水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

大地の子みやり(2)

2021年08月21日 | 学年だよりなど
1学年だより「大地の子みやり(2)」


 幼い頃から将来のプロを目指して競技に取り組む。
 もちろん、誰もがプロになれるわけではないし、プロになったからといって生活が成り立つとは限らない。どんなスポーツ、いやどんなジャンルにもいえることだろう。
 一握りの存在であるプロプレイヤーになり、さらに一流選手として活躍できる人達が、恵まれた才能をもっていることはまちがいない。
 才能をもっている人は、おそらくたくさんいるのだろう。
 それをいかすだけの努力が必要で、環境に恵まれ、指導者と出会うといった運も必要になる。
 いろんなものの総体として、たとえばオリンピックのメダルがある。
 「メダリスト」と簡単に口にするが、彼ら彼女らがそう呼ばれるに至る道のりには、私たちが想像できないレベルで積み上げてきたものがある。
 彼らの道のりを知れば知るほど、個々人の持つ「才能」が占める割合は、われわれが思うほどに大きくないのかもしれないと思えてくるのもたしかだ。
 親や指導者のサポートがなければ、本人の圧倒的な努力は成立しない。努力とはそもそも何か。
 ひと言で定義できるものではないし、化学式で表すことも難しいが、おそらく最も相関があきらかになるのは、それに費やす時間と費用の総量ではないだろうか。
 私立尚志学園でゴルフ部に入って練習を続けるみやり。
 坂田塾のメンバーもみな進学するそこで、団体戦のメンバーに入るようなことはない。
 しかし伝統的に、一番下手な者がキャプテンになるという約束事があった。
 キャプテンになって、みやりはさらに練習量を増やす。授業のない日は、おにぎり6個をもって真駒内ゴルフセンターに行き、朝9時から夜9時まで打ち続けた。
 高校3年の夏。尚志学園は北海道予選を圧倒的な強さで勝ち抜け、全国代表になる。
 坂田塾代表の坂田信弘氏は、ゴルフ部顧問に電話をかける。
 みやりを、全国大会のメンバーに入れてほしいという願いを伝えてきた。


~「人は努力に対し、寛大さと優しさを持つべきだと思う。
  特に教育の現場に立つ者にとって、その気持ちは必要なものと思う。
  鈴木みやりは努力してきた。
  結果何一つ残せぬ努力であったとしても、鈴木は努力してきた。
  その事はお前が一番よく知っているはずだ。
  生涯で二度とないかもしれない。
  個人での戦いは、ゴルフクラブ手放さぬ限り続くと思うが。
  団体での戦いは、鈴木にとって最初で最後の戦いになるのは確かだと思う。
  鈴木みやりを、団体戦のメンバーに入れてやってはくれないか。」    ~
コメント
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