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だからタイはおもしろい 高田胤臣

長年タイで暮らす著者が「微笑みの国」「敬虔な仏教徒」「東南アジアで唯一独立を守った国」という一般的なイメージのあるタイについて、その本音と裏側を語る解説書。観光客には愛想いいが、暮らしてみると徹底的に打算的で裏表がありかつ個人個人はとても怒りっぽいらしいし、仏教徒が多いのは事実で先祖や家族を大切にするのも確かだが、家族以外の余所者には冷淡で仏教関係者の腐敗もかなりなものとのこと。さらに、独立を守ったのは確かだが、第二次世界大戦の末期に英米に宣戦布告して日本同様に敗戦国になりかけたが巧みな外交で乗り切るなどかなりドロドロした歴史がその背後にあるという。著者は、そうしたタイの実情の背景には、国王を頂点とする超富裕層と非常に劣悪な生活環境の低所得者層という二極分化、巧みな政策によって特権階級の利益を守る構造が強固に出来上がっていることがあると看過する。他国を知るということについて、観光で訪れる、数年間駐在員として滞在する、実際に長年その地で暮らすという三段階で見えるものが違う気がするが、本書はまさにその第三段階で見えるものが語られている。「タイにはお墓がない」といった断片的な知識はタイの友人から聞いて知っていたが、そうしたタイ社会の全体像を知るにはやはりこうした本を読むのが有用だと感じる。最近タクシン元首相の帰国というニュースがあったが、帰国後の収監、恩赦という流れが出来レースという解説があり、なるほどなぁと納得した。(「だからタイはおもしろい」 高田胤臣、光文社新書)
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