学年だより「根拠なき自信」
映画『Kalafina 10th Anniversary Film ~夢が紡ぐ輝きのハーモニー~』(4/12日公開終了)は、ボーカルユニット「Kalafina(カラフィナ)」の、デビュー10周年記念武道館ライブに密着したドキュメント映画だ。
作曲家で音楽プロデューサー(つんくさんとか中田ヤスタカさんみたいな方)の梶浦由記さんが生み出した「カラフィナ」は、Wakana、Keiko、Hikaruという声質の異なる3人の女性ボーカルで構成されている。10年前、劇場版アニメ『空の境界』の主題歌を歌うプロジェクトとして結成され、『oblivious』でデビューした。当初は、表には出ないユニットの予定だったという。だからメンバーも不安を抱きながらの活動だった。しかし、その圧倒的な歌唱力、緻密なハーモニーはたちまち人気を博し、ライブを行うようにもなる。
人気アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』や、NHK総合テレビ『歴史秘話ヒストリア』のテーマ曲を担当し、日本だけでなく海外公演も次々と成功させて着実にスケールアップしていった。
映画のなかで、3人それぞれのインタビューシーンがある。Hikaruさんが言う。
「あなたも現実を見た方がいいと言われたことは、若い頃、よくありました。」
小学生のころから、郷里の富山市内で音楽教室に通い、ミュージカルコースのメンバーとして発表会に参加する。そういう習い事は、せいぜい中学生くらいまで通って終わるのが普通のパターンだろう。しかしHikaruさんは、歌手になろうと考え、活動を続ける。
周りの人たちから、「歌なんかで食べていけるはずがない、上手といっても都会に出たら通用しないだろう」「ミュージカルのオファーがあったというが、どうせ単発の仕事だろう」「カラフィナ? アニメの主題歌? 大丈夫?」という感覚でみられていたことは想像に難くない。
就職したり、結婚したりする友人たちを目にしながら、Hikaruさんは、しかし迷わなかった。
~ 根拠のない自信のようなものがあったのでしょうか。なんの疑問もなく、この道でいけると思っていました。 ~
全くタイプの異なる歌声が見事に融合しているところが魅力のユニットだ。1人がメインボーカルで他の2人が支えるといった「ふつう」のハーモニーではない。3人ともに時に主張し、時によりそいながら、どこが主旋律かわからないほどの一体感をつくりあげていく。Wakanaさんが言う。
~ 3人は奇跡の出会いですね、とかよく言われます。でも、あたしはそんなふうには感じてないんです。奇跡とか偶然ではなく、こうなるべくして出会った運命だったんだなって。 ~
両親ともに音楽関係者だったWakanaさんは、十代後半ですでにシンガーとして博多のライブハウスなどで歌っていた。
歌手になろうと思ったのが3人のなかで最も遅いのが、リーダー的存在であるKeikoさんだ。
Keikoさんは言う。
~ ふたりと違って歌手になることを目指したのも遅いですし。だけど私は本当にラッキーなことに、このふたりと出会えた。だから、「夢って何だろう」と思う方に、人との出会いで変わることを知ってほしいなって思います。自分自身がそうだったから。 ~