先日のAKBの選挙で指原莉乃が一位になったオタクたちの投票行動に、いくばくかの政治的なるものの臭いを感じてしまう。芸能界が作った単なる人気投票という場においても、そこにはセンターというポストを巡っての選挙による権力奪取行動とみることもできる。また、投票をしている者にとっては、ちゃんとCD を買って、そのシリアル番号で投票資格を得ている以上、彼らにとっては正当なる参加資格を持っての選挙であるはずである。
当節、マスコミ界においては、大衆に判りやすい行動や可哀想なストリーを背負った者が、必ずや大衆の理解を受け、賛同を受け、選挙において優位に立つことになる。オタク世界に暮らす若者たちと云えども、苦しい境遇にヘタレないで、劇的な復活を果たすヒロインを渇望する若者は少なくないだろう。15万票を入れた若者たちの選挙行動は、指原が九州に左遷された不幸な境遇に、自らの人生をなぞらえて、あくまでも彼らのできる範囲のなかで、汚い大人の世界に一矢報いたともいえる。
2位が大島優子に決まった瞬間、テレビカメラは席を蹴って会場を出ていく何人かの若者の姿を映し出した。彼らは大人の思惑などと全く別の世界に居て、旧来型のアイドル選挙を信じていた若者であった。彼らはあの7万人収容の日産スタジアムを出て、いったいどこに帰ったのだろうか。近場の新横浜でヤケ酒飲むのなら、まだ良しとするが、アキバに戻って猫喫茶でも行くようなら、なんと悲しい世界なのだろうか。でも、大きなお世話か。