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三月 大島真寿美

20年ぶりの同窓会を契機に集まる6人の女子のその間の人生を描く連作短編集。設定自体はよくある話だが、社会問題の縮図のような夫々の話の心理描写は、さすがに著者らしい細やかさで、登場人物に対する強い共感をもたらす。「三月」という題名から、ひょっとして東日本大震災が物語に関係してくるのではないかと想像したが、やはり話の最後に登場人物全員がそれに巻き込まれるという話になっていた。日本人は誰しも、震災に対してどのようなスタンスをとるのかを心に決めなければいけないという状況で、本書を読むと、震災を語るのにこういうやり方もあるなぁ、小説家らしいやり方だなぁと感じる。震災に直接巻き込まれなかった多くの人々にも、震災を通じて何を思うべきかを教えてくれるような作品だ。(「三月」 大島真寿美、光文社)

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