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「サバ」の正体 NHKアナウンス室

続編が刊行されたのを機に平積みになっていた本書を見かけたので、続編を読む前にこちらを読んでみることにした。普段何気なく使っている言葉の由来や用法の可否を解説してくれる薀蓄本。へぇと思うような内容が結構あって面白い。通読して気づくのは、言葉の由来というものが、たかだか100年くらい前の話なのに、複数の説があったりして、よく判らなくなってしまっていることが意外に多いということだ。現時点で判らないことは、おそらく将来になって判明するというようなことは少ないだろう。そう考えると、日本人は日本語というものをあまり大事にしていないのではないかという気がしてくる。大事にしないというよりも、省略したり変形させることが簡単なのであまり意識せずに勝手に変形させてしまう人がいて、それに同調して新しい言い回しを使う人がいるということかもしれない。言葉の由来や用法を解説してくれる本書のような本が氾濫しているという現象からも、日本という社会の特質が見えてくるような気がする。(「「サバ」の正体」 NHKアナウンス室、新潮文庫)

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マスカレード・イブ 東野圭吾

シリーズ2作目の本書だが、第1作目が単行本で刊行され、第2作目がいきなり文庫というのは少し珍しいような気がするし、内容的にも第1作目より前の出来事というから、なお奇妙な感じがする。1作目で活躍したコンビが人気がでたので、その2人が出会うまでの話を後から作ったということなのかもしれまいが、著者の本のなかでこのコンビがことさら人気になったという話は聞かないし、人気が出たのならいきなり文庫というのもしっくりこないので、そういうことではないような気がする。あるいは、もともと短編や別の単独の中編のような作品(本書の中身)が先にあって、そのなかで生まれた登場人物を別の長編の主人公して第1作目が書かれたという可能性もある。そうだとすると、それを今更単行本にするというのも変なので文庫にしたということだろうし、時系列の謎も何となく納得がいく。果たして真相はどうなのだろうかと思いながら読んでみた。読んだ結果は、確かなことはわからないが、要は、ホテルという場所を舞台にしたミステリーというシチュエーションが色々なミステリーが生まれる可能性を持っていて、それを作者がそのシチュエーションだけを出発点として書きあげた作品ではないかということだ。それだけのシチュエーションの想定だけで、次から次へと面白いミステリーを読ませてくれる作者のすごさが改めて判る作品だ。(「マスカレード・イブ」 東野圭吾、集英社文庫)

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