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カソウスキの行方 津村記久子

著者の本を立て続けに読んでいるが、その独特の文体がますます好きになってきた。三人称で語られていてもその実態はモノローグで、それが私小説的な内容と合致して、独特の雰囲気を醸し出し、シンパシーを感じる大きな要因になっている気がする。内容的には、仕事や生きることに息苦しさを感じている人々の日常。但し、それぞれが自分自身で少し変わった楽しみを見つけることで、前に読んだ処女作のような厳しい現実からは前向きになっている。心の中で自分にのり突っ込みを入れるさまが、客観的には少し痛ましいのだが、それと同時に微笑ましく、彼女彼氏を温かく見守ってしまう自分を発見する。(「カソウスキの行方」 津村記久子、講談社文庫)

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