水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

音楽座ミュージカル「グッバイマイダーリン★」

2019年06月24日 | 演奏会・映画など
 ~ あるところに一匹のねずみの奥さんがいました。このねずみは、家ねずみで、庭ねずみでも野ねずみでもありません。家ねずみたちは外に出ていくことはなく、家の中が全世界です。でも、ねずみの奥さんは、他のねずみたちとちょっと違っていました。ときどき、窓の敷居の上にそっと登っていっては、ガラスに額を押し付けて外を観ていたのです。春のは色とりどりの花が庭に咲き、冬には木々が雪で白くなります。しかし、ねすみの奥さんにはそういうものが何なのか、わかりません。そんなある日、一羽のキジバトがカゴに捕らわれやってきます。キジバトの語る窓の外の世界に胸躍り、心を寄せていくねずみの奥さん。……しかし、そのとき。 ~

 原作の「ねずみ女房」は、出版以来さまざまな解釈が述べられてきたという。
 ミュージカル化された「グッバイマイダーリン★」も、観た人それぞれがそれぞれの思いを抱くだろう。
 本校の男子生徒70名も70通りの感じ方をしたはずで、そのどれかが正解ということはない。
 中身よりも歌とダンスはすごかったと言う子、ふつうにおもしろかったですよと今風に「ふつう」と言う子、とにかく迫力がやばい言う声をきいた。リハーサルの緊迫感におののいた子も多かったようだ。
 観劇された保護者のみなさまはどうだったろう。「家庭にとらわれずに外に出よう」とか「アバンチュールしちゃおうかな」などの方向にむかってらっしゃらないだろうか。
 一昨年、森彩香さんがねずみ女房を演じた初演をみたとき、正直中身はよく掴めなかった。むしろ森さんという新鋭の登場への驚きが大きかった。今回の、草月ホールでの公演は前回とは大きく変わっていた。
 この作品を「音楽座ミュージカル」という形にしようという思いの強さは、初演のときから変わらないのだろうが、音楽座らしいダンスナンバーが増え、人間らしい人間を描ける日本唯一の劇団らしく効果的なサイドストーリーをからませながら、言いたいことが複層的に積み上げられた別作品に生まれ変わっているように思えた。
 ……というのも個人的に感想にすぎず、あえて言葉にしなくてもいいとカンパニーの方は言うかもしれない。
 たしかに、菜々さん、広田さん、安寿さんの美しいアリアに酔いしれ、同学年の新木さんの美声にひたり、波奈さん、祥子さんが踊っているのをみれればいい。わかろうとするより、感じることの方が経験としては大切なのだ。それこそが生きる活力になる。
 仮にそれほど面白くなかったと思った子がいても、蓄積された経験は、表現する人の「はしくれ」である我々にとって何らかの糧になるはずだ。
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誰かのために(3)

2019年06月24日 | 学年だよりなど
2学年だより「誰かのために(3)」


 自分のため(①「自分・有形」、②「自分・無形」)だけでなく、誰かのため(③「他者・有形、④「他者・無形」)を想定したしたときに、目標の実現可能性は高まる。
 ただし③・④の比率を高めすぎることにも問題はあると、原田隆史氏は説く。


 ~ ただし、「人のために」「誰かに喜んでもらいたい」「何かの役に立ちたい」という思いばかりが強くなり過ぎると、今度は自分自身への「振り返り」や「見立て」が甘くなります。「目標は達成できなかったけど仲間がほめてくれた」「目標に向けて取り組む自分を見て家族が喜んでくれてうれしい」……。気持ちや感情が満たされるだけで終わってしまい、結果がついてきません。 ~


 思ったような結果が出なかったとき、その原因が明らかに自分にある場合でも、③・④を隠れ蓑にして、気持ちを納得させてしまう場合がある。それは、たんなる言い訳だ。
 やはり①~④をバランスよく整えて、自分を甘やかすことなく頑張る必要があるだろう。

 「自分のために」を一切考えない男がいる。誰かのためになることをしたいと常に考えている……ように見える男が。おそらく本人にその自覚はない。
 電車の中でお年寄りにすかさず席をゆずる、街中で重い荷物を背負ったお婆さんをおんぶしてあげる、高いところにポスターを貼ろうとしてる女子を手伝ってあげる、図書館で本を運んでいる後輩にかけよって持ってあげる……。
 他人の何かを気づいてあげる感覚もすぐれている。
「髪の色変えましたね、素敵ですよ」「少しやせましたね、すっきりしてますよ」「毎日、植木に水をあげてくれてありがとう」「レギュラー入りできたんだね、よかったね、努力が報われて」……。
 その名は、町田一(はじめ)。町田家五人兄弟姉妹の長男。
 眼鏡を掛けた、身なりのきちっとした男子高校生。勉強もできそうだ。
 そんなにモテそうな外見ではないが、あまりにナチュラルに優しさを発揮してしまうため、女子をキュンとさせてしまうことも多々ある。
 残念ながら、勉強はできない。運動は極端に苦手だ。そして、人間が好きだ。
 町田くんにとっては、自分の周りにいる人がみな大切な存在だ。
 この時代、こんなに人に優しくできる若者がいるだろうか、でもできるなら自分もこうなれたら素敵かもと思わせるような高校生を、安藤ゆき『町田くんの世界』(集英社)が描き、みなさんの先輩である石井裕也監督が映画化した(6月14日公開)。
 そんな町田くんを、好きになる女子がいる。
 人嫌いで、クラスメイトたちとも極力口をきかないようにしていた猪原奈々さんだ。
 自分に対する他人の思いにだけは鈍感な町田くんと、思いをよせはじめた猪原さんが、不器用ながらも徐々に距離を縮めていく様子が、時にじれったく、時にせつなく描かれる。
 いつしか、二人の幸せを心から願っている自分に気づくだろう。ぜひ、劇場へ!
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