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謡う指先 太田紫織

シリーズ何作目かはもう判らないが、少しずつミステリーの要素よりも、主人公の少年の内省を中心にした青春小説の趣が強くなってきているような気がする。シリーズが進んでいくと、登場人物たちへの愛着も強まり、事件やストーリーそのものよりも登場人物の動静が気にかかるのはファン心理として当然のことだが、あまりそれが強くなりすぎると、ミステリーとしての面白さや醍醐味がないがしろにされているようにも感じてしまう。本書はそうしたファンへの期待に応えることと、ミステリーとしての面白さを保つことのちょうど境目にあるように思われる。個人的には、読者を飽きさせないように留意しながら、もう一度ミステリーの方に少し戻ってきて欲しい気がする。本書では、最後のところで、主人公2人の関係が、ある意味明確に規定されるような流れになった。今後それを前提としてどのように話が進むのか、そのあたりが引き続き気になるところだ。(「謡う指先」 太田紫織、角川文庫)

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