デッド(リフト)よりスクワットが強くなってこそリフター(重量挙げの選手)
とは私のリフティングの師匠の言葉。
その言葉にあるように、ウエイトリフティングの選手たちはスクワットのトレーニングに余念がありません。
しかし、丸太のような太ももを持つ彼らでも膝の故障を抱えるケースもしばしば。
…と書くと、「重量挙はケガし易そう」と思われてしまいそうですが、それは大きな誤解です。
実際のところは球技や格闘技よりも
障害発生率はウエイトリフティングのほうが優位に低い=安全!!!!
ということを申し添えておきます。
それもそのはず、「正しいフォームを追いかけてゆく」という前提で行うのであれば…の但し付きですが
故障予防・競技復帰のための選択肢として「ウエイトトレーイング」が挙がるほどですのでね。
ウエイトトレーニングは基本、ケガをしにくいスポーツなんです。
ただ、どの競技でも選手であれば常にギリギリの線まで追い込んで自分を高めてゆきますので、
故障を負うリスクとも常に背中合わせにあります。
なので、痛みなくまっさらな身体で競技生活をしている選手の方が少ないのは
スポーツ選手全般の「あるある」でもあるのです。
ま、それを善しとは思いませんが、それはあくまで現状「そうだ」ということ。
さて、今日の本題。
このところスポーツ選手へのメンテナンスやコンディショニングが増えておりまして、そこでのお話を少々。
そこでは
「怪我をしない」「怪我からの回復」「競技力の向上のベース」
などをテーマとした講義も行っています。
前回は選手の皆さんへ「故障」を抱えているときのトレーニングで外してはいけない
「ルール」についてお話をさせていただきました。
内容はこうです。
『テーマ:故障時のトレーニングにおけるルール』
【痛みとは何だろう?~身体の発する「警告」に耳を傾けよう~】
「痛み」は「何が起こった時」に発せられるのでしょうか?
組織が傷ついたとき?
それも正解の一つです。
でも、それだけではありません。
痛みは何某かのストレス(物理的な外力・代謝産物のような化学物質など)に組織がさらされたとき
その組織が「これ以上は耐えきれない」「これ以上の負荷がかかると壊れてしまう」ような負荷を受けたと感じた時に発するサインであるということを押さえていただきたいんです。
どういうことか。
例えば、私が関節技を掛けられたとします。
私の関節には激痛が走り、瞬時に、そして本能的にタップアウト(降参する時の合図。相手の身体やマットを2~数回手でたたく。)することでしょう。
この時、私がムキになって我慢したり相手が「降参」の意思表示を無視して壊しにきたりしていないという前提でいうと、技を解かれた私の関節は痛みもなく何事もなかったように動かせます。
つまり「痛み」=「組織の損傷」ではないということなんです。
技を掛けられている時の私の関節はこういっていたんです。
「これ以上の力がかかってきたら壊れてしまうよ!!!!!」
と。
この出来事は、組織がその耐久限度を超えようとする負荷にさらされたときから「痛み」は発せられているということを物語っています。
これは傷害された組織も同様。
そのことを踏まえると、故障時の練習でも攻めうる余地が見えてきます。
【「痛み」とは喧嘩をしてはいけません!~回復期に陥りがちな誤りを知ろう~】
一般的なスポーツの現場での状況を見ると、
故障した選手が持つ選択肢が以下の二つしか用意されていないケースにしばしば遭遇します。
A、故障の痛みに耐えてみんなと同じメニューで練習する
B、故障しているので練習しない
「A」のケースでは真面目な人ほど悲惨な目に合うことになります。
怪我をしていても痛みを我慢してそれまで通りの練習をこなそうとすれば傷は深まるばかりです。
早晩「B」へと移行してしまうでしょう。
「B」のケースは一見よさそうなのですが、やはりそれ一辺倒だとダメなんです。
確かに怪我を負っても無茶をしなければちゃんと身体は傷ついた箇所を修復してくれます。
なので、時期が来れば多くの場合で「痛み」は終息を向かえます。(そうでないケースはまさに治療対象です)
しかし、痛みが引いても患部は長い休養の間に弱く萎縮していますので、
いきなり元の運動強度・運動量にもどすと再発の憂き目にあいやすいのです。
痛みが落ち着いても元の耐久性がないので、
通常メニューに戻る前に患部の強度に合わせた運動強度・量の段階的な増加が必要です。
何事もALL or NOTHINGではダメなんですね。
ちなみに私はこの発想で競技自体ができなくなった口です。
経験者は語る…なのです。(;^ω^)
でも、そうは言ってもコーチも実際には具体的にどういった順序を踏めばいいのかわからないわけです。
なので、痛みが落ち着くといきなり元の練習メニューに戻ってしまう。
「様子を見ながらやるんだぞ!」と言い含めても、
選手だってなにを基準に「様子」を見ればいいのかわからないわけですし、休んだ分を早く取り戻そうと無茶もします。
そうすると、先に述べたように故障した箇所が耐えられずに再受傷するか、
弱い部分をかばって別の場所を壊すか、といった残念なことになってしまうんです。
そうした残念な経過をたどらないためには「痛み」とケンカをしないでむしろ
「痛み」を味方につけることが重要です。
ではどうやれば「痛み」を味方につけられるのでしょうか?
ここは傷めた時には傷めた時の攻め方があるということを知っていただきたい。
=後編へ続く=
次号【痛めている間も成長を諦めない!~「痛み」というサインの有効活用法を知ろう~】