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フェルメール最後の真実 秦新二

先日上野の森美術館にフェルメール展を見にいってから、関連本として本書を読んだ。本書には、フェルメールの人物像、彼の絵画の履歴などがコンパクトにまとめられているが、その本領は、日本で開催される展覧会にフェルメールの絵を呼ぶための裏話だ。フェルメールの絵は、それぞれの作品が所蔵する美術館や国の至宝であり、お金を積めば呼んでこれるという簡単な話ではないらしい。呼ぶためには修復中でないといったタイミングも重要だし、美術館同士や関係者同士の面子も大切な要素になる。さらには、その絵の保存状態や、輸送上の問題、ひいては所蔵する美術館の経済状態なども呼べるかどうかの重要なファクターになるらしい。今回の日本でのフェルメール展では、彼の全作品35点のうち8点を鑑賞したが、本書を読んで、それらを同じ時期に日本に呼ぶことがどれほど大変だったかがよく分かった。ちなみに、今回の展覧会で見た8点のうち個人的には6点が初めて見る作品で、これまでに見た作品数は記憶にあるだけで22になった。全点制覇するつもりはないが、これからいくつ見られるのか楽しみだなと思っていたが、これまで日本にフェルメールを呼ぶのに絶大な影響力を持っていた著者が引退すると、その後継者がおらず、日本にフェルメールの作品を呼ぶことが困難になる恐れがあるらしい。ご本人が言っているので間違いないと考えると、今回の展覧会がより貴重なものに思えてきた。(「フェルメール最後の真実」 秦新二、文春文庫)

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