goo

リバーサイドチルドレン 梓崎優

書評で賛否両論がある本書。要するに、日本人の少年がカンボジアでストリートチルドレンになって暮らしているという設定の不自然をどう考えるかによって、評価が大きく分かれてしまっているのだ。読んでいると、本書のすごさは主人公の少年が日本人であるかどうかにはあまり依存していないようにも思える。そうだとすると、逆になぜ作者がそのような設定にしたのかという点が、私としては大いに気になるところだ。一つ言えるのは、その少年が日本人であるということや、カンボジアが観光立国として打ち出した政策がこの話の展開の大きな要素になっているという事実がが、我々の日常生活とここに描かれた物語の距離感を小さくしているということ、それによってえもいわれぬ恐怖のようなものを読者に感じさせる効果があるいということだと思う。そう考えると、不自然ともいえる設定こそがこの小説の本質であり、それでこそすごい小説だといえるのではないかと思う。(「リバーサイドチルドレン」 梓崎優、東京創元社)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )