小津安二郎の映画には独特の雰囲気が漂う。全ての小津作品を観ているわけではないが、特に娘の結婚問題を軸にした作品群は、当時の結婚観を背景に、娘を持つ父親の心情と家族の日常をさりげなく描き出す。俳優では笠智衆が父親役を一手に引き受けている。
「晩春」では、結婚を前にした父と娘の、心の葛藤を交えた交流をシンプルにさらっと描き、「麦秋」では、早く結婚させたい父親が、年の差なんか関係ない、贅沢は言えない、と一回りも違う相手の結婚に乗り気になるが、子連れの男を選ぶと言う突然の娘の反乱に戸惑う父親が面白い。この二作は笠の父親、原節子の娘だが、「東京物語」では、原は嫁の役で、親の面倒を誰が見るのか、と言う今日的テーマを、淡々と描いている。
「秋日和」では、原節子の母親と司葉子の娘の物語に佐分利信を中心に小津の常連が顔を出す。「彼岸花」では、佐分利信の父親と有馬稲子の娘となり、有馬の友達として、山本富士子が大映からの他社出演。浪速千恵子と山本富士子の京女、速射砲のように出る関西弁が色を添えている。
山本富士子の他社出演の交換条件で、小津は、大映で「浮草」を撮っているが、鴈治郎と京マチ子を軸に杉村春子、川口浩、野添ひとみなどを配し、大映の一作を残している。
最後は、「秋刀魚の味」だ。麦秋でちょい役の岩下志摩が抜擢され、父親役は再び笠智衆だ。父親の哀歓が滲み出る。よし坊も、そんな心情に酔ってみたいのだが、わが娘二人は、さらさら結婚する気無し、で残念と言う外はない。
小津の作品は、暖かく、そして時には切なく、最後にホッと一息つけさせてくれる安堵感のようなものがある。小津が日本映画の監督ベストワンに列せられているが、頷ける。
「晩春」では、結婚を前にした父と娘の、心の葛藤を交えた交流をシンプルにさらっと描き、「麦秋」では、早く結婚させたい父親が、年の差なんか関係ない、贅沢は言えない、と一回りも違う相手の結婚に乗り気になるが、子連れの男を選ぶと言う突然の娘の反乱に戸惑う父親が面白い。この二作は笠の父親、原節子の娘だが、「東京物語」では、原は嫁の役で、親の面倒を誰が見るのか、と言う今日的テーマを、淡々と描いている。
「秋日和」では、原節子の母親と司葉子の娘の物語に佐分利信を中心に小津の常連が顔を出す。「彼岸花」では、佐分利信の父親と有馬稲子の娘となり、有馬の友達として、山本富士子が大映からの他社出演。浪速千恵子と山本富士子の京女、速射砲のように出る関西弁が色を添えている。
山本富士子の他社出演の交換条件で、小津は、大映で「浮草」を撮っているが、鴈治郎と京マチ子を軸に杉村春子、川口浩、野添ひとみなどを配し、大映の一作を残している。
最後は、「秋刀魚の味」だ。麦秋でちょい役の岩下志摩が抜擢され、父親役は再び笠智衆だ。父親の哀歓が滲み出る。よし坊も、そんな心情に酔ってみたいのだが、わが娘二人は、さらさら結婚する気無し、で残念と言う外はない。
小津の作品は、暖かく、そして時には切なく、最後にホッと一息つけさせてくれる安堵感のようなものがある。小津が日本映画の監督ベストワンに列せられているが、頷ける。