靭帯には弾性繊維(エラスチン)が多い⁉=追記・改訂版=

2017年03月23日 | よもやま話

この記事は2017/3/13に書かれたものですが、「コラーゲン」「エラスチン」を摂取したら体の中で再び「コラーゲン」「エラスチン」に再合成されるかのような誤解を招きかねない文章があったので3/22に改訂しました。

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ちょっと前の話なんですが、

講義の休み時間に

「靭帯には弾性繊維(エラスチン)が豊富に含まれているって聞いたんですが…」

という質問(?)を受けました。

私は「基本的に靭帯はコラーゲンが主な構成要素です。」と答えました。

しかし、質問者は

「靭帯にはエラスチンが8割も含まれていると文献に書いてありました」

と言い切ります。

はてさて、いつの間にそんな話になったのやら…

私の記憶の中では、

エラスチン(弾性繊維)というのは基本的に動脈ですとか肺みたいに伸び縮みする組織に多く含まれている繊維です。

ゴムのような性質を持った黄色い繊維で「黄色繊維」とも呼ばれていますので

エラスチンが多く含まれている組織は黄色っぽく見えるんです。

靭帯ですと、脊柱にある黄色靭帯なんかがそれ。

あとは頸椎の項靭帯ですね。

どちらも伸張性に富んでいて、靭帯としては特殊な部類です。

基本的に靭帯という構造物は関節が不必要にガタつかないように支える制動装置なんです。

なので関節にとっては柔らかくっちゃ困るんです。(みずみずしさとしなやかさは大事ですが…)

私の記憶に間違いがなければ(ないですけども…)膠原繊維(コラーゲン繊維)で編まれています。

なぜなら、

コラーゲン繊維は固く頑丈な組織なので、靭帯のように関節のガタツキを押さえる装置を作るのにはもってこいだから。

ちなみにコラーゲンがいっぱい集まっている組織は白く見えます。

前出の質問(?)では靭帯全般がエラスチンという黄色い繊維を8割も含んでいるということになりますが、

骨付き鶏もも肉を食べていても黄色くてゴムのように柔らかな靭帯はお目にかかったことがありません。

もっと言うと解剖実習でも関節をつなぐ靭帯は白かった(防腐処理のせいかくすんだ色ではあったけど…)。

 

そうした背景をふまえて当時のわたしは

「エラスチンを多く含む組織は黄色く見え、コラーゲンを多く含む組織は白く見えます。

一度骨付きもも肉なんかを買って靭帯を生で見てみると面白いかもしれませんよ⁉

先生のおっしゃるように黄色かったら『あいつ大した事ねえな』って笑ってください。(^^;」

と伝えたと記憶しています。

 

なんで今そんな話をしているのかというと、

腱や靭帯の回復に役立つ栄養素としてVCがあるのですが、

お昼にラーメンをすすりながらVCの薬理作用を引き出す摂取量について何か情報はないものかとスマホでNetを泳いでいたところ、

「靭帯にはエラスチンが80%含まれます♡」

という文字が目に飛び込んできたんです。

内心『んなアホな⁉』と呆れつつ、前出の質問者の言葉が思い出されたというわけです。

そのページはサプリメントの広告だったのですが、意図してかしなくてかは分かりませんが、

だいぶサプリメントにとって都合のいい感じに話が捻じれているようです。

こうなると調べないわけにはいきません。

でも、WEBの情報には注意が必要です。

前出のページのような、「売り文句としてのギミック」に引っかからないようネタ元を吟味してゆかないと残念なことになってしまいます。

残念ながらこういった突飛な話はWEBの世界では正誤は別にして多数派になっていることが結構あるようですね…

 

で、手持ちの文献いくつか開いてみると

やっぱり「項靭帯・黄色靭帯」を除く靭帯はほぼコラーゲンでできていました。

その資料にも「項靭帯・黄色靭帯」はエラスチンが80%含まれるとの記載があり、

ひょっとしたら、その部分が「靭帯全体の特徴」として誤って広がってしまったのかもしれません。

ともあれ、自分の記憶違いではなかったことにほっと胸を撫でおろしたというわけです。

 

私もプロテインやアミノ酸といったサプリメントをとっていますので、サプリメント自体を否定するわけではありませんが、

効果とその説明が一見すると論理的に見えるのに、中身はがっつり間違っているものが散見されますのでサプリメントを買う場合はご注意くださいね。(^^;

 

ちなみに、関節の健康のために「コラーゲン」や「エラスチン」をとろうと考えている方、

コラーゲンもエラスチンも飲んでそのまま関節に届くものでないこを知っていますか?

どちらの成分も、お腹に入ったら一端お肉と同じアミノ酸というものに消化されます。

で、改めて人の身体のコラーゲンとして再合成されるかっていうと残念ながらその限りではないのです。

身体がコラーゲンの新生を必要としているのであれば…の但し付きでアミノ酸からVCの力を借りてコラーゲンを紡ぎだすわけですので、100歩譲って無駄ではないとしてもお肉に比べてコスパ悪すぎです。

故障を負っている方、お肉とVC、しっかりとりましょうね。

関節の健康のためにコラーゲン…と考えるのであれば、

運動してお肉を食べてVCをしっかりとることで合成が促されることお知っておいてくださいね。

運動刺激という引き金を引かないと欲しいところ(この場合は関節)にコラーゲンも紡がれませんから。

あと、美容目的であれば「異性を意識する」なんて引き金が必要かもしれませんね。

人は、いや、生き物は必要に応じて適応を示すというか、変化してゆくものですからね。

目的の変化をもたらすべく「適刺激」というものがあるわけです。

運動器を強化するなら運動刺激が必要不可欠となるわけですから、

皮膚を美しく保ちたいのであれば…

恋をするのが手っ取り早いんじゃないでしょうかね。( *´艸`)

ちなみに、余剰の栄養素はタンパク質であっても(コラーゲンもエラスチンもタンパク質です)脂肪として貯蔵されてしまいます。

多くの栄養素は活発な身体活動を引き金として身体に取り入れられてゆくということもお忘れなく。

 

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昔、サプリメントによる「コラーゲン」の摂取について、とある生理学者の先生が言い放った言葉にこんなのがありました。

「漢方では悪いところと同じものを食べたら治りが早くなるって考えるらしいな。

じゃあ、頭悪けりゃ脳みそ食うのか?

足を挫いたら豚足たべたら治りが早くなるってことか?

よく考えろ!

髪の毛食ったら俺の禿げ頭に毛が生えるとでもいうのか!?

まさかこの中でコラーゲンを飲んだら挫いた足が速く治るとか考えている奴はいないよなぁ?(-"-)」

冷や汗をかいたのを今でも覚えています。

若いころ、怪我が続いたとき飲んでたんですよね…

コラーゲン入りのプロテインを…

高かったんですよねぇ…( ;∀;)

なけなしの給料から頑張って買ってたなァ…(遠い目)

治んなかったんですけどね…(で、この業界に入ってきたワケです)

この先生、この後こう言ってました。

「腱やら靭帯の故障を治しかったら肉食ってVCを摂りなさい。」

もうご存知ですね。

コラーゲンの合成にVCが必要になるからですね。

皆さんもギミックにはお気を付けくださいね(^^;


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