恵那峡国際ホテルは、文字通り恵那峡(岐阜県の木曽川)岸に建つ造築を重ねた古いホテルで、安宿チェーンの「湯快リゾート」に買われてからは、一泊2食7500円(税込み8100円)でリーズナブルに泊まれる。
といっても、裏の高台に建つ「かんぽの宿恵那」と比べれば、客室の居住性、恵那峡の眺め、食事の質、浴室の造りでことごとく水をあけられ(この宿はかんぽの中ではすこぶる上質で休暇村レベル)、安さだけに反応する私ではないので、かんぽの方が準定宿の座を得て(恵那峡は名古屋宅から近いわりに転地効果がある)、同じ場所のこの宿は私の”旅宿データベース”からの消去候補になっていた。
ところが最近、かんぽの方の温泉が薄いのが不満になってきた。
そう、最近の私は、温泉か否かだけでなく、温泉の濃さすなわち”効き”を気にするようになったから。
立派な温泉だと思い込んでありがたがって浸かっていても、実際は成分が薄くしかも湧出量が少ないため、おおいに加水してほとんどさら湯に近い場合があることが分ってきた。
そこで、私は、源泉の情報でしかない分析表だけでなく、実際に浴槽の湯を検査して、濃さと新鮮さを測定するようになった。
その結果、温泉宿の評価が、以前とは変わることになった。
この恵那峡国際ホテルもそれだ。
こちらのホテルは、恵那峡周辺に分布する放射能泉とは異なり、「ナトリウム・塩化物泉」類だが「高張性」なのがすごい。
宿の居住性を重視していた私は、しばらくは「かんぽ」を使っていたが、温泉を測る者としては、むしろこちらに魅力を感じ始めた。
改めて、恵那峡国際ホテルの温泉の分析表を紹介する。
分析表は平成24年と新しい。
泉温は32.5℃、湧出量は150L/分と充分、pHは7.8。
溶存量は18800mgとすこぶる濃い高張性。
成分ではカルシウムが70.6ミリバル%(以下同単位)、ナトリウムが28.9,
塩素が99.6で、以上から泉質は「カルシウム・ナトリウム塩化物泉」。
実際、湯に唇を湿らすと強い塩味。
加水はしていないが加温・循環・塩素殺菌をしている。
源泉の地質は黒雲母花崗岩だという(こういう情報はありがたい)。
さて、湯口からのサンプル調査では、残留塩素が0.2mgとちょっと高め(泉質の影響かもしれない)、
pHは6.5,Mアルカリ度はなぜか無反応の0mg。
酸化還元電位は+780と+側に高い(これも泉質の影響かもしれない)。
そして電気伝導度は、「_ _ _ _」。
すなわち4桁の表示限界を超えた10000μS以上。
ためしに、水道水(67μS)で50%に希釈すると、5328μSと表示されたから、ホントに10000μS超えているのだ(たぶん10589)。
先日の東京大谷田温泉には濃さで及ばないものの、貴重な高張性温泉が名古屋圏にもあり、しかもこちらは宿泊できるのだ。
浴室でγ線を測ったら、0.3μSv/hを超えたが、湯にラドンはないはず。
東濃なので地上2階相当の客室でも0.2μSv/hあり、あの値は浴槽に使われている花崗岩の影響だろう。
というわけでこの宿の湯を見直したわけだが、久々に泊まって、この宿自体も評価が上った。
まず、チェックアウトが12時と遅くなり、朝食も10時までと遅くなった。何よりこれがうれしい。
日本の宿は、宿場の”旅籠(はたご)”の伝統なのか、泊まった晩こそ豪華な夕食でもてなすものの、
翌朝は「早起きして朝飯済ませてさっさと出て行け」という冷たい態度に豹変する。
せっかくの旅先で朝ものんびりしたい身には、これが第一に辛かった(のんびりしたい旅宿で目覚ましをセットする悲哀)。
そうでないのは沖縄のリゾートホテルで、そこではランチ代りの遅めの朝食をゆったり味わえた。
ここも安宿ながら、リゾートホテル的応対にシフトしているのがうれしい。
それだけでなく、以前からあった無料マッサージ機が、静かで眺めのよい場所に移って、
しかも場所が私の客室の真上と近く、メインの場所から遠いので、利用者が少ないため、ふんだんに使えるのがいい。
以前は、ゲームセンター内にあったので、ゲームをする客がいなくてもゲーム機が勝手にうるさい音を流しているので、体はリラックスしても心は落ち着かなかった。
客の要望をどんどん受入れて、改善を怠らない態度は好感が持てる。
この宿は、筋肉痛や全身が疲労した時に使える。
何しろたった一泊でも、効きのいい高張性のナトリウム塩化物泉と、ふんだんにつかえる無料マッサージ機を翌日の午前中いっぱい使えるから。
もちろん朝はのんびり起きて、ゆっくり朝食と朝湯を楽しめる。
ただ室内設備や浴室への遠さなど、我慢すべきところはある(それが安い理由)。
朝夕のバイキングは、グリーンプラザに比べると見劣りするが、値段相応であり、文句はない(楽しみでもないけど)。
ついでながら、
チェックイン前に、対岸の「紅岩山荘」という放射能泉に立ち寄った(2名以上で宿泊できる)。
分析表によれば、ラドンが80Ci×10**-10とあるものの、その程度では「放射能泉」の基準には達せず、また湧出量が「測定不能」という微少レベルで、溶存量も51mgとやったら少ない(療養泉基準の1/20)。
さらに泉温も16.5℃と低く、”温泉”といえるか疑問。
もともとラドンが薄い上に、湧出量も滲み出る程度で、さらに加温しているので、ありがたみはない。
ただし浴室内は狭く、密封しているので少しばかりのラドンガスはあるかも(放射能泉で露天風呂はありえないから)。
それなら測ってみようと、PKC-107で湯口の湯のBqを測ったら、11.0Bq/gと出たが、バックグラウンドで8.5あるので、実質0.25Bq/g分のラドン。
電気伝導度はたったの101μSと分析表どおりに成分の”薄さ”を確認(脱衣所の水道水は50なので、水道水の2倍程度)。
結果はこんな感じで数値的にはとうてい温泉とはいえず、むしろ限りなく水道水に近いはずだが、
入浴直後はいくら拭いても汗がボタボタ落ちるのは、放射能泉ならではだ。