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こまった人 養老孟司 中公文庫

著者の本をそうたくさん読んだ訳ではないが、この本も「いつもの調子で面白いことを言っているなぁ」という感想だ。日本社会をリードする「団塊世代」に何か注文をつける時は、やっぱり著者のような人でないとだめだと思う。自由と民主主義のなかで育った「団塊世代」の代表格である寺島実郎氏が言うところの「不条理」と著者の言う「理不尽なこと」というのは、似ているがどこか違うものだ。著者の言葉の方がマイルドだが、背後のある現実はより厳しいのだろう。それすらも憶測でしか言えない団塊後の世代にとっては、両者とも非常に貴重な存在だ。本書は雑誌に連載されてからまもなくして新書になり、それがまた数年で文庫化されたとのこと。著者の文章に対して人気が高いということなのだろう。なお、本書には最後にキーワード集が付いているのをみてちょっとびっくりした。こうした文庫でしかもエッセイ風の本としては大変珍しい。作者のこだわりなのか編集者の考えなのかは判らないが、実際どの程度役に立つかは別にして、非常に好感が持てる。(「こまった人」養老孟司、中公文庫)
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