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アメリカ最後の実験 宮内悠介

著者の作品はこれで5冊目か6冊目になるが、大変面白かった作品もあれば、作者の提示するイメージについていけない作品もありで、未だに自分自身の中でも評価の定まらない作家だ。いったい今度はどんな内容なのか? 本書は、突然アメリカで行方不明になった父親を探すために渡米した日本人の少年の話だ。そこで聞かされた父親の行方不明前後の不思議な言動。それに関する不思議な楽器の存在。冒頭から提示される幾つもの魅力的な謎に期待が高まるのだが、楽器の謎は早いうちに呆気なく解き明かされてしまうし、行方不明の父親も突然姿を現し、いつの間にか謎でなくなってしまう。そのうち日本人の少年の話だったはずのストーリーそのものが別の様相を見せ始め、最初に提示された謎の解明は物語の肝ではなかったことが明らかになる。今回も作者のイメージに十分ついていけなかった気がするが、残念という感情は湧かない。また作者の本を見つけたら買って読むだろうなぁと思う。(「アメリカ最後の実験」 宮内悠介、新潮社)

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