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火花 又吉直樹 

話題の本なのでとりあえず読んでみた。破天荒で生活能力に欠ける先輩を慕う若手芸人を主人公とした私小説的な小編だが、「お笑いとは何か」という問いかけと「人生とは何か」という命題が主人公の心の中で1つになっている様が丁寧に描かれている。「お笑いとは何か」という問いかけそのものには特段の熱い思いも共感する部分もないが、主人公の心を通して、そうした自分と関係のない世界を垣間見るというのは紛れもなく小説のだいご味だ。お笑い芸人という本業を持っている著者の文章だけに、意識的に「小説を書いているぞ」と主張しているところも多いが、案外こうしたところに全ての小説家に普遍的なものとか小説の本質のようなものがあるのかもしれないなぁ、面白いストーリーを書きとどめるということが執筆の動機になっていない文章というのは必然的にこうした私小説のようなものになるのだろうなぁ、などと色々考えさせられた1冊だった。(「火花」 又吉直樹、文藝春秋社) 

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