若いころ、定年になったら、ガラッと職を変えて「立ち食いそば屋」をやりたかった。
昼間の通勤通学の時間帯はそば屋をやり、それ以外の時間はコーヒーでも出したら面白いと夢想していた。駅に近い所で5~7人ぐらいしか入れない小さな店を探したこともあった。
しかし、定年間際に身体を壊し、その夢はあえなく潰えた。
今でも立ち食いそば屋が好きである。たぶん独身時代、朝食はいつも駅構内の売店で立ち食いそばか、コーヒーと肉マンだった所為かもしれない。
私の若い頃の東京では、有名な蕎麦屋といえば、新宿の「戸隠蕎麦」、赤坂の「更科そば」、神田の「やぶ蕎麦」だと言われた。実は「戸隠そば」はよく食べたが、太い蕎麦なのであまり好きではない。「更科そば」は確かに上品できれいだが、こしが無いのでこれも好きではない。天下の「やぶ蕎麦」は実は1回しか行った事が無いが、ただ圧倒された。火事で焼ける前に行ったので、店の造りの風情にも痛く感動した。
蕎麦は、肩ひじ張らず、常に一定の美味しさがあればそれで十分。
口に含んだ時にむにゃむにゃと噛むと蕎麦の香りが少し口の中に広がる、そんな蕎麦が私の好みのようである。
現在のところ、それは浅草の「尾張屋」の蕎麦だ。
残念ながら、コロナ下にあって、ここ二年間、食べていない。たまに口をもぐもぐさせながら、あの蕎麦の感触を思い出している。
3年前に行った時の尾張屋の蕎麦。
朝倉市の秋月城の近くに「ちきた」というお蕎麦屋さんがあるのですが、そこの「蕎麦がき」は美味しくてビックリしたことがあります。
若い時は蕎麦とか饂飩とか、あまり興味もありませんでしたが、歯が悪くなるのに比例して、好みが変わってきたようです。