水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

誰かのために

2019年06月17日 | 学年だよりなど
  2学年だより「誰かのために」


 開催中のFIFA女子ワールドカップでは、決勝トーナメント進出に向けてのあつい戦いが繰り広げられている。
 みなさんの記憶にはどの程度残っているだろうか。前々回の2011年ワールドカップでは、日本チームは見事、優勝を果たした。その前の大会までグループリーグ敗退を繰り返していた日本女子チームが、まさか優勝すると予想していた人は少なかった。
 彼女たちを支えたものは何だったのか。


 ~ 女子サッカーの日本代表、なでしこジャパンがワールドカップで優勝したときの話です。大会前の下馬評では、日本はよくて3位という予想でした。当時、テレビ番組でなでしこジャパンの中心選手だった澤穂希さんが大会について話していました。
 番組司会者「今回のワールドカップの目標は何ですか?」
 澤さん「優勝です」
 その場にいた全員が驚きました。私もびっくりしました。
 すると澤さんはこう続けました。
「私たちは、ワールドカップで優勝して、被災者や国民のみなさんに、勇気と元気を与えたいんです」
 それは東日本大震災が起きた直後でした。「被災者や国民のみなさんに、勇気と元気を与えたい」。これがなでしこジャパンの目的でした。そして見事に優勝。彼女らは帰国すると現地に行き、被災者を見舞いました。そのときようやく、彼女たちのワールドカップが終わったのです。 (原田隆史『最高の教師がマンガで教える 目標達成のルール』日経BP) ~


 2011年3月11日に起こった東日本大震災は、女子サッカーにも大きな影響を与えた。
 代表チームの練習拠点であったJビレッジは、福島原発事故の対応拠点となり全面封鎖された。
 自分達はサッカーをしていていいのだろうかと悩んだ選手たちも多かったという。
 しかし、「自分達のがんばる姿を見せることが、被災地への一番の応援になる」と信じることによって、彼女たちは自分達のもてる力を発揮することができた。
 「試合に勝つ」「いい成績をあげる」「仕事で成功する」といった目に見える目標を、われわれは掲げて努力しようとする。
 目標達成のためにがんばりきる力を与えてくれるのは、形ではない目標だ。
 その結果によって「誰かが喜んでくれる」「大切な人の笑顔が見られる」「家族が誇らしく感じてくれる」といった、自分以外への、形では表せないものを想像したとき、人はよりふんばれる。
 純粋に自分の利益のために頑張ろうとすると、意外に人は頑張りきれないものだ。
 誰かのためにという思いに支えられ、奇跡とも思えるプレーを代表チームは見せてくれた。
 彼女たちが、世界中の人々に対する「震災支援への感謝」が書かれたフラッグをもって場内を一周する様子は、今思い出しても目頭があつくなる。
コメント
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