1学年だより「大地の子みやり(3)」
佐藤監督は、みやりを全国大会のメンバーに加えた。
一年生ながら最も実力のある高田由美がはずれた。メンバー発表のあと高田は、塾長坂田のもとに電話をする。「塾長! ありがとうございました! 私達みんな、みやり先輩に行ってもらいたいと思ってました! みやり先輩は私達には勿体ないキャプテンです! 塾長は最高の方です!」
事情を察して、感謝の言葉を伝えてきたのだ。
メンバーを乗せた監督の車が発車するとき、最後まで追いかけてきたのも高田だった。
この子のためにも、チームに迷惑をかけられない――。そう思いながら、みやりは霞ヶ関カンツリー倶楽部に降り立つ。
大会初日、尚志学園は3位につける。北海道の学校がここまで上位になった例はなかった。
一位の東海第二には高校生で日本アマオープンに優勝した井芹美保子がいた。二位の東北高校は宮里藍を擁し優勝候補だった。
しかし、経験したことのない暑さのなか、二日目以降苦戦を強いられる。
4人のメンバーのうち上位3人の成績合計がチームのポイントになる。
2番手と目されていた選手が崩れたとき、監督は正直あきらめかけた。
奇跡は起こる。最終日、みやりはベストスコア75で回ってきたのだった。
その結果、団体全国3位という快挙を成し遂げた。
みやりより下手な坂田塾生は、開校以来1人もいなかった。
みやりは黙々と練習した。人の何十倍も練習した。
運動神経のいい者、センスのある者はすぐに上手くなる半面、そこそこの努力で、ある程度のレベルに達してしまう。
しかし下手な者は違う。努力することが当たり前だから、平気な顔で人の何十倍も努力ができてしまう。
みやりより上手かった者の多くはプロを諦めていったが、みやりはこの後、大学でもゴルフを続け、プロゴルファーになるための努力を続けた。
みやりは、坂田先生の訓示をいつも思い出し、口にしていた。
~ 「お前たちの花は咲く、咲かない花はない。
人それぞれの咲き時、咲く処はある。山のテッペンに咲く花は淡くて小さい花だ。
山のテッペン、絶壁、川沿い、海辺と、花の咲き処は幾つもあるが、
山のテッペンに咲く花は急ぐな、焦るな。ゆっくりと咲いていけ。
最後に咲く花になれ。野の花だ。咲き急がぬ花だ。大輪の花だ。
一日一日の練習を大切にして生きていけ。
そして、野の花を咲かせるのだ」 (坂田信弘・かざま鋭二『大地の子みやり』小学館) ~
鈴木みやりこと、本多弥麗はこの後、日本女子プロゴルフ協会のテストに合格し、トーナメントプロになった。
大輪の野の花を咲かせたのだ。
佐藤監督は、みやりを全国大会のメンバーに加えた。
一年生ながら最も実力のある高田由美がはずれた。メンバー発表のあと高田は、塾長坂田のもとに電話をする。「塾長! ありがとうございました! 私達みんな、みやり先輩に行ってもらいたいと思ってました! みやり先輩は私達には勿体ないキャプテンです! 塾長は最高の方です!」
事情を察して、感謝の言葉を伝えてきたのだ。
メンバーを乗せた監督の車が発車するとき、最後まで追いかけてきたのも高田だった。
この子のためにも、チームに迷惑をかけられない――。そう思いながら、みやりは霞ヶ関カンツリー倶楽部に降り立つ。
大会初日、尚志学園は3位につける。北海道の学校がここまで上位になった例はなかった。
一位の東海第二には高校生で日本アマオープンに優勝した井芹美保子がいた。二位の東北高校は宮里藍を擁し優勝候補だった。
しかし、経験したことのない暑さのなか、二日目以降苦戦を強いられる。
4人のメンバーのうち上位3人の成績合計がチームのポイントになる。
2番手と目されていた選手が崩れたとき、監督は正直あきらめかけた。
奇跡は起こる。最終日、みやりはベストスコア75で回ってきたのだった。
その結果、団体全国3位という快挙を成し遂げた。
みやりより下手な坂田塾生は、開校以来1人もいなかった。
みやりは黙々と練習した。人の何十倍も練習した。
運動神経のいい者、センスのある者はすぐに上手くなる半面、そこそこの努力で、ある程度のレベルに達してしまう。
しかし下手な者は違う。努力することが当たり前だから、平気な顔で人の何十倍も努力ができてしまう。
みやりより上手かった者の多くはプロを諦めていったが、みやりはこの後、大学でもゴルフを続け、プロゴルファーになるための努力を続けた。
みやりは、坂田先生の訓示をいつも思い出し、口にしていた。
~ 「お前たちの花は咲く、咲かない花はない。
人それぞれの咲き時、咲く処はある。山のテッペンに咲く花は淡くて小さい花だ。
山のテッペン、絶壁、川沿い、海辺と、花の咲き処は幾つもあるが、
山のテッペンに咲く花は急ぐな、焦るな。ゆっくりと咲いていけ。
最後に咲く花になれ。野の花だ。咲き急がぬ花だ。大輪の花だ。
一日一日の練習を大切にして生きていけ。
そして、野の花を咲かせるのだ」 (坂田信弘・かざま鋭二『大地の子みやり』小学館) ~
鈴木みやりこと、本多弥麗はこの後、日本女子プロゴルフ協会のテストに合格し、トーナメントプロになった。
大輪の野の花を咲かせたのだ。