帰京しない週末は、名古屋での”一人暮らしの週末”を体験する日。
一人暮らしにとって、仕事のない晴天の週末といったら、まずやることは決まっている。
そう、洗濯とフトン干し。
特に今の時期は、冬物を洗濯して半年間しまう準備をする。
なので洗濯だけで幾度もするのだが、なにしろ大物のシースやフトンカバーも洗濯して干しているので、物干しに空きスペースが足りない。
結局セーター類の洗濯は次回に順延。
かように午前中は洗濯に費やし、しかも夕方前には干したフトンをこむ必要があるため、今から遊びに出かけられない。
かといって、せっかくの晴天にずっと室内に籠りっきりというのも不健康でいやだ。
なので、昼食を食べに、駅前商店街に繰り出す。
こう書けば、熱心な読者なら察しがつくだろう。
そう、名古屋名物”あんかけスパ”を食べにいくのだ。
幸い、12時半をまわっているので、さすがに満席にはなっていなかった(といっても空席は2割)。
カウンターに腰かけ、「ミラネーズ、1」と注文する。
最後の「1」は1人分という意味ではなく、「1倍」という量の指定。
周囲の客は若者はもちろん、私ほどのおじさん風でも「1.5」(1.5倍)。
小食化した私には、もう1.5を注文することはないかも…
だって、1で満腹になるから。
ほどなく皿に盛られた「ミラネーズ」(ウインナーとベーコン中心に、マッシュルームやタマネギが混じる)が置かれた。
1だから、普通のパスタの量。
だが、ことあんかけスパに限っては、この量は「あえて少なめ」という指定なのだ。
あんかけスパ好きを自認する者の選択肢では本来無い。
まるで、初めておそるおそる食べる初心者のようで、
あんかけスパ専門店の中では肩身が狭い(ちなみに、1.5の上に2がある)。
粉チーズを振りかけ、フォークで具とメンとをからめ、さらにそれらを赤茶色のアンにからめて、口に含む。
焼かれたウインナーのほどよい硬さと塩味がやや酸味のあるアンと合うんだな。
あんかけスパを食べている時に、いつも固有の幸福感を得る。
この幸福感を味わっていると、つくづく名古屋に住んでいてよかったと思う(棲み家から徒歩圏に専門店があるのも嬉しい)。
私が、1.5を今でも羨ましく思うのは、この幸福なひとときを1.5倍長く味わえるから。
この店にやってきて、あえて「1.5」を食べる人たちは、以前の私がそうだったように、「そうだ、今日はあんかけスパの1.5を食べよう」という特別な思いでやってくるはず。
休日のひとときを、特別な幸福感で満たしたいからだ。
そしてこの幸福感を毎回味わうためには、あんかけスパを日常化せず、時々にしか食べないようにしている。
皆より短い幸福感を堪能し、席を立った。
レジでは、5月末期限の「50円引き」クーポン券をくれた。
次回は、この幸福感を50円引きで味わえるわけだ。
来月また来るとしよう。