書評、その他
Future Watch 書評、その他
朗読者 ベルンハルト・シュリンク
ドイツ文学を読むのは、おそらくギュンター・グラスの『鈴蛙の呼び声』以来ではないかと思う。本書のあとがきにも、「本書は、グラスの『ブリキの太鼓』以来、最も世界的な成功を収めたドイツ文学作品」とある。
本書は3部構成になっている。私は全く予備知識なしで読んだために、第1部である主人公の恋愛体験の記述全体を覆う重苦しい雰囲気の理由が判らず、少なからず戸惑ってしまった。第2部で、主人公の愛人の過去が明かされて、初めてその重苦しさの理由ががどこから来るものなのかが判る。同時に、この時点で本書のテーマが、ドイツ人の戦後世代(我々よりも少し前の世代)が「ナチスの犯行」という歴史をどのように背負い、それにどのように対峙してきたか、ということであることが判る。そして、第3部の悲劇的な結末に至り、この問題が依然としてドイツ人のなかで消化しきれていない現在進行形の問題であることが判る。本書が読者に突きつける問題は「主人公が第2部でとった行動の是非」「主人公の愛人が第3部でとった行動の意味」の2つに要約できると思うが、そのいずれもが「まだこの問題は解決していない」と言っているように私には思える。特に後者の問いかけは、彼女が何も語らなかったという事実であり、作者自身がそれを消化しておらず「何を書いてよいか判らなかった」からではないかと思われるのだ。それは作者に非があるのではなく、「考え続ける」ことに意味がある問題があることを我々に教えてくれている。(「朗読者」ベルンハルト・シュリンク、新潮文庫)
本書は3部構成になっている。私は全く予備知識なしで読んだために、第1部である主人公の恋愛体験の記述全体を覆う重苦しい雰囲気の理由が判らず、少なからず戸惑ってしまった。第2部で、主人公の愛人の過去が明かされて、初めてその重苦しさの理由ががどこから来るものなのかが判る。同時に、この時点で本書のテーマが、ドイツ人の戦後世代(我々よりも少し前の世代)が「ナチスの犯行」という歴史をどのように背負い、それにどのように対峙してきたか、ということであることが判る。そして、第3部の悲劇的な結末に至り、この問題が依然としてドイツ人のなかで消化しきれていない現在進行形の問題であることが判る。本書が読者に突きつける問題は「主人公が第2部でとった行動の是非」「主人公の愛人が第3部でとった行動の意味」の2つに要約できると思うが、そのいずれもが「まだこの問題は解決していない」と言っているように私には思える。特に後者の問いかけは、彼女が何も語らなかったという事実であり、作者自身がそれを消化しておらず「何を書いてよいか判らなかった」からではないかと思われるのだ。それは作者に非があるのではなく、「考え続ける」ことに意味がある問題があることを我々に教えてくれている。(「朗読者」ベルンハルト・シュリンク、新潮文庫)
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