカバーを開いて、
文章と写真を目で追い始めたら電話ごし訊いてきた、

「あのさ、なんで田中さんとオマエってそんな仲良いの?なんか恋人っぽいって言うか、」

またソレ気になるんだな?笑 そんな感想と正直に応えた、

「恋人じゃないだろ、笑」
「でも田中さんと今日もコーヒー飲んで帰ったんだろ?なんか帰り際に飴とかもらってたし、」
「ふうん?ホントよく見てるね、ストーカー?笑」
「っ、そんなんじゃねえもん、って、ストーカーっぽい俺?困」

ちょっと困った、どうしよう?
そういう空気また可笑しくて笑ってやった、

「仕事中にメールされまくった時はマジでストーカーだったね、笑」
「っあ、あれはホントもうしないから言うなよーごめんってば、拗困」
「次またやったらペナルティだから、笑 仕事は真面目にやんなね?」

そんなカンジの会話で笑って、そしたら御曹司クンふっと黙り込んだ。
なんだろな?そんな空気に待ってたら遠慮がちに訊いてくれた、

「あのさー…こうやって電話してくれてるってさ、止めるのってとりあえず無しってコトで安心していい?その場合って…友達ってコトでイイワケ?」

それを聴きたかったんだ?って納得した、

自分たちの関係が今後どうなるのか、それを知りたくて御曹司クンは電話したかった。
そんな意図と不安感が電話ごしにも見えるみたいでナンカ可笑しくて笑った、

「嫌だったら架け直したりしないだろ?笑」



とりあえずココで一旦切りますけどまだ続きます、気が向いたら続篇また。
Aesculapius「Moueion27」加筆校正まだします、終わったら不定期連載か第75話の予定です。
この雑談or小説ほかナンカ面白かったらバナーorコメントなど反応よろしくお願いしたいです、ソレが理由でWEB公開してるので、笑

深夜に取り急ぎ、



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山岳点景:春の花冠

2014-04-23 23:00:00 | 写真:山岳点景
天冠の花



山岳点景:春の花冠

桜の花色は薄紅色、開花期は一週間程度で花が散ると葉ってイメージだと思いますが。
それは品種改良種=里桜の一品種である染井吉野の特徴で、他の品種はまた違います。
自生種である山桜は花と葉が同時に芽吹く+花の色も白っぽいものが多いです。



山桜系でも公園などにも多いのは大島桜、花色は白+薄緑色の葉。
これの葉が塩漬けにされて桜餅に使われるんですけど、神奈川では箱根園の古樹が綺麗です。
その木よりも個人的に好きだった大島桜があります、が、今はもう伐られてしまいました。

小さい頃に住んでいた街のはずれ、渓流に行く道の入口に若い一本桜がありました。
横浜市内でも丘陵地帯で原っぱだらけ、近所の渓流には沢蟹やザリガニ+赤蛙や蜻蛉もいる長閑な街で。
おかげで外遊びばかりしている子供時代だったんですけど毎春、その桜を幼馴染と見に行くことが楽しみでした。

真白い花に葉の緑、幹の紫がかった黒色、三彩に凛と咲く春。
公園や校庭で見る染井吉野の華やぎとは違う清々しい姿に惹かれて、花の頃は毎日通ってたんですけど、
まだ大樹とは呼べない若木、それでも空を仰いで伸びる梢は真白に咲く万朶の季は雲の花だと思っていました。



Another race hath been,and other palms are won.
Thanks to the human heart by which we live.
Thanks to its tenderness,its joys,and fears,
To me the meanest flower that blows can give
Thoughts that do often lie too deep for tears.

時の歩みを経、もうひとつの掌に勝ちとれた
生きるにおける人の想いへの感謝。
人の温もりへ、喜びへ、そして恐怖への感謝、
ひそやかに咲く花こそ僕には意味深い 
どの涙よりも深く心響かせるから。

William Wordsworth「Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood」引用抜粋&自訳



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第75話 懐古act.1―another,side story「陽はまた昇る」

2014-04-23 09:25:05 | 陽はまた昇るanother,side story
That hath kept watch o’er man’s mortality 死を見る瞳



第75話 懐古act.1―another,side story「陽はまた昇る」

人質立て籠もり事件の認知件数は、過去10年間では平成16年の17件が最大。

その翌年の平成15年は7件、以降3、6、4、2と件数は増減し平成22年は4件。
発生現場は国際空港から銀行、民家、犯人の所持品は包丁・小刀など刃物が多い。
日本は銃刀法の規制があるため銃火器は少ない、そして凶器と現場は「一般性」がある。

「…日常から犯罪が生まれるってことなんだ、件数はす…ぁ、」

つい声こぼれた口許に掌を当て、周太はため息吐いた。
いま庁舎の書庫にいる、この誰もいない独りの静寂に油断が口から出てしまう。
こんなふう自分は独り言のクセがある、こんな小さな習慣が今の自分には危険なのに?

―こんなんじゃ駄目…今は職務中なんだ、誰がどこで聴いているのか解らないのに、あの人の、

あの人、観碕征治。

観碕征治の関係者はおそらく自分を見張っている。
見張っていないはずがない、だって14年前すら彼は自分を見に来た。

―お父さんのお通夜にまで来て僕に声かけたんだ、そして射場にも、交番にまで来て、

最初は父の通夜の夜、次は術科センター射撃場、そして新宿東口交番。
14年前と今夏で3回あの男を見た、けれど多分ずっと向うは見ている。

『お父さんが喜ぶと思いますよ、同じ道を君が歩いたら、』

樹医になりたかった9歳の自分にそう言ったのは、あの老人だ。
あの老人が観碕ならば祖父の小説と同一人物だろう、その全てが事実だとしても解らない。
なぜ父と自分に関わろうとするのか?その理由は小説の通りだとしても彼の想いは解らない。

『同じ道を君が歩いたら』

観碕の想いなど解らない、けれどあの言葉は響き続けてしまった。
そして樹医の夢もいつか忘れて、ただ警察官になることが全てだと射撃部に入り工学部に進んだ。
その選択は「お父さんが喜ぶ」ことが目的だった、けれど今はもう父の意志はそこに無いと思い出している。

『良い桜の木だね、』

あの通夜の時もう一人話した相手、あの笑顔は父と少しだけ似ていた。
日焼け大らかな顔は山の人だと見えた、父と同じような年恰好は親しみやすく想えた。
のどやかに明るい雰囲気は山での父と似ているようで、まるで父が生き返って話してくれるようで嬉しかった。

『この桜の木はお父さんが大切にしている奥多摩の山桜なんです…僕はこの桜を護れる樹医になりたいんです、』

実家の庭に咲く山桜、あの花を見上げながらそう答えたとき誇らしかった。
父の俤を見せる誰かに父との約束を確かめた、それが誇らしくて少し慰められた。

―あのとき僕は約束を憶えていた、樹医になることがお父さんに喜んでもらえるって解っていたんだ、それなのに、

もう10年以上も前の記憶、けれど記憶の感情は今も鮮やかに瞳深く温める。
あのとき父との約束は生きる意味になった、それを受けとめてくれた眼差しは泣きそうに微笑んだ。

『奥多摩の山には山桜がたくさん咲くよ、』

遠い、けれど寄りそう記憶に日焼あわい笑顔は涙一滴そっと零す。
奥多摩の山桜は父にも教わっていた、だから彼は奥多摩を知る山ヤなのだと解かる。
だから質問した「アンザイレンパートナーはいるのか?」の回答に彼が誰だったか、もう解かる。

―地域部長の蒔田警視長だ、あのひとは、

蒔田徹、父の同期で山岳救助隊に関わっているのは彼しかいない。

それは父の芳名帳に残される参列者の肩書から読みとれた、それに記憶の名前も「蒔田」でいる。
あのとき大らかな優しい日焼顔はきちんと名乗ってくれた、そして同期であることも教えてくれた。

『お父さんとは違うクラスだけど同じ学校でトップ争いをしていたんだ、おじさんがずっと2位だったけどね、』

そんなふうに誰かが話してくれた記憶がある、この声は山桜の声と同一人物だ。
そして辿りたくなる、安本の他に警察官の父を知っている人物ならば聴きたい。

―蒔田部長ならお父さんの事情を知っているかもしれない、幹部なら色んな資料も見ているはず、でも

地域部長、警視長、そんな幹部にどうしたら自分が会えるのだろう?

「…あ、」

どうしたら会える?その問いに声こぼれて掌に抑えこむ。
蒔田が山岳救助隊だったなら伝手がある、そう気づいて直ぐ後悔に唇噛んだ。

―後藤さんに訊けば良かったんだ、このあいだ会ったばかりなのに僕はどうして、

青梅署山岳救助隊副隊長、警視庁山岳会会長、その後藤なら蒔田を知っているはず。
それどころか後藤は蒔田のアンザイレンパートナーだった可能性もある、それをなぜ気づけなかったのだろう?

―僕はこういう所が警察官に向いていないよね、呑気すぎて単純で…見落としが多すぎる、

後藤と蒔田の関係をすぐ気づけない、そんな自分だから証拠ひとつ掴めない。
こんな見落としは未だ多くあるだろう、その思案が見つめる認知件数に考えこむ。

―そうだ、あの芳名帳も変かもしれない…どの人も肩書が書いてあった、ね、

弔問の芳名帳は一般的に住所と氏名を記す。
会社や団体の一員として参列する場合は社名や団体名から役職名なども記入する。
その通りに父の芳名帳は警察官たちの所属が記されていた、けれど警察関係者以外が全くいない。
それは父が学生時代の友人を巻きこまない為だと考えていた、それでも警察官が殉職したら普通ニュースになり気づくだろう?

―田嶋先生はあのときパリ大学にいて、だから新聞を読んだのが遅かったって…でもその新聞の日付って、いつ?

田嶋が参列できなかった理由は解かる、でも他の人々は何故だろう?
父は東京大学文学部に在籍していた、そこは祖父の晉が教授職として務めた縁がある。
その縁故から祖父の関係者は父の知人でいるはず、それなら葬儀に参列するのが「普通」だろう?

―家の電話番号が変わっていたって田嶋先生は言ってた、でも、新聞記事とかニュースで普通なら解かるのに、なぜ?

あの当時、父の殉職事件は報道でどう扱われたのだろう?
あのとき近所の人は参列してくれた、その他は警察関係者ばかりが参列して警察学校の同期は手伝ってくれた。
そのことは憶えている、それなのに父の事件がテレビや新聞でどのように報道されていたのか前後が解らない。

―図書館で新聞記事を調べてはいたけど、犯人の逮捕と起訴については書かれてたけど事件すぐの日付で報道はあった?

報道のことまで気付いていなかった、このことは父の同期の安本なら気づいているのだろうか?
それ以上に今もう一つ、蒔田と後藤の関係から気づかされた可能性を確かめたい。

―英二なら蒔田部長とも会える、ね?

英二は蒔田から「鍵」を得てしまったろうか?

―お祖父さんの拳銃もたぶん英二が持ってる、蒔田さんの証言も聴いていたって不思議じゃない、ね…どうしていつも、

いつも英二だ。

いつも英二は先を駈けてしまう、おそらく祖父の小説も英二は先に読んでいる。
だから祖父の拳銃は埋められた場所から消えていた、たぶん芳名帳も英二は先に調べている。
祖母たちが従姉妹同士であることも英二は先に知っていた、きっと父が東京大学を出たことも先に掴んでいる。
こんなふうに英二は他にも父のパズルピースを先に掴んでいるのだろう、そんな推定に溜息ひとつ想い呑みこんだ。

―英二、どうして英二がそこまでするの?どうして…僕より先にいつも辿りつけるの?

父と英二は血縁がある、それが英二の理由の一つだろう。
この血縁は顔立ちにも見えて山の世界に惹かれる姿も重なってしまう。
そんな全てが英二の真意を解らなくさせる、どうして英二は自分の前に現われたのだろう?

『きっと50年後の俺も周太に帰りたい、ずっと。想うのは周太が初めてで唯ひとりだ、』

最後に逢った秋の初め9月の終わり、そう英二は言ってくれた。
あの言葉は真直ぐ自分を見つめてくれた、あの切長い瞳に偽りは欠片も無かった。
だから想いは真実なのだと思う、それでも英二の「最初の動機」はどこにあるのだろう?

―英二、お父さんの殉職と僕と、どっちが先だったの?

父の殉職を追うために自分は警察官になった、それは英二も同じだとしたら?
そんなふう想えてしまうほど英二は先回りしてしまう、この皮肉に微笑んで周太はファイル抱え歩きだした。

―考えごとしてる時間じゃないね、今は業務中だもの、

こつん、こつん、靴音が自分と歩いてゆく。
誰もいないことを確かめて照明を消し、廊下に出て施錠する。
すこし急ぎ足で事務室に戻って鍵を返し自席に戻り、隣席へファイルを差し出した。

「伊達さん、こちらのファイルでよろしかったですか?」
「ありがとう、」

短い言葉と受けとってくれる顔は謹厳で、けれど瞳は温かい。
この眼差しとも2ヶ月近くなる、その信頼とかすかな喉の感覚に尋ねた。

「すみません、洗面に5分離席させてください、」
「どうぞ?」

即答してくれる顔は真面目でも気遣ってくれている。
そんな空気感すこし心配になりながら頭下げて、また廊下に出て口許そっと抑えた。

―咳きこみそう、すこし長く書庫にいすぎたね、

古い書類の並んだ空間は埃っぽい、それが喘息発作を刺激する。
けれど今なら水のうがいで抑えられるだろう、その意図に洗面所の扉開いて瞬間、聴覚が裂かれた。

「っ、」

これは、銃声だ?



(to be continued)

【引用詩文:William Wordsworth「Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood」】

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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚71

2014-04-23 00:40:36 | 雑談寓話
こんばんわ、日曜に古本屋へ行ったらスティーブン.W.ホーキング博士の本を買えて、やっぱり面白いです、笑
子供の頃に父が買ってきた雑誌やテレビなんかでこの先生の宇宙の話を読んで、それ以来の敬愛する学者さんなんですけど、
学生時代にALS・筋萎縮性側索硬化症を発症されて障害者になられた「車椅子の物理学者」として著名な方ですが、ソレと無関係に偉大な学者です。
「僕は幸運だった、僕の専攻分野は頭だけで出来るから体が動かなくても学問を続けられる、支えてくれる人たちに感謝しながら」
という言葉が好きなんですけど、理想という妄想ではなくて現実=自分の限界に向き合った等身大を歩む潔さ&努力がカッコイイ、
学問の世界って率直なトコ体も遣う分野の方が多いんですよね、文系も理系も現場=実証が無かったら成り立たないコトのが多いから。
その最たるモンは何だって言ったら身近なトコだと医学、解剖学はもちろん臨床では指先の感覚から緻密さが要求されます。

で、この雑談もバナー押して下さる方いらっしゃるならってカンジで続き載せてます、楽しんでもらえてたら嬉しいんですけど、



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚71

12月26日21時半前、クリスマス明けた月曜夜、
花サンとコーヒーして帰ってくる電車の中メール2通届いていた、
誰からか解かるな思いながら開いた1通めは暫定恋人からだった、

subject:おつかれさまです
本 文 :今日もおつかれさまです、
     今日ランチのとき〇〇って店に行って~中略~
     寝る前に電話させてもらうね、声ちょっと聴きたいです(顔文字笑顔)

たぶんソンナ感じのメールだったと思う、
記憶曖昧だけどコンナ感じで定期便みたいにメールくれてたから。
で、新着のメールは予想通りってカンジだろうけど同僚御曹司クンからだった、

From:御曹司クン
本文:おつかれ、いま帰りの電車だけど帰ったら電話すると思う、お願いだから少し話させて?(困惑顔文字)

何を「お願いだから少し話させて?」なんだろう?
解らない疑問とメール見つめながらトリアエズ返信した、

本文:おつかれさん、寝てたらごめんね?笑

そんな返信1通して文庫本を開いて、ちょっと読んだら駅着いて、
もう半分は店じまいしてる駅前から商店街を歩いて帰って、風呂すませて、
時間遅かったから軽い肴で晩酌しながらパソコン向かってたら着信コールが鳴った、で、繋いだ、

「こんばんわー今日もおつかれさまです、笑顔」

ってカンジに暫定恋人が話し始めて、
大した会話じゃないだろなって思ったから携帯は肩に挟んだ、

「おつかれさま、笑」
「ねー今なにしてるとこ?」

なんて質問されたと思う、で、正直に多分言ったと思う、

「パソコンで作業中、笑」

ごめんねホント作業中は続行中、笑
大した会話しないならキーボートうちながら話せる、そんな意図に言ってきた、

「え、もしかして風呂敷残業っていうのしてるとか?」
「ソンナ感じ、笑」

ごめんね風呂敷残業じゃなくて自分の勉強その他だよ?
そんな真相は言わないままキーボードの手は止めないでいたら、向こうは話しだした、

「仕事ホント忙しいんだ?こっちも今日職場で~〇〇さんが~それでランチのときに~で帰りに買い物行ったら~」

コンナ感じの話し出しは定型文だったと思う、笑
職場の誰かサンの話、食べたモンの話、買物した服の話、がメインだった。
こういう他愛ない会話は別に嫌いじゃない、でも重要事項なワケでもない、だからタダ相槌しとけば向うは満足してくれた、

「ふーん、そうなんだ、大変だったね?へー気に入ったのあって良かったね、笑」

みたいな感じで、

ナニも頭使わなくて済む会話もある意味では安らぎだろう?
そんな感想と聞き流して、たまに笑って、だけど手もとはキーボード叩きながら意識は画面を見ながら考えて、
そういう電話をはさんだ温度差みたいなものを改めて感じながら、あらためて不思議に思えてきたから訊いてみた、

「あのさ、自分のドコが気に入って好きなワケ?笑」

ホント疑問だ?
こんな電話一本でもコンナに温度差がある、ソレを向こうは今のところ気づいていない。
こんなに気づいていないクセに自分の何を見てコンナに電話その他で構おうとするのだろう?

その答えは訊かなくても見え透いている、
それでも「付き合う」ってなった今は少しくらい変化しているだろうか?
なんて思いながら訊いたけど回答はこんな感じだった、

「まず顔だよねーはじめて見たとき歩き方カッコいいって思ってね、動じないカンジも良いし本とかよく読んでるトコとか~以下略」

訊いておいて悪いけど予想通りの回答って正直なとこツマラナイ、
貌とかナントカが一番に来るって面白くない、こんなオダテ文言を聴きたいわけじゃない、
だって褒める部分だけっていうのはホントのとこで相手を好きなわけじゃない、ただの御機嫌取りにしか想えない、

なんてコト考えている自分ってホント性格悪いなー

とか考えながら打ちこんだ文章の見直しチェックして、
それが済んだ頃にキャッチが入ったから電話向うに笑いかけた、

「さて、そろそろ寝るね、笑」
「あ、もう切るの??」

もっと話したいな?そんなトーンで言ってくれたけど、
こっちにはコッチの都合があるよって思いながら笑いかけた、

「明日も早いんだよね、おやすみ、笑」
「そっかー…」

残念だなーわがまま言いたいなー
ソンナ感じの空気が来るんだけどこっちは早く切りたいのが本音だった、
そんな本音にキャッチホンのコールは鳴っていて、もう強制終了しようとしたら言われた、

「じゃあ電話ごしキスして?おやすみって、笑顔」

そういうの自分いちばん苦手で嫌いで無理なんですけど?

こういうベッタリ甘いのはホントキャラじゃない、笑
代りに舌打ちでもしてやろうかなアレってキスの音に聴こえるだろうし?
なんていう発想してる自分はホント恋愛体質とか程遠いんだろな?そんな自覚しながら笑った、

「ごめん無理、おやすみ、笑」

それだけ言って笑ったらゴネられて、
キスしないと寝られないとかナントカ言われて、正直メンドクサクなって、
こっちの都合とか考えられない子供っぽさに呆れてさ、そんなことしてるうちにキャッチホンが切れて、で、

「そういうワガママ子供っぽいよ?いい子は早く寝んねしな、笑」

なんてカンジに想ったまま言って勝手に電話切って、
そのまま不在履歴から繋いだら直ぐに出てくれたから笑いかけた、

「電話すぐ出られなくてごめん、どうした?笑」

メールの感じから何か「どうした?」があるんだろな?
そう思って言ったら電話の向こう溜息から声が笑った、

「あー…架けてくれたんだ、よかったー…もう無視されたのかと思った、笑」

さっきの電話後だからだろうけど遠慮がちトーンがちょっと健気に想えた、笑
こういう比較による補正効果ってあるんだろな?そんなこと考えながら笑った、

「他の電話が入ってたんだよ、で、眠いから用件早くして?笑」
「うわーそんな迷惑そうに言うなよーへこむじゃん俺、」

ソンナ感じに御曹司クンとのクリスマス明け電話は始まった、



とりあえずココで一旦切りますけどまだ続きます、気が向いたら続篇また。
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山岳点景:星花の森

2014-04-22 23:31:01 | 写真:山岳点景
木洩陽ふる星



山岳点景:星花の森

森の水仙です、
昔に植えられた西洋水仙が野生化したのだと思います。
緑あざやかになる森で木洩陽ゆれる姿は静かで森閑の風情です。



When all at once I saw a crowd,
A host of golden daffodils,
Beside the lake, beneath the trees
Fluttering and dancing in the breeze.

Continuous as the stars that shine

その刹那、この視界いっぱいに
黄金きらめく水仙の花々が現われて
湖の畔、樹林に映え輝き
やわらかな優しい風に揺らめき踊る

涯なき星々は輝きわたり

William Wordsworth「The Daffodils」引用抜粋&自訳





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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚70

2014-04-22 00:35:06 | 雑談寓話
こんばんわ、ここんとこヤタラ眠いんですけど、
雨降り曇天のナントナク薄暗い日だった所為か+αに眠たい一日でした、笑
で、この雑談もバナー押して下さる方いらっしゃるならってカンジで続き載せてます、楽しんでもらえてたら嬉しいんですけど、



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚70

12月26日21時半前、クリスマス明けた月曜の夜@コーヒー屋、
いつもの席で文庫本を読んでる花サンの前に座ったら笑ってくれた。

「残業おつかれサマ、笑」
「おつかれ、待たせてごめんね?笑」

なんてお決まりの台詞から始まって、
のんびりコーヒー啜りこんだらナンカほっとした、

あー日常だな、笑

言語化するとソンナ感じで、
日常だなって感想にほっとしてるアタリ自分の本音が見えてた、
ここんとこ考えごとが多かった、それも得意分野じゃ無かったから正直ちょっと疲れてた、笑

ホント恋愛ネタは無理、なんも考えずに温泉浸かりたいな、ドッカ行こうかな?

そういう本音にコーヒー啜って、
ボンヤリ座って暫くしたら花サンが笑った、

「トモさん、温泉行きたいなーとか考えてるでしょ?笑」
「うん、笑」

素直に頷きながらまた日常にほっとした、笑
ぼんやり座ってるだけでも解かってもらえる、そういう呼吸は気楽でいい。
そんな気楽さに話したいコトぼけっと考えまとめてたら、ぽんと言葉をくれた。

「メールの人と、暫定恋人さんとのコト考えたりでお疲れなんだ?」
「うん、疲れてる、笑」

ホントなんか疲れてるな?
その自覚に笑ってコーヒー飲んで、口開いた、

「本音言っちゃうと暫定恋人は割とドウでもいいんだよね、」

ホントのとこドウでも良かった、だからクリスマスのデートも記憶ほとんど無い。
そんな本音に目ちょっと大きくして訊いてくれた、

「ドウでも良いって、どうして?」
「妄想恋愛な子はすぐ現実に厭きてヨソ行くからさ、責任とかアマリ感じないんだよね、笑」

妄想恋愛、そんな言葉しっくりくる。
そう思ったまんま言ったカフェテーブルに聡い目が訊いてくれた

「ひとめ惚れで来た人だから、こっちの中身を見ていないってカンジ?」
「うん、見てないってカンジ、だからコッチも深く考えなくて良いのは気楽、笑」

もし相手が内面まで見てくれるなら向き合うしかない、
でも相手にとってドウでも良いなら無視しておけばいい、そんな現状を笑った、

「単純に子供だからさ、ソレナリ合せとけば踏みこまれないで済むし、想い通りにならないって気づけば消えてくれるから真剣になる必要も無いだろ?笑」

見た目で来た相手には外貌だけで事足りる、だから心で向き合う手間は要らない。
コンナ考えは冷たいかもしれないけれどソウ想ってるから仕方ない、そんな本音にコーヒー相手は困ったよう笑った、

「トモさん、その人のことホント恋愛感情って無いでしょ?」
「恋愛ゴッコにマトモに相手したら疲れるだろ?でも、ちょっとは好きだよ、笑」

まったく好きじゃなかったら付合っていられない、
だけどホントに好きになるワケでもない、そういう本音に訊かれた、

「メールの人と付合うって選択肢は無いの?」

やっぱりソコ訊くよね?笑
そんな予想通りにも回答ちょっと難問で、答えられる範囲で言ってみた、

「友達と恋人だとさ、踏みこむ権利みたいのが変わるだろ?それがメンドクサイって自分はなると思う、ペースが違う相手だから、笑」

寂しがり屋で泣虫でくっつきたがり、そういう御曹司クンと自分は根本的にペースが違う。
その違いは友達なら個性の差だなって楽しめる、でも恋人になれば擦違いのイラつきになるだろう?

自分のペース壊されたらムカつくんだろな?

そんな自分の本音を解かっているから絶対に無理、
そう想ってるまんま笑ったら困ったよう笑ってくれた。

「時間とか考え方とか、たしかにペースが違うって難しいね?言葉が通じないって感じになるもの、」
「そうだね、笑」

そうだね、って答えて気が付かされた、御曹司クンとは「言葉が通じない」ってカンジは少ないかもしれない?

御曹司クンの言ってる事もやってる事も自分と違い過ぎることの方が多い、
だけど御曹司クンが何故ソレを言ったりやったりするのかは理解できる、で、その指摘を御曹司クンは聴ける。
こっちが言ってる事を御曹司クンは必死で理解する、ソレが的外れな回答だらけだとしてもナニも考えない妄想恋愛タイプとは少し違う。

言葉が通じる、だから多分あのひとの事も話したんだろな?

そんなこと改めて気が付いて、ちょっと新鮮だった、笑
それで尚更に自覚した、たぶん暫定恋人とは間もなく別れるんだろうし記憶もさして残らないだろう?
だけど御曹司クンのことは忘れないかもしれない、この先も恋人関係にはならないだろう、それでも向き合った時間を嫌いじゃない。

泣かれて拗ねられて一人相撲にキレられて、勝手な妄想で多分アレもされていて、笑
そういう相手なのに向き合った時間を嫌いだと想っていない、どっちかいうと愉しかったと想っている、
だから多分どっちかいうと好きなんだろう?そんなこと考えながら コーヒー啜った向こう花サンが笑ってくれた、

「メールの人は言葉が通じないって程じゃないんでしょ?だって言葉が通じなかったらメールそんな出来ないし、笑」

確かにその通りだな?笑
そんな感想ありのまま笑って頷けた、

「うん、言葉は通じてるって思う、笑」
「そうだろねーイヴもその人と楽しかったんでしょ?そっちにしとけばいいのに、笑」

笑って言われて、この返答ちょっと困るなって思った、
もし「メールの人」が誰だか知ったら違うこと言われるのかもしれない?
そういう推定が可笑しくて笑いながらコーヒー飲んで話したくなったコトに口を開いた、

「年明けに鎌倉って言ってたよね、どこ行きたいとかリクエストある?笑」



とりあえずココで一旦切りますけどまだ続きます、気が向いたら続篇また。
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