1930年10月、木戸は内大臣秘書官長に就く。木戸は無類のゴルフ好きだった。1931年4月20日、陸軍省軍務局の鈴木中佐とゴルフをしていた。この時、鈴木43歳、木戸42歳、ほぼ同い年でもあった。
【『木戸幸一日記(上)』東大出版会より】
軍人がゴルフをする。なんかピンと来ないが、鈴木貞一は、そんなことにはお構いなしの非定型な軍人だった。
鈴木は神出鬼没で、全く捉え処がない、底が知れない人物である。
高宮太平は「両棲動物だ。時の牽制におもねって、自己保存する術にかけてては天下一品」と鈴木のことを『順逆の昭和史』の中で書いている。
木戸も巣鴨プリゾン時代の「豆狸」という綽名からも一筋縄ではいかぬようである。案外二人は性格も似ているのかもしれない。【次週へ】