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昆虫学者はやめられない 小松貴
昆虫学者によるエッセイ集。内容は、昆虫に関するトリビアと昆虫を研究対象としている学者に関するお話が半分くらいずつ書かれている。奇妙な昆虫の話も面白いし、ありふれた昆虫にもこんな一面があるよという話ももちろん面白いのだが、本書で断然面白いのは昆虫学者に関する「あるある」の方だ。本書では、昆虫学者の生態として、大まかに言うと、昆虫標本をコレクションする醍醐味、昆虫の擬態を見抜く技、新種発見の苦労話の3つが書かれていて、それぞれがめちゃくちゃに面白い。標本コレクションの話では、見た目が派手なカブトムシは日本に5種類ほどしかいないのですぐに飽きる、美しい蝶でも数百種類なので頑張れば数年でコンプリートしてしまう、従って多くの昆虫学者は地味だが種類の豊富な昆虫に惹かれるのだそうだ。また、昆虫の擬態に関しては、優れた擬態で発見が困難な昆虫と昆虫学者との知恵比べ、優れた擬態を持っているのに全くそれを活用せず簡単に見つかってしまう昆虫の話などが詳しく書かれていて秀逸だが、そこから「そもそも擬態とは何か」という問いかけにつながっていくのがすごい。新種発見については、日本において一般市民が新種を発見する可能性はほぼゼロであるが、日本で発見される外来種の多くが一般人の「新種では?」という専門家への照会によるものだそうで、その点では意義のあることだとのこと。とにかく面白い話が満載の一冊だった。(「昆虫学者はやめられない」 小松貴、新潮文庫)
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