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裏国境突破・東南アジア一周大作戦 下川裕治

陸路で国境を超えることに楽しみを見出す「国境マニア」という人が存在するらしい。そう言われると、まあ世の中には色々な人がいるから、そういう人がいても不思議ではないと思う一方、陸路で国境を超えるということが実際にどういうことなのか、あるいは国境を超えることの何が楽しいのか、彼らが何を楽しみにそんなことをするのか、そのあたり良く判らないまま本書を読み始めた。読んでいて判ったことは、要するに彼等は、国境を越えられるかどうか行ってみないと判らない、その不確実さを楽しみ、イミグレーションで無事スタンプを押してもらえた時のポンという音が堪らないらしい、ということだ。ちょうど登山の醍醐味が「山頂に行くまでの様々なリスクや障害を乗り越えた後の山頂での絶景というご褒美」というのによく似ている気がする。一方、日本に住んでいると、歩いて国境を超えるということはないので、それは旅の原点である「非日常を楽しむ」ことであるという言い方もできるだろう。それにしても、飛行機で国境を越えることを潔しとせず、苦労しながら旅をすることで、現地のことをより深く理解しようとする著者のスタンスには、何故か頭が下がる思いだ。本書で紹介されている多くのエピソードは、飛行機で移動していては経験できないものばかりだ。ラオスの船旅のくだりや、ミャンマーでのバス横転事故の顛末などは、面白すぎて笑ってしまった。個人的には、絶対にこんな旅はしたくないし、またできないと思うが、読んで楽しむ分には、いくらでもいいなぁとつくづく感じた。(「裏国境突破・東南アジア一周大作戦」 下川裕治、新潮文庫)

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