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旅をする木 星野道夫

外出中に読む本がなくなり、たまたま立ち寄った本屋さんで、何も買わずに出るのが躊躇われ、手頃な本をと選んだのが本書。短いもので3ページ、長いものでも10ページくらいの短いエッセイが収められていて空いた時間で読めそうなこと、「旅をする木」という題名が気になったこと、の2つが選んだ理由だった。
 アラスカの自然を愛する著者の「自然の中の自分」を語る飾り気のない文章が妙に心を打つ。自然に対する敬意が感じられる一方、単純に自然を描写するのではなく、自分のこれまでの体験や知識を目の前の自然と対峙させながら、それらを渾然一体として語る、そのスタンス=バランスが絶妙だ。著者はアラスカでクマに襲われ死亡した故人である。すでに亡くなった人の本というのはそれだけで何となく有り難味が増すようなところがある気がするが、本書も、そうした面がある。但し、それを知らずに読んでも、本書には何か特別の力があるように思われる。(「旅をする木」星野道夫、文春文庫)
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