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さよなら、野口健 小林元喜

今年の本屋大賞ノンフィクション部門ノミネート作品ということで読んでみた。野口健という登山家について、若い時から専属スタッフとして彼の近くにいた著者が書いた評伝。野口健については、山に登ってゴミを拾ってくる登山家というくらいしか知らなかったが、子供の頃からの境遇や政治的な野心などが赤裸々に語られていて、一般にはあまり知られていないような彼の人物像が見事に浮かび上がってくる内容。全編を通じて本人しか知らないような負のエピソードやかなり複雑な人間関係が述べられていて、どうやって調べたのか不思議に思ったが、実は彼自身が本に書いていたり長年の付き合いの中で著者が直接聞いたことで、彼自身がそうしたネガティブな話も隠さない人間だということらしい。本書を読んでいると、世界7大陸最高峰無酸素単独制覇に挑みながら、エベレスト登山中に事故死した登山家栗城史多のことが常に頭に浮かんできた。登山家の世界ではほとんど評価されない目標を掲げてマスコミへの露出や話題性を重視する姿勢などが似ていて、栗城史多に影響を与えた先駆者であり、栗城史多のマイルドバージョンということらしい。大賞受賞はならなかったが、とても読み応えのある一冊だった。(「さよなら、野口健」小林元喜、集英社)
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