信じられないというか・・・・
花總まりが「エリザベート」を卒業するそうです。
帝劇じゃなくて博多座で卒業・・・なんて・・・・
「皆様に支えられて、エリザベートの旅を終えることができました。感謝の言葉しかございません。本当に長い間、ありがとうございました。私のエリザベート、さよなら、ありがとう」
との挨拶。
とうとう、見逃してしまった。もう二度と見る事が出来ないと思うと、舞台というのは本当に「見たい」と思ったその時に頑張らないとダメなんだとあらためて思わされました。
いつかいつかと思ううちにご卒業なんて、早いんじゃないの?もう1年頑張れるんじゃないの?
と思いつつ。
体調不良とかコロナとか色々あっての決断だったんだろうと思うと。
納得せざるを得ません。
小池修一郎「忘れないのは、衣装合わせの時に彼女を見て、鳥肌が立ったこと。当時22歳で、後半(の年齢を重ねたエリザベートを演じるのが)大丈夫かな?と思っていたのですが、その瞬間にエリザベートが彼女に舞い降りた感じでした」
私達、観客も鳥肌が立ちました。
娘役トップになって一路真輝の相手役として最後、そしてタイトルロール。
花總まりへのプレッシャーはいかばかりかと思ったのですが。
当時、まだ宝塚初心者だった私には、まだ新人公演の学年だった花總についてそんなに知らなかった。
知らなかったけれど、3階席の一番後ろから見ても「鏡の間」の美しさは本当に鳥肌が立つ程でした。
まるで「美」が私の胸を貫くような感じ。
エリザベートの孤独を身をもって経験してきました・・・というような冷たい美がそこにはありました。
ドレスの着こなしがとても上手で、しかも自前だから誰よりも生地を沢山使って豪華賢覧に仕立てる。それがどれ程観客に夢を与えた事でしょう。
雪組、そして宙組でもエリザベートを演じ、そして卒業して随分経ってからの舞台復帰作としての「エリザベート」
まさに女帝降臨の瞬間でした。
品のよさ、立ち居振る舞いの素晴らしさは皇族にもひけをとらない。ましてあの皇后さんとは・・・
年齢を重ねるに従って、役の解釈が変わって来て、あの剣のような美しさの中に静かな気品と柔らかさやおおらかさが加わって来ましたね。
それは様々な社会経験による「一皮むけた」状態だと思うのですが、そうなるとエリザベートを演じ続けるのは難しいのかなと思います。
なぜなら真実のエリザベートは多分亡くなるまで剣のような冷たさを持った女性だったからです。悪い意味で成長しない女性だったんじゃないかと思われます。
花總まりが、実在のエリザベートのような人生を歩まなくて本当によかった。
今の、少女のような微笑みと明るさ、柔らかさを大事にしてほしいですね。
大地真央と「おかしな二人」を演じるなど、新しい道を見つけたのかもしれません。
それでにお花様はやっぱり「女帝」です。永遠に。
私に本当の「エリザベート」を教えてくれた最高の娘役であり、女優です。
宝塚の歴史に残る美しい娘役、そして日本演劇史に残る美しい女優。
今後、どのような舞台に立つのでしょうか?
出来ればやっぱりコスチューム物がいいな。ドラマでも見たい。時代劇がいいな。
活躍の幅が広がればそれが一番ですよね。
ああ・・・私も歳をとったのだと・・・いや、あの初演を見た人達は今回の「卒業」で何となくそんな風に思った人が多いのではないでしょうか。
時は残酷に流れゆく。だからこそ、今、見たいものは見なくちゃダメ。
とはいえ、こんな世知辛い時代・・それがままならぬ悔しさもあるのですけどね。