2学年だより「習慣化」
毎年、ノーベル賞の時期になると話題になる村上春樹氏は、走ることを習慣にしている。
小説家としてデビューしたのが30歳。33歳でランニングを始め、以来30年以上にわたり、毎日1時間、平均で一日約10㎞走ることをかかさないという。
現在も冬はフルマラソン、夏はトライアスロンに挑み、もちろん作品も書き続けている。
~ 日々走ることが僕にとってどのような意味を持つのか、僕自身には長い間そのことがもうひとつよくわかりませんでした。毎日走っていればもちろん身体は健康になります。脂肪を落とし、バランスのとれた筋肉をつけることもできますし、体重のコントロールもできます。しかしそれだけのことじゃないんだ、と僕は常日頃感じていました。その奥にはもっと大事な何かがあるはずだと。でもその「何か」がどういうものなのか、自分でもはっきりとはわからないし、自分でもよくわからないものを他人に説明することもできません。
でもとりあえず意味が今ひとつ把握できないまま、この走るという習慣を、僕はしつこくがんばって維持してきました。三十年というのはずいぶん長い歳月です。そのあいだずっとひとつの習慣を変わらず維持していくには、やはりかなりの努力を必要とします。どうしてそんなことができたのか? 走るという行為が、いくつかの「僕がこの人生においてやらなくてはならないものごと」の内容を、具体的に簡潔に表象しているような気がしたからです。そういう大まかな、しかし強い実感(体感)がありました。だから「今日はけっこう身体がきついな。あまり走りたくないな」と思うときでも、「これは僕の人生にとってとにかくやらなくちゃならないことなんだ」と自分に言い聞かせて、ほとんど理屈抜きで走りました。その文句は今でも、僕にとってのひとつのマントラ(注:神や仏への祈りと誓いの言葉)みたいになっています。「これは僕の人生にとってとにかくやらなくちゃならないことなんだ」というのが。
(村上春樹『職業としての小説家』新潮文庫)~
功成り名を遂げた方々の本を読んでいると、不思議な共通点に気づく。
「何か」をなしとげる人は、毎日「別の何か」を継続して行っていることだ。
特別なものではない。経営者に多いのは「毎日仏壇の水を替え、手を合わせる」習慣だ。
日記をつける、寝る前に本の一節を読む、トイレ掃除をする……など。
表面に現れてこない習慣は、きっと他にもいろいろあるにちがいない。
中央大学学生課に長く勤められた高梨明宏氏は、「毎日お手伝いをしている生徒は、必ず合格する」と述べていた。「風呂掃除の係」「皿洗い担当」というような家での仕事を。
学生、スポーツ選手、企業など様々な分野で目標達成のコンサルタントを行っている原田隆史氏も、「目標設定用紙」のなかに、毎日続ける習慣を記入する欄がある。
大谷選手が、原田式の目標設定用紙を記入していた話も有名だ。大谷選手のシートにあった「あいさつ」「へやそうじ」「ゴミひろい」といった項目が、メンタルをつくっていったのだろう。
毎年、ノーベル賞の時期になると話題になる村上春樹氏は、走ることを習慣にしている。
小説家としてデビューしたのが30歳。33歳でランニングを始め、以来30年以上にわたり、毎日1時間、平均で一日約10㎞走ることをかかさないという。
現在も冬はフルマラソン、夏はトライアスロンに挑み、もちろん作品も書き続けている。
~ 日々走ることが僕にとってどのような意味を持つのか、僕自身には長い間そのことがもうひとつよくわかりませんでした。毎日走っていればもちろん身体は健康になります。脂肪を落とし、バランスのとれた筋肉をつけることもできますし、体重のコントロールもできます。しかしそれだけのことじゃないんだ、と僕は常日頃感じていました。その奥にはもっと大事な何かがあるはずだと。でもその「何か」がどういうものなのか、自分でもはっきりとはわからないし、自分でもよくわからないものを他人に説明することもできません。
でもとりあえず意味が今ひとつ把握できないまま、この走るという習慣を、僕はしつこくがんばって維持してきました。三十年というのはずいぶん長い歳月です。そのあいだずっとひとつの習慣を変わらず維持していくには、やはりかなりの努力を必要とします。どうしてそんなことができたのか? 走るという行為が、いくつかの「僕がこの人生においてやらなくてはならないものごと」の内容を、具体的に簡潔に表象しているような気がしたからです。そういう大まかな、しかし強い実感(体感)がありました。だから「今日はけっこう身体がきついな。あまり走りたくないな」と思うときでも、「これは僕の人生にとってとにかくやらなくちゃならないことなんだ」と自分に言い聞かせて、ほとんど理屈抜きで走りました。その文句は今でも、僕にとってのひとつのマントラ(注:神や仏への祈りと誓いの言葉)みたいになっています。「これは僕の人生にとってとにかくやらなくちゃならないことなんだ」というのが。
(村上春樹『職業としての小説家』新潮文庫)~
功成り名を遂げた方々の本を読んでいると、不思議な共通点に気づく。
「何か」をなしとげる人は、毎日「別の何か」を継続して行っていることだ。
特別なものではない。経営者に多いのは「毎日仏壇の水を替え、手を合わせる」習慣だ。
日記をつける、寝る前に本の一節を読む、トイレ掃除をする……など。
表面に現れてこない習慣は、きっと他にもいろいろあるにちがいない。
中央大学学生課に長く勤められた高梨明宏氏は、「毎日お手伝いをしている生徒は、必ず合格する」と述べていた。「風呂掃除の係」「皿洗い担当」というような家での仕事を。
学生、スポーツ選手、企業など様々な分野で目標達成のコンサルタントを行っている原田隆史氏も、「目標設定用紙」のなかに、毎日続ける習慣を記入する欄がある。
大谷選手が、原田式の目標設定用紙を記入していた話も有名だ。大谷選手のシートにあった「あいさつ」「へやそうじ」「ゴミひろい」といった項目が、メンタルをつくっていったのだろう。