学年だより「コミュニケーション力」
二年半後、AO入試、推薦入試といった形での受験をする場合、多くは面接が課される。
新共通テストの導入に伴って、二次試験は面接だけという大学も増えるのは間違いない。
さらに、みなさんの大多数が、数年後には就職活動、いわゆるシューカツに取り組む。
資料を取り寄せ、会社訪問をし、面接を受けて、内定をもらい、研修に受けてといったプロセスを経て社会人への道を歩んでいくことになるが、この就活で大きな比重を占めるのが面接だ。
そもそも「面接」では、何がはかられているのか。
就活の際に、採用する側が学生に求める資質とは次のようなものだと、内田樹氏(神戸女学院大名誉教授)は述べられている。
~ 学生に求められている知的資質はごく単純なことである。
「他人とコミュニケーションがとれること」、ただそれだけである。
もちろん、人間であれば誰でも他人とコミュニケーションはとれる。
問題はその「範囲」の奥行きと拡がりだけである。
「バカ」と言われるのは、自分の同類(年齢が同じ、社会階層が同じ、価値観が同じ、語彙が同じ)としかコミュニケーションができない人間のことである。
「賢者」と言われるのは、対立者や異邦人や死者や必要があれば異星人ともコミュニケーションができる人のことである。 (Web「内田樹の研究室」より) ~
本田圭佑選手が、メキシコリーグへ移籍したときのことだ。
ピンク色のシャツを着て登場した会見場に現れた本田選手は、「みなさん、はじめまして。本田圭佑です。パチューカとの契約を終えてとても満足しています。みなさんよろしく。どうもありがとう」とスペイン語であいさつしたのだった。
思えば、ACミランでの入団会見のときには、落ち着いた英語で、記者達の笑いをとりながら受け答えしていたことも思い出す。
いっぽう、英語もドイツ語も不得手な香川真司選手は、チームの選手たちとも、夜の町へ遊びに出かけた時でも、いつのまにか周囲の輪のなかに笑顔でとけこむ才能をもっているという。
HRを打った大谷翔平選手を迎え入れるベンチの様子からは、チーム内で彼がいかにかわいがられているかが伝わってくる。
海外で活躍できるアスリートたちは、抜きんでた運動能力や技術をもつことは当然ながら、類い希なコミュニケーション能力を持っているのだ。
逆に、選手としての能力は極めて高いにもかかわらず、人間関係の構築に苦労し、才能を発揮しきれなかった例も、実は枚挙にいとまがない。
自分のやりたい「こと」を、望んだ場所で思い切りやろうと思ったなら、その「こと」についての力をつけるだけでは叶わない。
スポーツにかぎらない。音楽や舞台の世界でも、学問の世界でも同じだ。もちろん仕事でも。