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神様は勝たせない 白川三兎

著者の本は書評等で常に高く評価されているが、作家の知名度という点ではその評価に見合ったものになっていないような気がする。どうしてなのかはよく判らないが、著者の本は読むたびに本当にいい話だなぁと思わせてくれる。本書についてももちろん期待通りだったのだが、それ以上に、著者の奥行きの広さのようなものを感じた1冊だった。サッカーの試合で、延長戦の末に決着がつかず、PK合戦になり、あるチームが0-2という絶望的な状況に置かれたところから物語は始まる。要するに、あと1分くらいで決着がつく試合、しかもほぼ100%勝負がついてしまっている場面から、あるチームの1人1人の目線でそれまでのことを振り返りつつ、最初の場面に立ち戻るという文章が繰り返される。そのなかで、いくつもの驚くような事実が明らかになっていく。最後の方になると、試合そのものの結末が気になりだすのだが、題名は「神様は勝たせない」だし、やっぱりだめなのかなぁとハラハラしながら読まされてしまった。最後の結末も納得がいったし、後味が何ともいえず晴れやかになってしまったのが不思議だ。(「神様は勝たせない」 白川三兎、ハヤカワ文庫)

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