学年だより「“青春”の発生(2)」
誰かと友達になろうとする時、みなさんはそのメリットを考えたりするだろうか。
こいつと友達になっておけば何かいいことがおこるにちがいない、自分に何らかの利益がもたらされるにちがいない、というように。
いちいち理由を考えることなどなく、なんとなく気が合うから自然に友達になっているのが普通だと思う。
では、人を好きになる時はどうか。もちろん見た目がいいとか、性格がいいとか、センスが合うとかの理由を後付けで説明はできても、好きになる瞬間に理屈は働いていないはずだ。
人と人との結びつきは、本来そういうものなのだろう。
だから、なぜこんなヤツが友達なんだろうと思いながらつきあい続ける関係が生まれ、まったくタイプでもなんでもないはずの人を気づいたら好きになっている。
ただし、大人になるとそうでもない状況が生じる。
仕事上メリットがありそうなこの人と友達になりたいと考えたり、お金持ちそうなこの人と恋愛感情におちいりたいと願ったりする。
“青春”時代は、人間関係においても、基本的に行き当たりばったりだ。
こういうタイプの人とつきあうとよくないことが起こるという予想は生まれない。
ある人を好きになってすぐに結婚生活に向いているかどうかを測らない。
そのような経験値をもっていないからだ。
コスパを計算している余裕もない。
だから、時に振り回されることもあれば後悔することもある。
しかし、そんなふうにあたふたすること自体が、かけがえのない経験になる。
~ 大人になるとどんなことも一度は経験したことがあります。悪い方向に行かないように、回避できるようになる。すると、余裕が生まれます。全力でしなくても、それなりにできるようになってしまうのです。大人になることが悪いことではないのです。でも、青春が起きなくなるのが大人になるということなのでしょう。大人はいつも「青春だったらなぁ~」と言っている気がします。でも大人になった今だって青春は起きるんです。一度も経験したことのない、すごく興味のある何かに挑戦してみましょう。もちろん全力で。無我夢中になれるものを見つけてみてください。気づいたら青春が起きているはずです。 (宮脇咲良「起き抜けすっぴんシアター」週刊SPAより) ~
いっしょに失敗した仲間、いっしょにバカなことをした仲間は、かけがえのない存在だ。
進む道が分かれ、その仲間と会うことがなくなっても、その経験が自分の血や肉となる。
勉強も部活も、コスパだけを考えるなら、高校時代のそれらには、ずいぶんムダは多い。
そんなものに全力で打ち込んでしまうことが、“青春”の発生条件だ。