今回は山岸凉子です
とはいっても「日出処の天子」ではないんです。もっと前の作品を・・・・
「ティンカーベル」(1973年 デラックスマーガレット)
登場人物・・・ダフニー
ローレン
ローレンの兄
ストーリー・・・家族の中で一人だけ綺麗に生まれなかったダフニーは
その事がトラウマとなり、幻の「ティンカーベル」を友人にし、誰にも
心を開かなかった。
16歳になった時、試験のノートを見せて貰いたいだけに近づいてきた
ローレンの家に招かれるが、ローレンの兄に遭遇し、世界が変わっていく。
山岸涼子という人は人の心理・・・深窓心理に詳しい人ですよね。
女の子が自分のコンプレックスから目をそらすために作り出した友達
「ティンク」
一生、彼女としか付き合わないと決めていたのに恋に落ちる
恋に落ちた事にティンクは怒っているのではないかとびくびくしたり。
事実、学校が火事になり、助けようとするローレンの兄をティンクは誘いだし
結果的にはダフニーの為に助けるのですが
コンプレックスを持った女の子が現実を知って、一人の女性になっていく中間を
見事に描きだしています。
「クリスマス」(1976年 プリンセス)
登場人物・・・ジョルジュ
ミス・スック
ストーリー・・・7歳のジョルジュは、両親の離婚によって親戚をたらいまわしにされた
あげく、フォーク家に引き取られる。
そこには長女のミス・スックがいたのだが、生来引っ込み思案で人見知りが
激しい彼女はジョルジュと一緒にいつも台所で過ごしていた。
二人の忘れられない思い出。それはクリスマス。
なけなしのお金でツリーを買い、ケーキを作る材料を集め、二人でケーキを
作って世界中に送るのだった。
山岸作品の中で私が号泣した作品。それは「クリスマス」と「鬼」の2作品だけです。
もう・・・ミス・スックとジョルジュのつましい生活のなんと幸せな事か。
そしてその幸せがあっという間に終わってしまう悲しさで、胸が締め付けられるのでした。
「シュリンクスパーン」(1976年 プリンセス)
登場人物・・オシアン
シュリンクス
ストーリー・・・駆け出しの作家、オシアンはネタ切れに苦しみ、逃げ出すように
叔父から受け継いだ屋敷へ逃げ込む。
叔父の遺言は「パーンを一匹飼育する事」
パーンとは牧神の事。
オシアンは屋敷で不思議な少年と出会う。彼は自分を「パーン」と名乗った。
「パーンでもシュリンクスっていうんだ」と。
それから餌付けをするように彼と距離が近くなっていくオシアン。
しかし、ある日、シュリンクスは死にそうに・・・・
男の子だと思っていたら・・・のオチがとても素敵なラブストーリー(?)です。
「メタモルフォシス伝」
(1976年 花とゆめ)
登場人物・・・蘇我要(表紙左)
久美(表紙右)
ストーリー・・・名だたる進学校に突如転校してきた蘇我要。
それまで誰もが「受験」の事しか頭になかったのに、彼の登場で
過去や現在や未来に展望が見えてくると言う話。
思春期の少年たちが「何の為に勉強をするのか」「誰の為に大学に入るのか」
「自分がやりたい事は何か」といつの間にか自発的に考えているという
非常に教育的なお話。
コミックスのわきには「涼子のワンポイントゼミ」というのがあって
公式とか英語の熟語などが書かれています。
こういうの、本当に苦手だったのよね・・・・私
読みながら「私、久美じゃなくてよかった」と思いつつ、ほんとは勉強しなくちゃ
いけないのに漫画を読みふけっている自分を思い出します。
「スピンクス」(1979年 花とゆめ)
登場人物・・・・アースキン
スピンクス
ブロンクス先生
ストーリー・・・アースキンの住む迷宮にはスピンクスがいる。
彼女が「朝に四足昼に二本足夜に三本足になるのはなーんだ」と質問し
答えられなかったら食べられてしまう。やっとの思いで
「人間」と答える。
スピンクスはつまらなそうに彼の回りを動き、彼を支配しようとする・・・・
最初、読んでいて何の話かさっぱりわかりませんでした。
空想の世界なの?それともSF?理解するのに3回くらい読み直ししたかも。
でも今思えば、すごい作品です。
精神医学にここまで突っ込んだ作品はないんじゃないでしょうか?
見事な出来だなあと。